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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第三章〜追憶の君へ〜
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㉖「小さな穴蔵②」


「今……なんと言っんだ?」


 下品な笑い声を上げていた下郎者二人は、シークの方を見るとシークには今まで欠片も感じることのなかった覇気が露わになったことに慄き一瞬、押し黙った。


 その怒れるヘパイスト顔を見た瞬間、俺は何故か止めどない高揚感に満たされる。


 見張りの二人は思わぬ事態にタジタジになっていたが、恐喝のために直ぐに我に返って直ぐにお互いの武器に手をかけることにしたようだ。


「おい?やんのか?」


「あんなクソ女にそんなに惚れ込んでるのか?ああん!?」


「今すぐその言葉を取り消せ。彼女はそんな人ではない。シミッたれて意気地なしのこんな僕を彼女は見捨てずに励ましてくれた素晴らしい友人だ!!」


 短剣を構える二人に対して、シークは手を強く握り真っ直ぐとした視線で自分よりも背の高い二人を目上げるだけである。


 ヘパイストの凛とした視線にビクリと肩を上下に揺らす見張りの男達。小物感が半端ない。


対して、シークは今までの弱気の姿勢は見当たらず、貴族然と胸を張って姿勢を正し、相手を無意識であるが威圧していた。


俺は周りに見えないくらい小さくほくそ笑んだ。


(なんだ。言い返せるじゃねえか。)


萎縮していた見張り2人は自分のプライドを傷つけられたらしいが糞にもプライドはあったらしく、男達は怯えを怒りに変えることにした。


「あぁん!?なんだその生意気な目は?」


「テメェ、死にぃてえようだな?真っ二つにしてやんよ。オラァ!!」


 1人が短剣を振り上げて鋭い刃を振り下げようとするが、シークは戦いは素人なのだろう、その手に持っておる槍を使わずに目をつぶって両腕をかざし、刃を防ごうとしたが、そのままでは両腕が切り落とされて、そのままグサリだ。

 ましては、シークはヒョロヒョロの身体だ。この男の言う通り容易に真っ二つにされてしまうだろう。


(はぁ…………。こいつが死んで監視役が変わったりでもしたら、脱出の難易度が上がりそうだな。やっぱりここで死なせられねぇよな。)


 俺はため息を突きながらシークを庇うことにした。


別にこの男のことを見直した訳じゃないからな?


男のツンデレに以下用程の需要があるだろうか。作者はふと疑問に思った。


 アンセムは素早い足運びで見張りの男とシークの合間に入って武器の代わりに手錠で受け流す。


 そして短剣をそらすと共に、そのままの勢いを使って体勢を崩した男の足を掛けて転ばして、転んだ男の頭に尻を勢いよく押しつけると男は「ヘブッ」などと情けない悲鳴を上げて気絶してしまった。


この間、なんとたったの2秒である。


 シークももう一人の見張りの男もギョッと目を丸くして固まっていた。


俺は咳払いをして偶然を装うことにした。


「済まないな。俺は生まれて初めての奴隷なんだ。慣れてなくて思わず足が滑っちまった。気にするなよくあることだ。」


「いやんなことあるかぁ〜!!ふざけたことほざいてんじゃねえ!テメェ、奴隷の分際で何してやがるんだ。」


 そう言って、気絶していなかった方の見張りの男が怒りに任せてアンセムへと武器を振りかざしてくるが素人丸出しである。


だが、俺は油断しない。獅子はウサギにも本気を出すものである。無論俺も力は抜かないぜ。


(それっていわゆる馬鹿なのでは?by作者の声)


 男は俺に襲い掛かり、横振りに短剣を振り回してきた。それに対して俺は手錠のつなぎの部分で防いで受け止めると、人の急所の一つであるの腹に向けて思いっきり蹴りを食らわせた。

そして、蹴られた男は寸分の暇もなく暗い洞窟の入り口の奥に吹っ飛んでいった。


 俺達が出てきた薄暗い洞窟へと吹き飛ばされた男は壁にぶつかったようで「ガッ!?」と声を出して沈黙した。おそらく気絶しているだろうが意識が残っている可能性もあるので念のため追撃する為に俺は駆け込んだ。


「ちょっ、待ってくれ!!」


背中からシークの声が聞こえてきたが無視だ。


洞窟内へと戻ってみると男はそのまま泡を拭いて倒れていた。戦闘とも言えない一方的な戦いの終わりをつげて再び空気がシーンと静まりかえっていた。


 唯一する音は近くを通っていた幾人かの、重そうな木材を運んでいた奴隷達が、トラブルの予感を感じてどよめきながら重たい足を引きずって遠ざかって行く足音と押し殺した悲鳴のみである。


