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「行ってきまーす!」


今日は休み。家でする事も無くなって退屈なので、買い物にでも行くか、っと外出した。折角の良い天気、勿体無い。

最寄り駅から電車で10分。そこから更に歩いて10分の所にデパートがある。ふらりぶらりとウィンドウショッピングをするだけでも楽しい。途中で美味しいパンを幾つか買って、再びぶらぶら。

高級なブランド品よりも雑貨の方に目がいく。ブランド名がバンっと出ている物はあまり好みではない。品質やデザインは良いのだが、普段使いは気後れするから使わないと思う。そんなお小遣いも無い。

セレブ気分は一度は味わってみたいと思うが、セレブになりたいとは思った事は無い。気疲れしそう。普通に庶民が一番。


途中でW・IN・ONEのアイスクリームの新フレーバーが目に入り、思わず買い食いしてしまった。

その後は雑誌をチラッと立ち読みして、そろそろ帰るかと行く。


 再び電車に乗って降りたのは最寄りの一つ手前。ちょっと寄り道しようと来たのは前に住んでいた場所だ。懐かしいなぁと思いつつ散歩する。

そうして何となく足を向けたのはあの思い出の場所だった。あの男の子と出会った場所に。

変わらずにあったが、草が伸びて入りにくくなっていた。ちょっと残念と思いつつも一通り眺めて帰ろうとした。


その時。今日身に付けていた胸元のネックレスの石が、急にパァっと輝き光を放った。

「え・・・っ!??」


一瞬、体に異変があった。

グワンっと揺れて浮かんだ感覚に襲われる。

目が回った様な感じ。

何だと把握する前に意識が遠のいていった。。。




  □  *  □  *  □  *


“ カチャ ” “ トクトクトク・・・ ”


食器の音。そこに注がれるお茶の音が続く。

優雅な動作で行うのは淡い紫色の長髪を結わえた長身の男性。


「ルーイ様、お茶を注ぎましたので一杯如何ですか?」

「あぁ、頂こう」


受け取ったのはこの国の王子。明るく淡い青色の髪は父方譲り。


「そう言えばアイル陛下からお聞きしたのですが・・」

とルーイがお茶に一口付けてから聞く。

「アビス国での舞踏会に参加されるとか」

「あぁ」

ルーイは淡泊に短く返す。

「私としましては、是非・・ともこの度はお泊まりして頂きたいと望んでおります」

「・・・」

是非、に少し力が入っていたのは気のせいではない。

一方王子であるルーイは涼しい顔で受け流す。内心溜息をつきながら。


「ーー。 ルーイ様・・。 貴方は真面目で誠実で、そして何よりお優しい。・・・」

と哀れみの顔をする。

「しかし、もう少し、女性に関心を示されてもよろしいかと・・。それだけでも周りの不安は多少 ほぐれるでしょう。 アイル陛下もご心配なさっております。 ・・・ご無理を申しましたでしょうか?」

それに対してルーイは茶器を置いた。

「ー、ウイリス、 お前の言いたい事は分かるしもっともだ。 しかし・・、泊まる予定は無い。」

キッパリと言った。

「・・・ルーイ様・・」

「案ずるな。私も王子だ。花嫁に関しては念頭にある」

「はい。・・・」




 この国で王の側近であり王子の補佐をしているウイリスは、王子の部屋を退室して廊下を何処へともなく歩いていた。その頭にあるのは王子の事。

自然と足は止まり、暗い面持ちで溜息がこぼれる。


「ウイリス?」

そこに声を掛ける者が。

見返ると見知った人物がそこにいた。クリーム色の細い髪を緩く三つ編みにした男性。あまり表情を出さないが、長く同じ側近として王に仕える者だ。

「どうかしたのですか?その様に暗くなって。 後ろからでも分かりますよ?」

「ベルネ・・。 すみません」

「いえ、別に謝る事ではないかと。 ーー、王子の事ですか?」

「っ・・・」

ウイリスは図星を指されて、頷く様に俯いた。それを見て取り。

「私も丁度手が空いた所です。良ければお相手しますよ」

長年一緒に働いてきただけあって、お互いに気心が知れている。

ウイリスはその言葉に甘える事にした。


場所を移してお茶にする。

「それで? 何を思い悩んでいるのです? まぁ、王子の事なら大方見当は付きますが」

とお茶を飲みつつ言う。

ウイリスはそれに短く答える。

「ー。 ルーイ様は、この度も舞踏会ではお泊まりにならないと・・」

「・・・、そうですか」

ベルネも少し残念そうに呟く。

「ーーー。 何時になったら、そのお心が解かれるのでしょうか・・」

「ーーー」

「花嫁については胸中に留めていらっしゃるとは言え、やはり多少なりとも知らなくては、見つけるのも簡単ではないでしょうに」

「ー。 お優し過ぎるからでしょうね・・」

「 はい 」

2人の間に重い空気が広がる。




 その一方。

「(何だろう。   胸がざわつく・・・)」

ルーイは胸に手を当てて、何かを感じていた。



  □  *  □  *  □  *




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