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【書籍化】悪役令嬢の兄に転生した華族令息の俺、破滅回避のために妹教育を頑張ったら、最高に可愛いブラコン令嬢を爆誕させてしまいました  作者: 遠 都衣
初等部編

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第37話 秋のスイートポテト作り

 季節もすっかり秋めいてきて。

 今日の休日は、兄妹3人でスイートポテト作りをすることとなった。

 

 というのも先日、初等部の低学年で芋掘り大会というものがあり。

 収穫したさつまいもを、白百合と菊華のふたりが家に持ち帰ってきたからだ。


 ただグリルで焼いて焼き芋にしてもいいし、大学芋、芋きんつば……、何にしても美味しい。

 最強のスイーツ野菜、さつまいも。


 どうしようと考えた結果、スイートポテトを作ることにした。


 理由は単純。

 自分が子供の頃に家で作ってもらって、嬉しかったから。

 はけで表面に塗った卵黄が、焼き上がったときにつるりと綺麗な焦げ色がついたのを見て、すごく感動したことを覚えている。


 お菓子作りの醍醐味って、そういう、自分が手を加えて作ったものの完成形に感動することだよね! と俺は思ってるわけで。


 だからまあ、俺がオーブンを使った、膨らむお菓子を作るのが好きなのもそこに由来しているところはある。

 

 それはさておき。


 妹ふたりが、可愛らしいエプロン姿でやる気満々で俺の前に立っているところに、俺はあらかじめオーブンに仕込んで焼き芋にしておいたさつまいもを中から取り出す。


「はい。ふたりとも、熱いから気をつけてね」

「待って、菊華ちゃん。危ないから私が先に取るね」


 そう言って、俺が手渡そうとしたさつまいもを、先に白百合が手に取る。

 うっかり者の菊華がやけどしないよう、渡して問題ないかを確認しているのだ。

 一応、ふたりには危なくないよう軍手をさせているが、それでもどこかおっちょこちょい臭のただよう菊華が心配なのだろう。

 白百合、その気持ち、お兄ちゃんもよくわかるよ……。


「うん、大丈夫。はい菊華ちゃん」


 自分で手にしてみて、菊華に渡しても大丈夫だと確認した白百合が、そう言って菊華に焼きたてほかほかの焼き芋を手渡す。


「ふぁ……。お姉様、ありがとお」


 受け取った菊華がふわっと笑いながら白百合にお礼を言うと、礼を言われた方の白百合も「どういたしまして」とふふふと笑う。


 ……うっ、いかん。涙で視界が……。


 可愛らしい姉妹の姿にうっかりぎゅっと心臓を鷲掴みにされた俺だったが、気を取り直して「じゃあこれ、白百合の分ね」と今度は手の空いた白百合にもう一つのさつまいもを渡す。


「そしたら、ふたりは熱いうちにそのさつまいもの皮を剥いてくれる? 手で簡単に剥けるはずだから」


 難しかったら言ってね、と俺が言うと、ふたりは真剣な表情になってさつまいもの皮を剥き出した。


 1時間半ほどかけて中までじっくり火を通したさつまいもは、軽く力を入れただけで簡単にほろりと中身が割れ出す。

 そこから溢れ出た湯気と甘い匂いで、菊華が思わず声を漏らしていた。


「ふわ……」

「皮を剥いた中身は、こっちに入れてね」


 と、真剣に皮を剥いている白百合と菊華に向かって、ボウルを差し出す。

 そうして、3人で剥いたさつまいもを、俺が熱いうちにすりこぎでつぶしにかかる。


 二人にやらせてもよかったけど、結構な重労働だしね。


「白百合、バター入れて」

「はい」

「少しずつね」


 俺が指示すると、細かくしたバターを、白百合が俺が潰しているさつまいものボウルの中に一個ずつ落としてくれる。

 そうして、さつまいもの余熱で溶けたバターが全体に馴染んだところで、菊華に砂糖を、白百合には生クリームを少しずつ加えるように頼む。

 

 よしよし。いい感じになめらかになってきた。

 一旦全体がなめらかに馴染んだ後に、スプーンで少し生地をすくって味見する。

 

「わ! お兄様!」


 俺がひとくち味見をしたのをみて、菊華が自分もと言わんばかりに声を上げたので、もともと味見させるつもりだった俺は苦笑しながら白百合と菊華にひと匙分ずつすくって口の中に入れてあげた。


「む」

「美味しいです……」

「うん。甘味が足りなかったら砂糖を足そうと思ったけど、これならこのままで十分かな」


 こういう、素材の甘みによって味が変わってくるお菓子は、味見しておかないと後で食べたときに味が足りなくなったりするからね。


 未だ名残惜しそうにあむあむと口の中に残るスイートポテトのタ(・)ネ(・)を味わう菊華を横目で見ながら、最後の材料の卵黄を加えてさらに混ぜる。


「よし。じゃあ最後に、みんなで綺麗に丸めてオーブンで焼くからね」


 そう言って俺がふたりにお手本の形を作って見せた後、3人でスイートポテトをアーモンドみたいな形に丸めて天板に並べた。


 仕上げに卵黄を表面に塗って滑らかにし、オーブンに入れる。

 スイートポテトは、もともと火が通っているから焼き時間自体はあっという間だ。

 15分前後で取り出すと、黄金色に照り輝いたスイートポテトに、菊華が声を上げた。


「ふわぁ……!」

「いい匂い……」


 白百合も、焼き上がったスイートポテトの香りに、目を輝かせる。


「せっかくだし、片付けは一旦後にして焼きたてを食べようか」


 できたてあつあつを食べられるのもお菓子作りの醍醐味だ。

 オーブンで焼いている間に沸かして置いたお湯でお茶を淹れ、焼けたばかりのスイートポテトを器に移すと、白百合と菊華の前にそれぞれ並べてあげた。


「……! おいひ……!」

「すっごく甘いです……」


 ひとくちかじって、さらに目を輝かせる妹たちに頬を綻ばせながら、俺も一口自分の分によそったスイートポテトを齧る。


 うん。うまい。


 ねっとりとしているのに、口の中に入れるとさらりと溶けていく甘さを味わいながら、目の前で美味しそうに頬張る妹たちを眺めた。


 ちょっと抜けたところのある菊華を、白百合が甲斐甲斐しく面倒を見る。


 良かったのか悪かったのかわからないが、原作と違って菊華が想定よりもうっかりものだったことで、面倒見のいい姉とそそっかしい妹という図式が出来上がってしまっていたが。


 ――まあ結果、これはこれで平和でよかったよなあ。


 早苗さんがいなくなったことで、最近ではすっかり平和な毎日である。

 このまま平和に、時が過ぎていってくれることを祈りながら。

 俺は甘いスイートポテトをもう一口齧るのだった。

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