第8章 エピローグ ヒロインと悪役令嬢と
※途中からミリス視点です
「あの、リリア様? 一体何をしたんですか?」
ミリス様とのお茶会で開口一番自白を強要されてしまった。どうしてこうなった?
「え~っと、それはもしかして後ろに控える執事さんに関係しています?」
ミリス様お付きの執事さん。なんだか見覚えがあるのに別人としか思えなかった。初老だったはずが若者になっているし。
いや普通に考えれば『息子さんかな?』とでも思うのだろうけど、私って魂の色で人の識別できるからねー。左目使うまでもなく『初老の執事』と『若い執事』が同一人物だと分かってしまったのだ。
「実はですね――」
ミリス様が簡潔に事件(?)のことを説明してくれた。
いやいや、
いやいやいや、
ポーション使って若返るって何? たしかに私は“左目”でセバスさんの病気を発見したよ? 過労のせいで進行が早まっていることも理解したよ?
でもいきなり回復魔法を使っても(あのときのセバスさんだと)本当に病気だったのかと疑われそうだったし、一度痛い目にあわないとまた無茶して身体を壊しそうだったし、ぶっ倒れてからミリス様に治してもらえばいいかーと『奥の手』として指輪にポーションを仕込んでおいたよ?
そりゃあ説明もなくミリス様に任せたのは酷いと思うしセバスさんの病気をすぐに治さなかったことにも罪悪感はあったよ? でもそれは中級ポーションで充分だったところをエリクサーにしたんだから許して欲しいなぁ、なんて。
私の説明を聞いたミリス様は痛そうに頭を抱えた。
「そういうことは、前もって、教えてください」
「いや真に申し訳ございませんでした……」
「……といいますか、中級ポーションで充分だったところをエリクサーなんて使ってしまったから『バグって』しまったのでは? 強すぎる薬は逆に身体を壊すんですよ?」
「い、いやいや、いくらエリクサーだって若返りの効果はない……はず? だと思うよ? たぶん、きっと、おそらくは」
「せめて断言してくれませんか?」
「……よく考えたらエリクサーって不死鳥の尾羽が原材料ですし、不死鳥って燃え尽きたあと雛に生まれ変わりするみたいですし、そう考えたら若返っても不思議じゃないのかも?」
「あの、もうどこから突っ込めばいいか分からないのですけれど……」
「見捨てないでー。……ごほん。いやでもマリア様に使ったときはそんな効果はなかったですし、いくら不死鳥の尾羽だからといって若返りまではしないと思うんですよ。……なので、ミリス様が原因の可能性もあったりして?」
「ど、どういうことです?」
「だってミリス様って本来『聖女』になれる『器』ですし。そんなミリス様が四六時中身につけていた指輪(エリクサー付き)で、しかも起動の際に神狼ハティが関わってしまったんですから。若返りの効果くらいついてしまうものなのでは?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
視線だけで『あなたのせいでは?』『いやいやあなたのせいでは?』と押しつけ会う私とミリス様だった。ふっ、短い付き合いだけどもう心と心が通じ合っているらしいね。
『……バゥ(いや相乗効果だろ。どっちも原因だろ)』
呆れた目をしたハティに突っ込まれてしまった。どうしてこうなった?
◇
お茶会の途中。
お手洗いに向かっていると廊下でウィルド様にばったり出くわしました。今日はレナード子爵家でのお茶会ですからね、リリア様のメイドをしているウィルド様がいても不思議じゃないでしょう。
いや神様にメイドさせている現状は不思議の塊ですけどね。リリア様、もう少し自重してくれませんか……?
『感心。さすがはミリスと褒め称える。自らゆがめた運命を軌道修正するとは』
「あ、はぁ……?」
ゆがめた運命を修正したというか、もう一回ゆがめて360°回転しちゃったと言いますか……。というかウィルド様的にはセバスさんの若返りって私が原因なんですか?
『肯定。ミリスが諦めなかったからこそ今がある』
今……。まぁ、セバスさんが病死してしまうよりはマシなんでしょうけど。結果としてセバスさんの運命をゆがめちゃったので喜んでいいのか微妙ですね。若返りだからこそ誰も文句を言いませんでしたけど、逆だったら大変なことになっていたのでは?
『残念。アンスールが関わっている時点でそんなことにはならない。―― 一流を三流に。悲劇を喜劇に。そうあれかしと望まれた世界の体現者こそがリリアなのだから』
なんだかよく分かりませんが、リリア様が凄いと納得しておけばいいんですかね?
「首肯。アンスールは凄い」
なんだか妙なルビが入っていたような。はい、気のせいですね。深く気にはしません。神様相手のツッコミはキャパオーバーですので。
『…………』
ウィルド様がじぃーっとこちらを見つめてきます。なんですか? 私リリア様みたいに面白いことできませんよ?
『思考。運命の改変に成功した以上、ミリスにもそろそろ色々教えていくべきかと思う』
いや結構です。私平凡な悪役令嬢を目指していますので。
『提案。いきなりすべて教えるのは酷なので、ミリスからの質問に答える形で徐々に教えていくのがいいと考える』
神様って人の話聞かないんですか? ……聞いてくれそうにないですね。
色々と諦めた私はテキトーに質問してこの場を離れることにしました。う~ん、質問、この世界に関わることで何か気になること……。
私の脳裏に浮かんできたのは今回の一件の原因とも言えるアレでした。
「……あの、ポーションって何なんですか?」
原作ゲーム的に言えばHP回復役。こちらの世界ではランクに応じた病気やケガを治す万能薬。
普通に考えておかしいです。世界には多種多様な病気、ケガあるというのにたった三種類(上級、中級、初級)の薬を振りかけたり飲んだりするだけで治ってしまうだなんて。
可能性としてあげられるのは魔法薬の一種ですが、魔法薬って『元々の薬効を魔力で高めている』代物ですからね。大本となる、病気にもケガにも効く薬、なんてものがあるはずがありません。
私からの質問を受けウィルド様は何か悩むように虚空を見つめてから、こちらに視線を向けました。
『会議終了。その程度なら伝えて平気であると判断された』
会議って、まさか神様会議ですか? て、テキトーにした質問なのに大事になっていませんか? どうしてこうなりました?
ガクガク震える私に構うことなくウィルド様はしゃべり始めてしまいました。
『ポーション。この世界的に言えば賢者の石。ミリスに分かり易いよう言葉を選ぶなら――医療用ナノマシンとなる』
………………。
………はい?
いりょーよーなのましん?
な、なんで剣と魔法の異世界でそんな言葉が出てくるんですか? といいますかそれが事実ならリリア様って医療用ナノマシン作ったことになりませんか? い、いくらヒロインでも出来ることとできないことがあると思いますよ?
じ、自重してくださいリリア様……。
ポーションの設定を開示したのはいいですが、よく考えたら本編(リリアさんがどうしてこうなったする話)にはまったく関係なかったですね……。
次回から『剣劇少女編(&スタンピードの対処)』を連載予定です。
2パターンあるプロットのうちどちらにするべきか迷っているので、ちょっと間を空けます。
次回、10月10日更新予定です。




