何も信じられないこんな世の中で何を信じたらいいのか
この世の中には信じられないものが溢れている。トラックや女神による転生や水に優しい言葉をかけると美しい結晶になるなんていうファンタジーなら可愛いもの。大手企業のエアコンでも似非科学が使われているし、水に水素を入れたらただの水で無くなるそんな時代だ。いや、昔から人間はそういうものか。
医学や健康の分野ではいろいろな治療方法や薬が日々研究されている。素晴らしい研究もあれば、いかがわしい研究もある。どのような研究があれば、効果がある可能性が高いとか判断できるのだろうか。いろいろ判断方法はあるだろう。
薬や健康食品のようなものの場合、使って効果がちゃんとあるかないかは、過去の研究データから、「確率」や「統計」的に判断することができる。どんな人に効いてどんな人に効かないか、どんな副作用が起こるかといった過去の研究データはとてもとても重要な判断材料だ。過去のデータ(確率や統計)を無視して「わたし失敗しないので!」と言ってしまう医者は迷わずヤブ医者に分類される。「この治療法をすると何割くらい成功して、第一選択はこの治療法だけど効かないときはこれも考えられる」そういうことが考えられることがヤブで無い条件だと思う。何度も書くが、効果や安全を判断するためには、過去の研究データを活用する必要がある。こういった場合の過去のデータをエビデンスと呼ぶ。ヤブでない医者や医療関係者なら多かれ少なかれこのエビデンスを重視している。
海老デンスという言葉が出てきたが、どんな海老の研究なら美味しい海老を示す信じられる証拠とできるのだろうか?
これについては「エビデンスレベル」というものが存在する。試験のデザインを見て、エビデンスとしての信頼性を判断するのだ。
分野によって異なることがあるし、いろいろな基準があるので、より詳細を正確に知りたい人はググールで「エビデンスレベル」で検索!以下に書くことはちょっと自己流。
ランクI 培養細胞での試験
よくあるパターンは、がん細胞にかけたらがん細胞が死んだ!とか。
ランクH 動物実験
ラットやマウスでの試験ではまだ人間で同じように効くかわからない。
ランクG 個人の体験談、ご高説
大抵のブログ、ニュースやSNSなんかもこれにあたる。たとえ偉い人がただ美味しい!と主張しても、海老が美味しいか不味いかはそんなことで証明できない。
ランクF それよりも少し信頼できるようになってくるのが、海老を食べた実例の食レポ(研究者の間では症例報告と呼ばれる)である。複数の食レポを客観的にいくつか集めて考察してあるとなお良い。ただ、まだエビデンスとしては弱く、たまたまその日お腹が空いていただけかもしれない。
なお、健康食品とかの広告でよくみる感想や体験談はエビデンスは激弱い。悪い海老屋さんは、集めた体験談の中から、海老が不味いという意見を黙殺したり、お金を渡して美味しいと言わせたり、そもそも感想自体が存在しないこともあるからである。
ランクE 次は海老の味噌汁と海老の入っていない味噌汁をだして、美味しかったか調べる方法だ(研究者の間では症例対象研究と呼ばれる)。プラセボと言われる海老が入っていない味噌汁も出すことが味噌である。やっとこの段階から美味しい海老か少しわかってきたと言える。
ただ、たまたま海老好きが集まっていたとか、前日に伊勢海老を食べていたとか、相席になった人が美味しそう海老を食べていたとか、いろいろ影響することがあるからまだ信用できない。
ランクD 例えば、市の小学校全てに海老入りのエビフライとエビカマのエビフライをだして、多人数をしばらくの間、追跡調査する。こういった研究をコホート研究という。喫煙者100万人を10年間追跡してがんの発生率は○%でした!というやつがこれ。
ランクC 症例対照研究を行っても、献立表に海老が入っていたことでみんなのテンションが上がったり、エビカマでがっかりした人もいるかもしれない。期待感や先入観などが影響することも多い。被験者がプラセボを食べたかわからないように、目隠しをして食べてもらわないといけない。(盲検化非ランダム化比較試験)
ランクB 海老好きな人が海老を食べる対象者に多く居る可能性がある。エビカマを食べるか海老を食べるかはくじ引きで決めるべきだ。(ランダム化比較試験)
ここまで来ればかなり信じられる。
ランクA 海老が美味しいか不味いかを調べる調査は、これまでに様々な研究が行われてきた。目隠しをしながら味噌汁も飲んでもらった。これまでの研究の数々をきちんとした方法でシステマチックに華麗にまとめて、最終的に海老は美味しいか結論をだそうじゃないか。
ここまで来れば自分は信じる。
以上がエビデンスレベルだ。あなたはいつもどのエビフライレベルで満足しているだろうか?名古屋駅にあるエビフライがどえりゃーうみゃーだら。とかいう体験談で満足していないだろうか。
また、エビデンスレベルが低い情報が無駄というわけではない。低エビデンスレベルの試験結果があるからこそ、高エビデンスレベルを狙える試験を実施しよう!という話になる。エビデンスレベルが高い研究は費用も時間もかかる。可能性を探索するには低エビデンスレベルの研究が不可欠だ。
因みに、詳しくは書かないが信頼性のある研究をする流儀というものがある。例えば、ストーブ声明(STROBE声明)という基準がコホート研究を行う海老研究者の間で示されている。PRISMAとか他にもそれぞれの研究にはそれぞれの流儀がある。論文や文献を読む際には、研究それぞれの基準に立ち戻って確認したいところ。また、エビデンスに基づいた医療を目指して高エビデンスレベルの試験を行う国際組織も存在し、コクラン共同計画とか有名なところもある。コクランさんで行われた研究なら自分の中ではSランクと思っている。まじはんぱねえ。
結構、流儀に反した研究が沢山あるので、一つの研究くらいでなかなか信じられないのが悲しい現状で、そうしたエビデンスレベルの低い情報や質の悪い情報が、うぶな僕らを惑わせる。
このエッセイではさわりしか書いていないので、似非科学撲滅戦士希望者諸君は、エビデンスレベルやSTROBE声明、コクラン共同計画を是非ググって毎朝みんなの前で暗唱して欲しい。
大麻の情報はエビデンスの足りないものでも鬼の首を取ったような表現をしたり、そういう事例に溢れている。本当に信じるに足る情報なのかよく吟味する必要がある。




