表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生自衛隊 ~兵器も転生!美しすぎるは最強の証!?  作者: ぷよりん
第5章 ゾディーク大陸編
144/144

荒れ果てた首都ネクスタと強すぎる骸骨  #8



 地球行きの“穴”の前から転移してアルハザード国の首都ネクスタに姿を現したら、私の両肩に乗るソルト君とカルピンチョ君ってば開いた口が塞がらない程に驚きまくっているのだ。


 それは彼らが『ゾディーク大陸で発見したA国基地』と『ロボット神』の存在を私に教えてもらっておらず、その為に『ウォルマー博士との決戦はダマスカスの廃墟で』と考え、当てが外れたという思いも有るに違いない。が、所詮そんなモンは些細な理由に過ぎず、彼らが驚く真の理由とは街中が思いっ切り破壊されまくっていたり、味方陣営がたかが(・・・)骸骨を相手に劣勢を強いられていたりと、目を疑う信じ難い光景が見えているからなのです。


「これは一体どうした事だ!? 剣聖やアニエス魔王でさえ骸骨に敵わんとでもいうのか!?」

「有りえません! そもそも骸骨なんてゴン太に毛が生えたくらいにしか強くないのですから!」

 

 やっとショックから立ち直ったのか、ソルト君とカルピンチョ君が騒ぎ出した。

 それは良いのだけれど、彼らの言う事が本当だから恐ろしい。


 つまり、ここ(・・)瓦礫の山と化した噴水広場から見る限り、壊れたウインザー城の周りでは剣聖と勇者パーティがたった(・・・)二体の白衣を着た骸骨に翻弄され、どんよりと薄暗い上空ではアニエス魔王がたった(・・・)一体の黒衣を着た骸骨に押されまくっているのだ。


「ったく、情けないぐらいヤラレまくりじゃんか。なんとか戦車型魔獣は倒したみたいだけど、綺麗だったウインザー城が城壁もろとも吹っ飛んで半壊だし、街中に有る店舗や住宅も燃えたり崩れたりのペシャンコだよ。まっ、幸い人的な被害は少なそうだから良かったけどさ」


 呆れてポツリ。するとソルト君。


「まだ少数の市民が街中に取り残されていますな。逃げ遅れたのでしょうが、上手い具合に兵士やギルドハンターが救助に駆け付けて街の北部に誘導している様です。おそらく、方向的に魔法学校にでも避難させているのでしょう」

 

 私の頭にもたれ掛かり、辺りをキョロキョロ見渡している。


「それにしても」と、次にはカルピンチョ君も始めた。


「ソフィア司令官、ウォルマー博はここに居るのでしょうか?」

「いや、居ないよ。どうしてだい?」

「剣聖やアニエス魔王が居るのにこうも街中を短時間で破壊し尽くすなんて、果たして骸骨と生物兵器だけで可能なのだろうかと疑問に思いまして」

「へぇ、君も鋭いトコを突いてくるじゃん。そう、その疑問は正しいよ」

「と言う事は……」

(たちばな)魔王が追跡中のウォルマー博士は、ミスカトニックに行く最中にちょいと(・・・・)暗黒の力をばら撒いてみたんだ。行きがけの駄賃ってゆーかオマケっつーか、力試しついでのほんの(・・・)余興だろうね」

「こ、これで余興ですか」


 カルピンチョ君も、ついでにソルト君も絶句。

 ソルト君なんか元から体全体が青いから良く分かんないけど、たぶん顔を青褪めさせていると思うの。


「私の怒りを誘って直線的な攻撃を仕向けてるんだよ。なんせウォルマー博士も骸骨も“私”を殺さない限り未来は無いから、彼らなりに知恵を絞っているのさ。まっ、戦略に関しては私の方が一枚も二枚も上手だし、こんなヘナチョコ作戦なんか屁でもないけどね、くふふ」