 音を立てて倒れる男にシークは先ほどの怒りなど忘れて呆然とこちらを見ていたが、俺がシークの目を合わせて「コイツラを運ぶぞ?」と、いうジェシュチャーをすると、それを理解したシークはいそいそと行動し始めた。


黙って、迅速に一人ずつ運び出していくアンセムとシークは息がぴったりである。どうやら口では言っておるようだが案外二人は仲良しそうであった。


 やっとこさ気絶している見張り二人を丁度近くにあったゴミ捨て場に放り投げることが出来たあと、静かにしていたシークがやっと口を開いた。


「…………その………、さっき助けてくれたことは感謝する。ありがとう。」


「俺の為にしたんだ。勘違いするな。それに、うざったらしいハエが落ちたおかげか清々した。そして報酬はもう貰ってる。」


「報酬か?」


キョトンと不思議そうに聞いてくるシーク。


(ああもう、察しが悪いなもうっ!!!)


「俺は、傭兵だい!貰った仕事は完璧にこなすのさ!俺はムカつく人間をぶっ飛ばせた。お前は自分の身を守れた。これで取引だ。後付だけど。」


俺がそう言うとシークはキョトンとしていたが、何を勘違いしたのか、もの有りげにこちらをクスリと笑いながら「分かったよ。」と言った。




「………で、その俺はどこに向かえば良いんだ?」


「……それ、僕に言うのか?僕は彼女に行き先は説明されてないけど。」


「……だよな。この騒動で目的地と道順が頭からすっぽり抜けちまった。どうすっかなこれ?」


(これ、迷子じゃねぇ?)





取り敢えず、俺はシークに案内されながらこの奴隷鉱山をぶらぶらと歩き回ることになった。


 手当たり次第に当てを探せばそのうち見つかるだろう。デイジーが言っていた少女は俺が寝ている時に顔を確認してたらしいから、俺を見かけたら声をかけてくるだろう。


 幸い奴隷達の多くが男性だ。

一方の女性は………言う必要は無いは無いよな。反吐が出そうだ。


 建築途中の木材式の建物が立ち並ぶ道のりを二人して歩いていると、途中で奴隷専用のパブを見つけた。  

 おそらく、こうして酒を提供させることで、不満をため込ませないようにして反乱の可能性を減らしているんだろう。以外にもあの俺をノしたというボスは支配の仕方が上手らしい。


「なぁ…少しくらい立ち寄ってたってバチは当たらないよな?」


「だ、駄目だ!デイジーに怒られてしまう!!彼女は怒ったときがとても怖いんだ!!!」


「はいはい。マザコンにはママには敵わねえよな〜」


「マザコンじゃない!」


明らかに顔を赤らめて憤るシーク少しだけ自覚があるのか無いのか動揺している様子。


「全然説得力がないぞ〜。ブーブー」


「違うっ!!」


おちゃらけながらパブへと足を向ける二人、傍から見ると、奴隷とその監視員には見えないような親友との遊びに行くような雰囲気が醸し出ていた。


――――

―――


「ど、どうしよう。お兄ちゃ、お兄さんが捕まっちゃった!!」


「…………」


「こういうとき、どうすれば………コーラスさんは何も言ってなかったわ!!!」


「………………」


「そ、そうよ!私は天才児、魔法を使えば大丈夫。こんなのチョチョイのチョイよ。え〜と…連れ去られた兄を連れ戻す魔術…魔法………。」


―ペラペラ―


「ってあるか〜〜!!そんなもん〜!!?!」


「ん?…………グエェッ!!?」


「…………………………」


 森の中でつい先程までめくっていた魔法書を地面に思いっきり投げつけている少女。投げつけられた魔法書はその自らに内包する防御の魔術によって衝撃を緩和したことで、地面を一度跳ねてからその角が気絶から目覚めかけた白髪の魔術師の顔面に見事に墜落させて、意識をもう一度遥か彼方に飛ばした。


その状況を片原にいるエルフはただ少女を見つめているだけであった。


…………ジト目で。


「そうよっ!!あんな雑魚なら魔法で薙ぎ払えばいいのよ!!!」


―ゲシゲシッ―


「ガボッ……グフッ!?」


今度は地面のつもりか何度も無意識で白髪の魔術師の頭を踏んづける少女。白髪に恨みでもあるのだろうか。


「………………………………。」


「ア〜ハッハッハッハッ!!オ〜ホッッホッホッ!!!」


「………………………………………。」


 当に、突っ込み不在のカオスである。唯一まともに突っ込みが出来そうなこの白髪の男も、今は美小女に頭を何度も踏みつけられているせいで、意識が行ったり来たりしていて役に立っていなかった。


