4
「行ってきまーす!」
今日は休み。家でする事も無くなって退屈なので、買い物にでも行くか、っと外出した。折角の良い天気、勿体無い。
最寄り駅から電車で10分。そこから更に歩いて10分の所にデパートがある。ふらりぶらりとウィンドウショッピングをするだけでも楽しい。途中で美味しいパンを幾つか買って、再びぶらぶら。
高級なブランド品よりも雑貨の方に目がいく。ブランド名がバンっと出ている物はあまり好みではない。品質やデザインは良いのだが、普段使いは気後れするから使わないと思う。そんなお小遣いも無い。
セレブ気分は一度は味わってみたいと思うが、セレブになりたいとは思った事は無い。気疲れしそう。普通に庶民が一番。
途中でW・IN・ONEのアイスクリームの新フレーバーが目に入り、思わず買い食いしてしまった。
その後は雑誌をチラッと立ち読みして、そろそろ帰るかと行く。
再び電車に乗って降りたのは最寄りの一つ手前。ちょっと寄り道しようと来たのは前に住んでいた場所だ。懐かしいなぁと思いつつ散歩する。
そうして何となく足を向けたのはあの思い出の場所だった。あの男の子と出会った場所に。
変わらずにあったが、草が伸びて入りにくくなっていた。ちょっと残念と思いつつも一通り眺めて帰ろうとした。
その時。今日身に付けていた胸元のネックレスの石が、急にパァっと輝き光を放った。
「え・・・っ!??」
一瞬、体に異変があった。
グワンっと揺れて浮かんだ感覚に襲われる。
目が回った様な感じ。
何だと把握する前に意識が遠のいていった。。。
□ * □ * □ *
“ カチャ ” “ トクトクトク・・・ ”
食器の音。そこに注がれるお茶の音が続く。
優雅な動作で行うのは淡い紫色の長髪を結わえた長身の男性。
「ルーイ様、お茶を注ぎましたので一杯如何ですか?」
「あぁ、頂こう」
受け取ったのはこの国の王子。明るく淡い青色の髪は父方譲り。
「そう言えばアイル陛下からお聞きしたのですが・・」
とルーイがお茶に一口付けてから聞く。
「アビス国での舞踏会に参加されるとか」
「あぁ」
ルーイは淡泊に短く返す。
「私としましては、是非ともこの度はお泊まりして頂きたいと望んでおります」
「・・・」
是非、に少し力が入っていたのは気のせいではない。
一方王子であるルーイは涼しい顔で受け流す。内心溜息をつきながら。
「ーー。 ルーイ様・・。 貴方は真面目で誠実で、そして何よりお優しい。・・・」
と哀れみの顔をする。
「しかし、もう少し、女性に関心を示されてもよろしいかと・・。それだけでも周りの不安は多少 解れるでしょう。 アイル陛下もご心配なさっております。 ・・・ご無理を申しましたでしょうか?」
それに対してルーイは茶器を置いた。
「ー、ウイリス、 お前の言いたい事は分かるし尤もだ。 しかし・・、泊まる予定は無い。」
キッパリと言った。
「・・・ルーイ様・・」
「案ずるな。私も王子だ。花嫁に関しては念頭にある」
「はい。・・・」
この国で王の側近であり王子の補佐をしているウイリスは、王子の部屋を退室して廊下を何処へともなく歩いていた。その頭にあるのは王子の事。
自然と足は止まり、暗い面持ちで溜息が零れる。
「ウイリス?」
そこに声を掛ける者が。
見返ると見知った人物がそこにいた。クリーム色の細い髪を緩く三つ編みにした男性。あまり表情を出さないが、長く同じ側近として王に仕える者だ。
「どうかしたのですか?その様に暗くなって。 後ろからでも分かりますよ?」
「ベルネ・・。 すみません」
「いえ、別に謝る事ではないかと。 ーー、王子の事ですか?」
「っ・・・」
ウイリスは図星を指されて、頷く様に俯いた。それを見て取り。
「私も丁度手が空いた所です。良ければお相手しますよ」
長年一緒に働いてきただけあって、お互いに気心が知れている。
ウイリスはその言葉に甘える事にした。
場所を移してお茶にする。
「それで? 何を思い悩んでいるのです? まぁ、王子の事なら大方見当は付きますが」
とお茶を飲みつつ言う。
ウイリスはそれに短く答える。
「ー。 ルーイ様は、この度も舞踏会ではお泊まりにならないと・・」
「・・・、そうですか」
ベルネも少し残念そうに呟く。
「ーーー。 何時になったら、そのお心が解かれるのでしょうか・・」
「ーーー」
「花嫁については胸中に留めていらっしゃるとは言え、やはり多少なりとも知らなくては、見つけるのも簡単ではないでしょうに」
「ー。 お優し過ぎるからでしょうね・・」
「 はい 」
2人の間に重い空気が広がる。
その一方。
「(何だろう。 胸がざわつく・・・)」
ルーイは胸に手を当てて、何かを感じていた。
□ * □ * □ *