 ほくそ笑んだら、ソルト君が渋い顔で言ってきた。


「しかし、骸骨達がああ(・・)も強いのはどんな理由でしょうか。黒衣の奴なんか空も飛んでるし、何か彼らの身に起こりましたか?」

「それについては後で詳しく説明するけど、骸骨は『混沌の力の“おこぼれ”』を(あずか)っちゃったと覚えてて。彼らも『あの場所』にロボット博士と一緒に居たからね」

「ロロロ、ロボット博士とは!?」

「フッフフ、真っ白なフ○ーザ級ロボットだよん。とにかく、すぐに剣聖も白衣の骸骨達を追いかけながらここに来るから、君達はここで待機して勇者パーティに加勢してね」

「は!? ハハッ!」

「畏まりました!」


 なんとか敬礼したお二人さん。

 さすがは元エリート自衛官だけあって命令には絶対服従の即行動で、すぐさま私の肩から地面に飛び降り瓦礫の隙間に小動物な体を潜り込ませて潜伏を開始した。


 ただし、私がアレコレ知っているのが変だと気付かなかったのだ。

 ウォルマー博士や剣聖の動向なんて『先見』の内容を知らなきゃ説明できないのに、そこん所を疑問に思わなくっちゃイカンのじゃ。


「まだまだ未熟よのう。もしかしてヒトデとカピバラになって脳ミソが小さくなっちゃったかな。な~~んてね、くふふ!」


 二人の隠れんぼを横目で見つつ忍び笑い。次には地を蹴って勢い良く空に飛び立った。

 んで、早々とたった(・・・)一体の骸骨に苦戦しまくっているアニエス魔王の背後に詰め寄ったのだ。


「もしも――し。ここは私に任せて、貴方はミスカトニックへ」

「うるさ―――――い!」


 フレンドリーに話しかけたら、思いっきり邪険な返事がかえってきました。


「アンタなんかの助けは要らないわ。こんな骸骨野朗なんか私だけで余裕なんだからね!」

「け、けど、顔も体も怪我をして血が出てるし服もボロボロ……」

「これぐらい死闘を演じてたら当たり前でしょ! アンタは剣ジイでも助けてなさい!」


 けんもほろろでソッポを向いた。ってゆーか、自分で死闘なんて言っちゃったよ。


「よく来たな、闘技場の女神」


 不意に黒衣の骸骨が話しかけてきた。

 科学班ではなく軍人なのだろうが、燃えるような眼窩に光る赤い瞳をアニエス魔王を素通りさせて鋭く放ってくる。


「いよいよお前が肩入れしている者達の治世が終わるぞ。こんな状況では責任の所在を明らかにする為に、本来のJ国司令官と呼んだ方がしっくりくるかね?」

「なんとでも好きに呼べばいいよ。それより私のせいで戦争が起こっているみたいに言わないで欲しいね」

「フフッ、だが事実だ。魔王風情なぞ物の数に入らんし、お前をおびき寄せる為だけに破壊活動を行いこうして(・・・・)長々と戦っているのだからな」

「なんですってぇ――――っ!?」


 いきなりアニエス魔王が大絶叫。

 

「長々と戦っているって、それじゃあ私との戦いはお遊びだったって言うの!?」

「当たり前だ。ウォルマー博士には足元にも及ばんが、我々も神の力を手に入れているのだよ。貴様なぞ何時でも片手間で殺せる」

「く、く、く……」


 骸骨に鼻であしらわれ、アニエス魔王は二の句が出ない。

 よっぽど頭に来たのか歯軋りしながら体をプルプルと震わせるばかりなのだけど、そんな彼女を無視して骸骨が私に話しかけてきた。

 

「司令官、一応は聞いておくがウォルマー博士に従う気はないかね? 彼は、いや、あの御方こそが全宇宙を真に統一し、疫病も戦争も無い永遠の平和を築き上げて下さるのだぞ」

「そんなの無理に決まってんじゃん。永遠の平和とかそういう欲望を実現させたいと思う人間が現れる様に、人が人である為に持っている欲望が必ず他の欲望を押しのけようとするんだからさ」

