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宿で夕食を食べ体を洗った後は、皆で部屋で寛いでいたみや。
「演芸団?」
「はい。丁度明日通るらしいので、混む事が予想されます」
「何々?面白そう。どんな事をするの?」
みやは興味を持つ。
「大小あるが、様々な芸で人を楽しませるのを生業にしている団体だ。道具を使ったり、動物が出て来たり、劇をする所もあるし、音楽と舞いを披露する所もある。 今回は通り掛かりだろうから、大きな公演はしないだろう」
「まるでサーカスだね。私そう言うの見たこと無いなぁ」
「観てみたいか?」
「うんっ。音楽が関係してるなら十分大使の務めに入るよねっ?」
「そう言う事なら尚の事だな」
ルーイはクスリと笑って答える。
「ではその前に予定の楽器店に寄りましょうか? 演芸団は恐らく昼頃になると思われますので」
「そうだな」
「はーい」
翌朝。
「(だからなんでこんなフレッシュなのよ?)」
朝から爽やかなご尊顔をしているのは王子のルーイ。これも王子故なのか。
「(しかも何となくだけど、ご満悦そうだよねっ?)」
超絶スマイルが定着しているルーイに、みやはムスっとしてご機嫌斜めだ。
ちょっと睨んで見ても反応が変わらないので、頬を膨らませるが、それもダメなのでプイっと顔を背ける。
パラディン達は複雑な気持ちで見守っている。
ちょっと怒っているみやも可愛いものだから、困っている。
そもそも何故機嫌が悪くなったのか。
みやの習慣に合わせ、別々の部屋で休んでいたところまでは良かった。パラディン達の出入りはあったものの、普通に寝て起きた。
が、問題が起きたのは今朝。ルーイが朝早くに挨拶に来たのだ。
挨拶に来るのはいい。しかしそれが着替えの途中だったのが行けなかった。
お城では脱衣所でしていたし、ここに来る間の野宿ではテントの中だった。この部屋には仕切りは無いので当然部屋そのものが着替えの場にもなる。
別に裸では無かったが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
そこですまなかったと直ぐにドアを閉めていればまだ許しもしたかもしれないが、ルーイは一瞬固まった後、部屋に入って来て、事も有ろうに抱き着いてキスをしてきたのだ。これがみやが怒る原因だった。
「みや、すまなかった。許してくれないか?」
みやは目だけで見て。
「反省の色が無いっ」
と戻す。
ルーイも少し困り顔になる。
「どうすれば許してくれる?」
「ーー。 もう二度としない事」
「うん」
「あとー・・、 反省する意として、今日は手を繋がないことっ」
「!え・・・」
これにはルーイも少し慌てた。
「い、いやだが、人が多い中では・・・」
「パラディンさん達がいるもの。ねー?」
とエリネ達を見る。
「は、はあ・・」
イイ笑顔で同意を求められるが、曖昧な答えになる。
ルーイを通したパラディン達も巻き添えだ。
「今日一日、ずっと・・・」
ルーイはしょぼーんと項垂れる。
「(そんな顔したって騙されないんですからねっ)」
みやは思うよりもご立腹のようだ。
これではいけないと、パラディンの一人デュランが話し掛ける。
「ミヤ姫様、ルーイ様も悪気はございません。我々にも非はあったかと思われますので、もう少し大目に見て頂けませんでしょうか。 せめて、半日程にでも・・」
「ー。悪気が無ければ何をしてもいい事にはなりません。ちゃんと反省しないと意味が無いです」
「御尤もです・・」
「みや・・・」
頑として許さない姿勢をとるみやに、ルーイも危機感を抱いた様子。これで嫌われたらと悲愴感が漂う。
パラディン達もどうしようと言う雰囲気に。
「みや、本当にすまない。悪かった。 これからは気を付ける」
「ーーー。 本当に反省する?」
「う、うむ。 善処しよう 」
みやはルーイの様子を見て言う。
「ーー、今回だけよ。 次にあったら、接触禁止ですからねっ」
「うむ、気を付ける」
反省モードのルーイは頭を下げる。
「じゃあ行きましょ」
とみやは立ち上がると、ルーイの袖を引っ張った。
「え?・・・」
ルーイは何故と、?マークを浮かべる。
「私からはダメなんて言ってないでしょ? ・・・イヤなら止めるけど・・」
最後はボソッと言うみや。
「・・・・・・っ、い、嫌な訳が無いっ。 ・・嬉しい 」
ちゃんと聴こえていたようで、ルーイの目尻が下がる。
「ー、行くわよっ」
そっぽを向きながら歩くみやは、少し顔が赤いようだった。
「(折角の外出なんだから、楽しみたいだけよっ。許したとかじゃないからっ。 それに、私が嫌な我儘女みたいじゃない。別に反省してくれればそれでいいし)」
そんな事を誰にともなく思っているみや。
ルーイは反省しつつも袖を掴んでいる仕草にくすぐったさを覚え、嬉しさについつい手を伸ばしそうになるのを抑える。
その2人をパラディン達が苦笑いしながらも、ほのぼのとした思いで見守る。
みやはちょっと天邪鬼なところがあるみたいです。