そこ変わってください(切実)


流石の無口なこのエルフでもこのままでは拉致が空かないと感じたのかやっと行動を開始した。


―トントン―


「ん?」


 グルセナから肩を叩かれて、やっと錯乱(?)からやっと戻ってソフィアはグルセナの方向に振り返る。

 見ると、グルセナはアンセムが連れ去られた洞窟の逆方向を指差していた。


「そっちは……確かエディソンの…方向?」


コクコクと頷く。グルセナ。


「帰るの?」


首を横に振るグルセナ。


「?」


「……………。」


「誰かに助けを求めるの?」


再びコクコクと頷くグルセナ。


「当てはあるの?」


「コクコクと頷く完璧超絶ビューティーエルフのグルセナさん。」「いやっ喋れるんかいっ!!(ペシッ)」


――――

――


「こ、ここが頼りになる知り合いのいる場所?」


私の質問に答えずズシズシと古びたレンガ造りの建物に入っていく気絶した白髪の男を背負う無口エルフの後をオズオズと行った様子で追っていった。


看板を見ると、「荒野の叫び」と書いてあった。


(確か…兄さんがよく通ってた酒場?だったけ?確か、『マスター』と呼んでいる友人が働いているっていう。本名はジークといった筈だ。)


彼とは直接会うのは今回が始めてだ。兄はこの町に着いてからよくこの店に通うようになったが、確かにいいここはいい場所だとソフィアは感じた。


―チリンチリン―


「らっしゃい」


 玄関のドアを開けると店の奥から騒ぎ声と共に僅かに酒や汗の匂いが香るが、たまに聞こえるステーキの匂いで上書きされていて不快に感じなく、レンガの建築の内部にある木造の柱などの多くの置物から香る濃厚な匂いが騒がしい店に落ち着きを生み出していた。


店のカウンターへと向かうグルセナと私へと初老の男性が、声をかけてきた。恐らくこの店の店主だろう。


「で?お客さんご注文は?」


「えっと……ビール2本で。」


「飯は?」


「エルフって肉は食べれるんだっけ?」


ソフィアが昔見た絵本ではエルフは肉を食べている描写などはないので、肉は食べないのかもしれないが、所詮は子供用の絵本だ。それを鵜呑みにしては失礼だろうと、私はグルセナへと振り替えるとグルセナはサムズアップしていた。それもいい笑顔で。


……………寡黙で静かだと思っていたが、このエルフの評価を少し変えたほうがいいかもしれない。


「じゃあ、休めのお肉のステーキとパンそれぞれ二つずつで。」


「好きな席に座りな。出来たら呼ぶからこい。オイッ、ジークーー!!新しい客だぁ。店の案内をしろーー!!」


「ハイハイッ!!今行くよー!!」


注文の料理を作りにカウンターの奥へと出ていった店主の入れ替えで、兄よりも少し離れた年頃の少年が料理をお盆に乗せながら勢いよく出てきたがグルセナに担がれた気絶している白髪の魔術師の姿を見て咎めるようにこちらを見てきた。


「いらっしゃい………って、お客さん。気絶してる人を迂闊に店内に入れないで欲しんだけど。」


(よ、良かった〜。さっきの店主は完全に無視を決め込んでいたけど、この子は常識人だった〜!!)


私が何処か安心していたが、「入れるなら、店の裏口からにして欲しいんだけど。」


(ん?聞き間違いかな?)


「ただでさえ『荒野の叫び』は荒くれ者が多くで評判が悪いのにこれ以上悪くなったら、一般のお客さんが来なくなっちゃうじゃないですか。」


(理由は普通だけど、どこかズレてる………。)


因みにだが、この店に一般人が来ることはない。一見一般人に見えてもそれはだいたいが本性を隠した犯罪者か何かである。この店は荒くれ者も一般人も余所者も関係なく客と扱うので、治安は最悪に見えるが、気に入る者も多いこの店を荒らそうという物好きはいないので比較的安全である。


「取り敢えず早く来てください。どうせ、個室でしょ?」


「いや、ローグはいるか?」


「…………ちょうど個室にていらっしゃいます。」


明るい笑顔で対応していたジークと名乗っていた少年が真剣な表情に変わり、歩き出した。


(ローグ?何処かで知っている名前のような………。)





次回は3月21日です。お楽しみに!!

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