「うん? それはどういう意味だ」

「ウォルマー博士が如何(いか)に強烈な力を手に入れようと、如何に清廉潔白で(こころざし)が高かろうとも、結局は神様じゃあなくてたかが(・・・)人間でしかないってコトだよ。人である限り長い時間を経れば当初の思惑や目標とは違った方向に様々な欲が出てくる筈だし、そうなりゃ自分でも気付かない内に民を苦しめて平和を乱す要因に自分自身が成り下がっちゃうんだ」

「フンッ、また(・・)平和を求める者が立ち上がり、戦いは繰り返されるとでも言いたいのか。言っておくが、あの御方に歯向かえる者などどの(・・)世界にも存在せんぞ。絶対的な力を手に入れた神にも等しい者の為政を、力無く滅び去ったかつて(・・・)の独裁者と同等に考えるな」

「あのね、どんだけ強かろうが最後にはみ――んな滅ぼされてるんだけど。それに、ウォルマー博士もあとで私がヤッツケちゃうから、やっぱり全宇宙の統一なんか無理なんだモンね~~」

「……無駄な話し合いだったようだな。まあいい、このゴミどもをお前の目の前で殺し、実力の差がどれ程離れているかを実感させて……」


「ごちゃごちゃウルサ――――イ!」


 またまたアニエス魔王が大絶叫。

 顔を真っ赤にして骸骨を指差している。


「黙って聞いてりゃ何をくだらない話ばっかしてんのよ! 永遠の平和とか宇宙統一とか馬鹿じゃないの!」

「……口を利くのも汚らわしいな。任務とはいえこんな愚か者と付き合わなくてはならんとは、自分の不幸を呪いたくなる」

「よくも言ったわね! 北の大地に魔王として君臨して約百年、これ程までの屈辱を味合わされたた事なんか一度も無いわ!」

「だったらどうした、魔王を辞めて一般人にでも落ち着くか? もっとも、貴様みたいな見かけだけの能無しでは安酒場のホステスか、ゴロツキ相手の娼婦にしかなれんだろうがな」

「も――――う堪忍袋の緒が切れたわ! 見てらっしゃい、今からギッタギタの八つ裂きにしてブッ殺してやるんだから!」


 そう言うと右手を肩の位置にまで水平に持ち上げて、何故だか右手側面に縦になった魔方陣を作り上げた。

 

「おいで、マコ!」

 

 なんか叫んだ。

 

 女の子の友達でも応援で呼んだのでしょーか、と思いきや。

 魔方陣から現れたのは真っ黒な甲冑で全身を覆ったスッゴク見覚えの有る巨体の魔物で、どこからどう見ても以前アニエス魔王にシバキ倒された魔皇帝でした!


「お呼びで御座いましょうか、アニエス姫」


 召還されるなり空中で片膝付いて丁寧な口調。

 姫なんて付けちゃって、なんだか妙に従順になっていますがね。


「今からこの胸糞悪いスケルトンをぶっ殺んだけど、アンタ暗黒魔法に耐性が有ったわよね」

「もちろんで御座います。暗黒魔界を統べるワタクシめこそが暗黒魔法随一の使い手で御座いますので」

「ならコイツの攻撃を防いでおいて。私はその間に糞骸骨を凍らせて粉々に砕くから」

「承知いたしました。全ては姫の御心のままに」


 アニエス魔王が鼻息荒く命令すると、マコちんは(うやうや)しく頭を下げた。

 対して骸骨氏。武器も何も持っていない両手を胸元で体の幅で外に広げ、A国人らしい「あ~あ」ってなジェスチャーで肩をすくめています。


「無駄な足掻きを。ゴミが増えてもゴミのままだ」

「どっちがゴミか思い知らせてやるわ! いくわよマコ!」

「ハハッ!」

 

