エピローグ
どうぞよろしくお願いいたします
転生と聞いたら何を思い浮かべるだろうか。
前世の知識を生かして神童扱いされたり、知識を流用して傾いた内政を盛り立てたり。様々なパターンがあると思う。私もテンプレチート小説は大好きだ。だがしかし。私は声を大にして言いたい。
チートなんてなかったんや!
私が自分のことについて知った、つまり記憶持ちの転生者であると気づいたのは実に齢五つの時である。
小説に書かれているような変わったことなど何もなかった。頭を打ったり階段から落ちたり熱にうなされたり、勿論命を狙われていたというようなショッキングな出来事が発覚したりもしなかった。私は普段通り庭にあるブランコを漕いでいただけなのである。ブランコでゆらゆらしながら今日の晩御飯について考えていたらふわ~と、それこそブランコの動きの様に前世の記憶が甦ったのである。解せない。
いや、別に奴隷として売られたいわけでも自分が前世でプレイした乙女ゲーの悪役令嬢だと悟りたかったわけでもない。だがもう少し特別感が欲しかった。せめて誕生日に思い出せたらよかったのだがさもありなん。四か月前に過ぎ去ってしまった。
これから始まるのは、無双するわけでなく、前世を悔いるわけでなく、復讐に走りもしない、ただの今世をわちゃわちゃしながら生きる、一人の人間の話である。