大会優勝の副産物
いつまでに放課後を終わらせようと先週考えていた事ですら、無理だな、と思い始めている今日この頃。
なんて計画性がないんだろう?(笑)
俺達3人はエマを追いかけるように体育館にやってくると、凄い野次馬にびっくりする。
だが、ここでは見るのが困難だと思った俺達は、顔を見合わせると裏手に周り、俺は木によじ登り、鍵が壊れていると知っている窓に枝から飛び移る。
ルナと美紅は、壁を駆け上がるようにして着いてくるのに、相変わらずのスペックだ、と呆れる。
「ん? どうして徹は、この窓が開けられるって知ってたの?」
「ああ、1週目の時と同じなら、ここは鍵が壊れてて、よく授業をサボる時に昼寝場所にしてたんでな」
「つまり、トオル君がいなくなったら捜しに来るポイントの1つということですね。情報提供有難うございます」
逃げ場を自分で潰した事に戦慄を感じるが、今は忘れる事にする。
そして、手すりに手を載せて、体育館の真ん中で睨みあう、というか、一方的に敵視される和也と、銀髪の歪んだ精神をしてそうな笑みを見せる少年が睨みつけていた。
「カズヤッ! 俺は、ロボット工学でなら、お前に決して負けはしなかった!」
「ああ、それは、大会でも認めただろう? 俺はロボット工学は触りしか知らないから勝負にもならないと?」
和也に噛みつく少年を見ていると、どこかで見たような顔をしていると思っていると美紅が言ってくる。
「トオル君、あの人は確か、学問部門で2位になった……ネイサン・デュボワだったかと、そうですか……」
野次馬をやっと掻き分けたようで息切れをするエマが体育館の入り口から姿を現したのを見つめる美紅。
「ちょっとだけ、エマと似てる気がするの」
静かに見つめるルナの言葉を受けて、見ると確かにイヤミな感じに笑う顔だが、どことなく似てる顔と感じさせられた。
だから、エマの「世界一」という響きにイヤミが籠っているように聞こえたのかもしれないと気付く。
だが、そのイヤミというのも羨ましさからきてないというのは、今のエマを見てると理解できた気がする。
心配そうにネイサンを見つめるエマは、応援してるように見えないからである。
ネイサンは、持っていたカバンから取り出した、腕に着ける防具、ガントレットのようなモノを取り出すと装着する。
「俺の発明した物の力を使えば、武の部門もお前が世界一はなかったはずだ!」
そういうと少し遅い足であるが、必死に走るネイサンは和也に殴りかかる。
殴りかかった拳が、一瞬、目を見張るほどの速度で打ち放つのでびっくりする。
そして、両手を使って和也に乱打する。
「無駄ですね。あの力任せのやり方では、和也さんに届く事はないでしょう」
「そうなの。確かに速いけど、あんな単調な動きでは、避けるの簡単なの」
ルナと美紅の言葉に俺も頷く。
確かに、あの動きの遅いネイサンから打ち出されると思えないような切れの良いパンチを打ち込むが、目に捉えられない速度ではない上に、あんな単調な動きでは、和也、勿論、俺の傍に2人、俺にも当てる事は無理な相談である。
「やっぱり、なんでもない顔をして避けられてますね」
「それはそうなの。実戦経験の差が歴然なの」
和也は踊るようにステップを踏みながら、避けていく。
そんな踊るように決める和也に黄色い声援が届けられるのを見た俺は、履いている上履きを握り締めると被り振ろうとするのをルナと美紅に止められる。
「気持ちは分かるの! 徹、さすがに狙い通りに言ったら冗談じゃ済まないの」
「いくら和也さんでもアレをまともに食らったら、最悪、死んじゃいますよ?」
「離してくれ! 俺はその最悪の結果を求めているんだ! アイツがいるから、モテない男が量産される。俺がその代表で天誅をくれてやる!!」
そんな徹にヤレヤレと溜息を吐きながら、涙目の徹を抑えにかかる2人。
徹は知らなかった。この2人もそうだが、ティティと可愛い妹のテリアに懐かれているのを見ていた野郎共に舌打ちされていた事に。
俺が、法で裁けない悪を裁くっ!!と俺が2人を振り払って、投げようとすると、体育館の入り口のほうから、ゴリラ、もとい、体育教師、大五郎がドラ声で叫ぶのが聞こえる。
それを聞いたネイサンは、ちっ!と舌打ちするとガントレットを外すとカバンに仕舞う。
それを見て、ネイサンに泣きそうな駆け寄ってきたエマが、ネイサンの腕を掴むと首を振る様にすると、ネイサンに平手打ちされてその場で座りこむ。
それを見た俺は、投げるのを止めると2階から飛び降り、エマに駆け寄り、肩を抱くようにして、叩かれて痛々しく赤くなる頬に眉を寄せる。
エマを睨むように見つめるネイサンを睨みつける。
「お前、エマの兄貴かなんかだろ? なんで叩いたりするんだ!」
俺をゴミのように見つめるネイサンは、
「はぁ? お前は何を言ってるんだ? そいつは俺の持ち物だ。どうしようと俺の勝手だ」
「ふざけんな、この子は物じゃない。兄貴は妹を大事にするもんだ!」
俺の言葉が理解できないとばかりのジェスチャーをするネイサンは嘆息してくる。
「すまねぇ、俺も日本語を覚えたの最近でな、低能に理解させる言葉の勉強は後廻しにしてた」
「そうだな、俺もお頭がおかしいやつに理解させる日本語は勉強嫌いだからしてなかったわ」
睨みあうが、すぐにネイサンは視線を切ると入り口とは違う勝手口のほうに小走りで行くのを震えるエマを抱き締めながら、睨みつけていた。
そして、俺の肩に大きな手が置かれる。
「主犯は、立石、お前か? とりあえず、指導室まで来い」
辺りを見るとネイサンは勿論、和也も姿が消えていた。野次馬も巻き込まれたらイヤだと言わんばかりに撤退を始めていた。
「ち、違う! 俺は関係ない」
「分かった、分かった。事情は指導室で聞いてやる」
そう言うと俺の襟首を掴んで引きずられる。
俺はイヤイヤするように涙目にしている先では、手を振って、エマの傍に立つ2人が言ってくる。
「エマさんは、安心して私達に任せてください」
「徹、お勤め御苦労様なの~」
「和也は助けようとするのに俺は助けてくれないのか――!」
連れて行かれる俺が面白いのか、肩を震わせる美紅と、我慢せずに笑うルナに見送られる。
そして、俺は、大五郎と2人きりで1時間、進路指導室で濃い時間を過ごす。
「せめて、かつ丼を要求するっ!!」
当然な権利だと思ったが、「給料日前だ」という言葉に俺は涙した。
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