 骸骨の侮蔑を無視し、アニエス魔王はマコ氏を引き連れて上空へと飛翔した。


「もう容赦はせんぞ。そこで燃え尽きてしまうがよい!」


 骸骨は燃える瞳を上空に向けると、両手を頭上に掲げて真っ黒な霧を手の平から噴出した。その時だ。

 マコ氏が反撃とばかりに真っ黒なバスケットボール大の炎弾を大量に落っことしてきて、それと同時にアニエス魔王が骸骨の背後へと猛スピードで移動したのだ。


「なーるほど、この隙にってワケね」


 盾となったマコ氏に憐憫の瞳を送り、しかしながら巻き添えを喰らわない様にソソクサと後退した。


 んで、五十メートルは離れた安全地帯で様子を窺ってみたのだけれど、これがまた速攻で力の差を歴然と見せ付けてくれちゃっていて、マコ氏が放った炎弾はぜーんぜん骸骨に届かず、その反対に骸骨の霧は思いっきりマコ氏に届きまくりの超絶な劣勢じゃあ有りませんか。

 

 可哀相に、マコ氏の着ている甲冑なんかアチコチが焼け爛れていて、プスプスと音を立てながら焦げ臭い煙を出しているでやんの。


「グハァ――ッ!」


 マコちんが苦しげに叫びました。

 もはや中身ごと燃やし尽くされそうな勢いっスよ、フォッフォッ。


「って、笑ってる場合じゃないや。耐性が有るとか言ってたけど全然ダメじゃん」


 呆れながらアニエス魔王をチラリと見る。と、彼女は彼女で般若みたいな形相で骸骨の背中を睨みつけ、両手を胸の前に突き出して特大っぽい攻撃を始めるところだった。


「鬼も逃げ出す大迫力だなコリャ。怖すぎるからちょびっと(・・・・・)手伝いしてサッサとずらかろ……」


 そうこぼしている内に、早くもアニエス魔王がぶっ放した。


セシール(絶対零度の)セシリカ(氷結破壊)!」


 キラキラ光る粉雪が骸骨はもちろんマコ氏をも包み込む広範囲に猛スピードで襲い掛かる。

 骸骨もマコ氏の相手を放って半身を振り返らせ、右手の平を突き出して真っ黒な霧の放出で迎え撃った。


 その結果。

 アニエス魔王渾身の攻撃は、あっという間にみーんな無くなっちゃいました!……なんだけど、こんなの延々とやっていたら埒が明かないっつーの。


ぴゅあぴゅあ(清き美しい)パニッシュビーム(女神のお仕置き)!」


 人差し指をピンと跳ね、レーザー光線みたいな真っ白な聖なる力を撃つ。

 骸骨は自分の脇腹に聖なる力を撃ち込まれて一瞬ビクンと体を震わせ、何が我が身に起こったのかと自分の体を(せわ)しなくまさぐり(・・・・)出した。


「コラ――――ッ、余計なことするな――――っ!」


 すかさずアニエス魔王の文句が飛んできた。


「まあまあ、そう怒らないでよ。私の代わりに骸骨氏を煮るなり焼くなりボコるなり、好きにして鬱憤を晴らしていいからさ」

「そんなの言われなくてもするわよ! とにかくアンタなんかの助けは要らないの。どこかに行って昼寝でもしてなさい!」

「ハァ、そうでっか。んじゃま、私はここら辺でお(いとま)して剣聖爺さんのトコに行ってこようかな。あっそうだ、一応言っとくけど今ので骸骨氏の強さは10分の1くらいになったからね」

「ぬわんですって!?」


 アニエス魔王はギラギラと青光りする瞳をカッと見開き、次には口端を歪めで口元だけで喜びを表現した。


「ウッフフ、聞いたマコ?」

「ハハッ、しかと耳に入れました。なんでも、この骸骨野朗は我らに骨の全てをへし折られ、バラバラにされた上に食虫植物の肥料になるとか」

「だよね~~、キャッハハ! よおし、さっそく作業に取り掛かるわよ!」

「ハハ――ッ!」


 二人は薄ら笑いを浮かべると、さっそく骸骨の上から前からにじり寄り始めた。対して骸骨氏。今の今まで真っ赤に燃え盛っていた瞳を急にシュ――ンと小さく縮こませ、哀れにも恐怖に(おのの)いている感じ。


