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【書籍化】悪役令嬢の兄に転生した華族令息の俺、破滅回避のために妹教育を頑張ったら、最高に可愛いブラコン令嬢を爆誕させてしまいました  作者: 遠 都衣
中等部2年生編

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第79話 恩恵は受けてても盗み食いはダメです

「できた……!」


 器に盛り付けたフルーツポンチを前に、ふう、と息をつく。

 

 白玉の他に用意したフルーツ。

 夏みかん、スイカ、桃、バナナを食べやすい大きさに切って、白玉と一緒に器に盛った後、シロップをかける。


 はあ……、頑張った俺……。


 缶詰フルーツとシロップを器にドボドボン、ではなく、生のフルーツをすべて食べやすい大きさに切るのは結構手間がかかった。


 蒼梧が「手伝うか?」と言ってくれたけど、包丁を握ったことがあるのかと聞いたら「ない」と答えられたので、とりあえず見てるだけでいいと丁重にお断りしました……。


「ふむ……、どれどれ……」

「あ、だめです蒼龍。ステイ」


 べしっ、と。


 油断も隙もなく、出来上がったばかりのフルーツポンチを盗み食いしようとする蒼龍(ふとどきもの)がいたので、すかさずその辺に転がっていたバナナの皮を異能で顔面にべしりとぶつけた。


「……のう、蓮……? これは、あまりにも不敬というものではないのか……?」

「何言ってんだ。盗み食いを働こうとしていた奴が」


 ぷるぷると震えながら顔からバナナの皮を避けた蒼龍に、蒼梧がぴしゃりとつっこみを入れる。


「なんと……! 皆《みな》が見ている目の前だと言うのに盗み食いとな!」

「はいはい。でもだめですよー。まだ冷やしてないからぬるいですし、食べるのはみんな揃ってからです」


 俺が蒼龍に向かってそう言って軽くあしらうと、「ぬ……、うむ……」としぶしぶながら納得する様子を見せた。


 そうして、ようやっと大人しくなった蒼龍と入れ替わるように、突然隣にぬっと現れた人影があり。


「主(あるじ)、洗い物は我《われ》も手伝う」

「……うわ、びっくりした」


 白(びゃく)が珍しく人型をとり、洗い物をしようと流しで食器を手に取った俺の隣に並び立ったのだ。


「……俺、白(びゃく)が人型とったの初めて見たな」

「あれ、蒼梧見たことなかったっけ」


 とはいえ、俺も片手で数えられるほどしか見たことがない。

 以前、『白(びゃく)も人型を取れる』という話を聞いたあと、試しにどんなものか変わって見せてよと頼んだのが1回。

 それから、妹たちに見せるためにもう1回。何かあった時に知らないお兄さんだと警戒されないように、顔通しだけはさせておこうと思ったから。

 あとは……、なんだっけ?

 なにか頼み事をする時に変わってもらった気がするけど、なんだったか忘れた。

 まあとにかく、そう考えると外で人型を取ること自体が初めてなのかもしれない。


「珍しいけどね。あんまり人型取りたがらないよな」

「……この姿だと衣服が重いし動きにくいのだ」


 そう言って、灰白色の和服の袖をうっとうしそうに紐でたすきがけにする白(びゃく)なのだったが。


「しかし、我はどこかの自己中神獣と違って、主人を労われる神獣だからな」


 と、蒼龍にドヤ顔を決めながら洗い物を手伝い始めた。


「白(びゃく)……、喧嘩売るなよ……」

「おい蒼龍、言われてるぞ」


 両方の主人が窘めるが、言われた方の神獣たちはそろいもそろってどこ吹く風といった感じだ。


「ふん! 我の責務は主人を守り助けることで、雑務をすることではないからの」

「はっ! そう言って、主人に甘えて怠惰《たいだ》どころか菓子まで貪《むさぼ》っている奴が言うことではないわ……!」

「なにを……!」

「あーもういいからいいから!」


 ただでさえ暑いのに隣で喧嘩をされたら余計に暑さが増す気がする……!

 そう思って、ふたりの言い争いを止めるために大声を上げて静止したのだが。


「……そもそも我の特性は、【成長と発展】であるからして。こうして我が菓子製作の成功を願って見つめているだけでご利益があると言うものじゃぞ」


 ありがたく思うがいい! という蒼龍に対して、「そうなの?」と目線だけで白(びゃく)を問い尋ねると。


「まあ、言っておることは間違ってはおらんが。お主の祝福なんぞなくても、蓮には我がいれば十分だ」


 我の特性だけでも十分、蓮の菓子作りに貢献できておる!

 と、よくわからない張り合いを始めた。


「白(びゃく)。俺、四神の特性なんて初めて聞いたんだけど」

「……聞かれなかったからな」

 

 かれこれ、白(びゃく)とは4年くらい一緒にいることになるが、いままでそんな四神に特性があるなんて話、聞いたことがなかった。


 まあでも、考えてみればそうか。

 4柱もいて全部が全部おんなじ能力な訳なんてないし。

 幸いにも、四神を頼る場面もなく今までやってきたから特に気にすることもなかったけど、ちょっと考えれば分かりそうなものだった。


「じゃあ、他の四神にはどんな特性があるんだ?」


 ちょうど、俺が思っていた疑問をそのまま代弁してくれたかように、蒼梧がそう言って白(びゃく)に尋ねた。


「……そんなことを知ってどうする」

「ただの興味本位でしょ。そんなの俺だって気になる」


 蒼梧の質問にやや眉間に皺を寄せながら問い返した白(びゃく)に、俺も加勢するように言葉を重ねる。


「……朱雀は【再生と回復】、玄武は【死と休息】を。我は【創造と誕生】を司る」


 生命にまつわる役割を四神がそれぞれに負うのだと、白(びゃく)が口にした。


「じゃあ、俺や蒼梧は、それぞれにその特性に応じた恩恵を受けていると言うこと?」

「まあ、そうなるな」


 そう言って、俺の問いに白(びゃく)が答えた。


「…………」

「おい、どうしたんだよお前、急に考え込んで」

「あ、いや。なんでもない」


 ふとひとつ、思いついたことがありそちらに思考を傾けかけたが――、蒼梧が怪訝そうに尋ねてきたことで一旦思考を中断する。


 ――これは、今ここで考えることじゃないから、後でゆっくり考えればいいや。


 そう、気持ちを切り替えて。


 そしてちょうど、そのタイミングで洗い物もひと段落したので、濡れた手を手拭いで拭きながら、「ちょっと休憩しようか」とみんなに声をかけた。


 フルーツポンチも作り終わって、あとは夜まで特にやらなければいけないことも無くなったし、妹たちも貴子様が見てくれているし。


 貴子様たちが戻ってくるまでトランプでもしてるか、と言って、蒼梧と四神二柱の4人(?)で、湖畔の見えるリビングでカードゲームに興じていたら。


「――お兄様!」


 と言って、菊華がちょこんとドアから顔を覗かせた。

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