「ク、クソッ、そんなのハッタリに決まっている!」


 焦りながらも再び黒い霧を出した。が、かつての威力は何処へやら。

 余裕ぶっこいているアニエス魔王とマコ氏の片手払いだけで、ススみたいなチッポケな塊は軽く一蹴されてしまったのだ。

 

「J国司令官、俺は戦う力も無く無抵抗だぞ! こいつらの横暴を止めろ!」

「なーんかどっかで聞いたセリフだなあ。ともかく、もう(・・)どうしようも無いから諦めておくんなまし」

「ふ、ふざけるな! 貴様、それでも規律ある軍人か!」

「もちろんだよ。だから一般市民を大量虐殺した軍人は極刑になるって、嫌というほど良く知っているのさ」

「それはアーゼル大佐だ! 俺やウォルマー博士は関与していない!」

「ふーん、そうなんだ。じゃあ、共謀共同正犯と騒乱罪で禁固20年くらい……って、もう遅いか」


 骸骨氏はアニエス魔王とマコ氏に黒ローブとフードを引っ掴まれ、その途端にブン殴られて蹴っ飛ばされて焼かれて煮られてetc(エトセトラ)


 とどの詰まり、ボッコボッコのシバキ倒されです。


「ギャア――――ッ!」


 すんごい悲鳴が聞こえてきた。

 

 なので、怖いからトットと退散して剣聖爺さんの姿を探す方向にチェンジ。そうしたら、ちょうどウインザー城の裏手から城の正門前へと走って来る所がバッチシ見えて、ついでに勇者パーティまでくっ付いていたから探す手間が省かれてとってもラッキー。


 だけれど、彼らの後ろから白衣を着たマシンガン片手の骸骨二体が追いかけていて、剣聖含めて皆で必死の逃亡劇を繰り広げていたからとってもアンラッキーです。


「まっ、これは予定されていた通りだし文句を言っても仕方がないか。それに剣聖だって勇者パーティを先に逃がしながら殿(しんがり)(つとめ)めているし、これはこれで上出来かもよ」


 空中で一人ウンウンと(うなず)いて納得し、とりもなおさず連中の真上に移動して様子を観察してみた。そしたら速攻で魔導師のヴェルの情けない声が聞こえてきた。


「ゼエゼエ、もうこれ以上走れない。死ぬぅ~~!」

 

 ゼーハー息をしながら助けを求める。

 体力が少なそうな彼女ってば勇者パーティの中で最後尾を走っていて、頭の上の猫耳を力なくダランと垂らしているわ顔から血の気が失せているわで今にも倒れそう。


「頑張るんだ、もう少しでソフィアが助けに来てくれるから!」

「そうよ、それまで諦めちゃダメ! 絶対に生き延びるのよ!」


 熱血ドラマ風に大声を放ったのは、勇者とアルハザード王親衛隊長のラーシャ。

 ヴェルの前を走りながら元気付けた彼らだけど、当の本人達が千鳥足のヘロヘロざんす。


 ラーシャなんか所々が焦げた金髪を振り乱して必死の形相、歯を食いしばっての逃避行だし、このフルマラソンを制して元気なままでいるのは先頭を走る筋肉マッチョのガラカンと、時折後ろを振り向いて骸骨が撃ってくるマシンガンの球を弾き飛ばしている剣聖ぐらいだろうか。


「みなさんエグイことになってますな、くふふ。まっ、とりあえずは骸骨の弱体化だけでもしとこっと。もうすぐソルト君達が隠れてる噴水広場に達しちゃうモンね~~。って事で、キュアキュアハート!」


 “ピシャン!”


 雷みたいな音をさせ、聖なる力は骸骨二体の脳天に直撃。

 そしたら二体ともズッコケて瓦礫の山に突っ伏し、そこがまたソルト君の隠れ家に近かったもんだから、水色ヒトデとカピバラに有り得ない急襲を受ける羽目になっちゃったのだ。


「ソルティングフラッシュ!」


 ソルト君が二体の骸骨の面前に飛び出し、全身から強烈な光を放って目眩(めくら)ませをする。カルピンチョ君も


「カピバラニードル!」

 

 と、続けざまに颯爽と姿を現し、目潰しを喰らって恐慌に陥っている骸骨達にダガーの様に固くなった髭を大量に撃ち込んだ。


 すると骸骨達。

 自分の骨の隙間に長~~い髭が突き刺さって上手く間接を動かせず、目が見えないなりの適当なマシンガンの乱射も出来ないでいる。ってゆーか、力が弱くなって目が見えない学者なんか物の数ではなく、逃げていた勇者パーティも加わって早くも本格的なフルボッコが始まっているのだ。


「ソフィア!」


 不意に、剣聖が地上から大声を出してきた。

 手招きしているから降りて行くと、疲れた顔ながらも興奮した口調で話し出した。


「今のは聖なる力じゃろ、遂に完全なる女神として覚醒したんじゃな!?」

「うっふふ、そうだよん。なんだかプ○キュアみたいだったでしょ」

「プ、プリ? よう分からんが、新たな神を倒せる力は手に入ったのか?」

「まあね。さっきの聖なる力だけでは倒すのは無理だけど、そっち(・・・)を使えば何とかなると思うよ」

「そうか! よし、さっそくタチバナと合流して新たな神を倒すぞい!」

「ちょっと待って。それはイイんだけど先に作戦を考えたいんだ。このままじゃあ新しい能力を使おうにも博士に近づくことさえ出来ないからね」


 はやる剣聖を抑えて骸骨をボコり終えたソルト君や勇者達を呼び寄せ、ついでに上空でマコ氏に肩を揉んで貰ってリラックスモード全開なアニエス魔王の眼前に、優しい人なら“集合だよ――”の意味にしか考えない、シャーペンの芯みたいな極細の稲妻を打ち上げてみた。その途端にですよ。


「なにすんのよ!」


 と、優しくないアニエス魔王が金切り声を引っさげ、パトリオットミサイル並みの反撃力で速攻やって来た。


「ヤルってんならいつでも相手になってやるわ! 聖なる力を使えるからっていい気になるんじゃないわよ!」

「あのね、ただ呼んだだけなんだけど」

「どんな乱暴な呼び方よ! マコ、今からこの悪ガキ娘に折檻してやるから、アンタは聖なる力を防いでなさい!」


 アニエス魔王は私の顔面を指差しながら後ろを振り向き、遅れてやって来たマコ氏に歯を剥き出して怒鳴った。


「姫、落ち着いて下さい。この少女の全身から漏れ出す高貴な『気』は紛れもない女神の物です。我等が死力を尽くして立ち向かおうとも流石に(かな)いませぬ」

「んなモン知るか! 相手が女神でも天帝でも何でも、私を怒らせた奴は折檻しなくちゃいけないの!」

「し、しかし女神の聖なる力ともなれば、この私めも消滅してしまう可能性が……」

「そんな可能性より、私の言うこと聞かないで地の果てまで吹っ飛ばされる可能性の方が高いわよ! さあ、命令に従うか“あの世”まで飛んで行くか今すぐ選びなさい!」

「そんな……」


 すんごい無茶振りなアニエス魔王と、それを受けてオロオロするばかりなマコ氏。

 なんしか結論が出るのは時間が掛かりそうなので、もう放ったらかしにして話を進めるのです。


「――――という訳で、皆にはロボット神をブ―ディゾンにまで誘導するのを手伝って貰いたいんだ。今のままで直接戦っても勝てる相手じゃないし、かと言って私の聖なる力で弱体化できるようなヤワな奴でも無さそうだしね」


 大雑把にウォルマー博士の現況と討伐作戦を伝え、皆を見渡して反応を待った。

 最初に口を開いたのは、疲れ果てて立っているのがやっとな感じのヴェルだ。


「なんとなくだけど、宗教国家のブーディゾンに行けばアンタの力が爆上げになるってのは理解したわ。けどさ、ワザワザそんな事しなくても今のままで十分倒せると思うのよね。さっきアンタが骸骨に当てた聖なる力なんか、余裕で彗斗の百倍くらい威力が有ったんだもん」

「それでもまだ不十分なんだよ。なんせ奴は『暗黒の力』と『青色レーザー砲』を自由に使える魔法と科学のハイブリット神で、かつ、元々のパワーとスピードが魔人ブ○やゴールデンフ○ーザを超えている変態的な怪物だからね」

「……後半のが意味不明。新たな神の仲間?」

「ま、まあ詳しくはまた今度ね。ともかく、さっき説明した“新しく手に入れた術”を使おうにも今のままじゃあ近づく事さえ出来ないんだ。だからどうしてもブーディゾンの皆さんの力添えが必要になってくるんだよ」

「なるほど……。(よう)は“祈りのパワー”を貰って、安全に死なないように戦いたいって魂胆なのね」

「そうそうそれ。ウフフ!」

「もう何を喜んでるのよ! 言っとくけど、アンタが危険と考えてる怪物にアタシ達が“ちょっかい”出せる訳が無いんだからね。ブーディゾンに辿り着くまでに、ぜぇ――ったいアンタ以外の全員がブッ殺されているわよ!」


 ヴェルは猫耳を振りフリ、お先真っ暗ってな顔。で、次には黙り込んだヴェルの替わりにラーシャが話し始めた。


「問題はどうやって“その怪物”を私達が誘導するかよね。ミスカトニックからブーディゾンまで結構距離が有るし、たかが(・・・)骸骨に手こずった私達が安易に手を出せる相手じゃないわ。ソフィア、貴方は何か良い手でも考えているの?」

「そこなんだよね~~。実はさ、良い手なんか全然考えて無いんだよね、アハハ」

「……やっぱり貴方は大物よ。彗斗、ガラカン、ソフィアはこうだし私達で考えましょ」


 ラーシャはジト目で私を一瞥(いちべつ)し、腕組して既に悩み始めている男二人に近寄った。


「彗斗はどう? 良いアイディアは思いつくかしら」

「そうだな、相手は元科学者だから……」

「科学者だから?」

「ほら、科学に関係する話題とかを持ち出して、博士の気を僕達との戦闘から逸らせばいいんだよ」

「例えばどんな話題よ」

「ロボットの作り方とか『混沌の力』の原理とかがいいんじゃないかな。ウォルマー博士にしても最新の話題だし、きっと僕達みたいな素人とも熱い議論を交わしてくれるさ。で、気付く頃にはブーディゾンに着いていると」

「ちょっと、ブーディゾンはミスカトニックから二百キロ以上も離れているのよ。馬車でも二日はかかるし、その間ずっと私達の相手をしてくれるワケが無いでしょ」

「う~~ん、そうかなあ。名案だと思うんだけどなあ」

「彗斗ったらソフィアのお気楽さがうつったみたいね……。ガラカン、貴方はどう?」

「俺か? 俺の考えじゃあやっぱ単純明快に力押しでいくっきゃねえってこった。くよくよ悩んで小細工を考えても仕方がねえよ、ガッハハ!」

「ハァ、こっちも駄目だわ……」


 豪快なガラカンの笑い声と、ラーシャの暗~~い溜息。

 そんな結末に終わってしまい、ヴェルも“ご臨終”ってな真っ白い顔で天を仰いでいる。

 

「ウオッホン、諸君らが知らない情報を教えてやろう」


 いきなりソルト君。

 何故かは知らねど踏んぞり返ったクッソ偉そうな物言いで、しかも、私の足元から威風堂々と皆の輪の中心に進み出たじゃあないの。


「ウォルマー博士には専属の護衛が付いてたのだが、おそらくは現在も甲斐がいしく付き添っているものだと思われる。ソイツを上手く利用すれば」

「ちょい待ち! ソルト君、それってもしかして」

「そうですソフィア司令官。ウォルマー博士と同門のイルミナティ出身と噂されていた、あの(・・)グレマン大尉ですよ。彼が今まで何処で何をしていたのかは知りませんが、この(・・)最終局面において博士と一緒に行動しているのは間違いない筈です。そこでですな、」

「分かりました!」


 と、カルピンチョ君が興奮気味に割り込んできた。


「グレマン大尉を弱体化して人質に取り、それを餌に博士を誘導するのですね!」

「その通り。良く分かったな」

「そりゃあもう! ウォルマー博士がいくら絶大な力を手に入れようとも、今後の世界征服作業を一人で全て行えるものでは有りません。作業を分担させる為にも忠実な手足を残して置きたい心情な筈ですし、その点グレマン大尉なんか博士の金魚の糞と呼ばれるまでの忠犬っぷりでしたから、きっと博士も彼にだけは死なれちゃ困るでしょう」

「うむ、全てが私の考えと等しいぞ。流石はエリート自衛官のカルピンチョ君だ」

「お褒め頂いて光栄です」

「うむうむ。にしても、やはり我々の様なプロが頭を(ひね)ると、権謀策略を知らぬトーシロなぞ軽く凌駕してしまうな」

「まさしくソルトさんの仰る通り。言い得て妙とはこの事ですね、キュッフフ」

「君も良く分かっているじゃないか、ニュッフフ」


「「ワ――ッハッハッハ!!」」


 なんか大声で笑い出した。


 その尊大な姿には皆も呆れを通り越して目が点になり、私でさえも“”チミ達はアホですか?”と問い掛けたくなってくる。が、話の内容だけはベリーグッドでトレビア――ンだったから、有り難く今の作戦を頂戴するのだ。


「よし、ソルト君の人質作戦でやってみよう。私がグレマン大尉を弱体化させるから皆はすかさず(・・・・)大尉の身柄を確保して、“ふう太”か“アル子”に乗せてブーディゾンにまで強制連行するんだ。この場合、その意図を博士に悟られない様にするのが重要だから、勇者君の案も道中で実行しておいてね」

「さすがソフィア、君は分かってるねぇ!」


 いきなり勇者が弾んだ声をだした。

 何が嬉しいのか上機嫌な顔でラーシャの肩をポムポム叩いちゃったりして、本当に私の“お気楽さ”がうつったみたい。


「まっ、全速力だと1時間も掛からないから雑談を引き伸ばすくらいは出来るでしょ。ソルト君とカルピンチョ君、その間は君達がちゃーんと指揮を執るんだよ。私はウォルマー博士が放つ『暗黒の力』を掻き消すのに忙しいからね」

「「ハハッ!!」」


 こっちも嬉しそうに敬礼しております。フンマにモウ。


「じゃ、さっそくミスカトニックに転移しよっか。剣聖爺さんとアニエス魔王とマコさん、転移門を開くから私の(そば)に来て」


 地面にマーブル模様の巨大転移門を作り上げながら、満足げに頷いていた剣聖とまだ(・・)揉めている二人に呼びかけた。


「誰がアンタの転移門を使うもんですか、自分で行くわよ!」


 アニエス魔王は“キッ”と私をひと睨み、自分でハート型の転移門を地面に作った。


 んでマコ氏と言えば、私の顔と主の背中を交互に見つめて何だかモジモジとしている。

 

「わ、ワタクシめもでしょうか……」


 消え入りそうな小声でボソッと。そしたらアラ大変。


「「当たり前だぁ――――――っ!!」」


 私以外の全員から糞デカイ怒鳴り声を張り上げられ、おまけで閻魔大王でさえ怯みそうな強烈なメンチを切られましたとさ。


 まあ、それはどうでも良いのだけれど、いよいよ(・・・・)決戦の時が来たのだ。


 前女神のシャラハザード氏は闘技場の真上で戦ってしまった。

 だが、私は戦略に関して素人な彼女とは違う。


 ……グッフッフ。

 ソルト君も言ってたけど私だって戦闘のプロなんだモンね。ほんでもって司令官なんだモンね。


 ぜったいのぜったいに、トーシロ科学者なんかに負けてやるもんか――なんだモンね!










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