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2人で雑談しているとノックの音。ルーイが返事をすると昼食を持って来た使用人達が入って来た。
床に敷物を敷いて料理を並べる。手際よく終えると一礼して退室した。
それらを見ていたみやは思った事があったので、ルーイに手を引かれて座った後に聞いてみた。
「ルーイ、さっきの人達はここで勤めている人?」
「ん?あぁ、そうだが?」
「男の人ばっかりだったね。女の人はいないの?」
「? 宮の中にか? 私の妹なら居るが・・?」
「え? あ、そうなんだ。 じゃなくて。 女の人はここで働いてないの?って事」
「ーー」
ルーイは目をパチパチさせて、何やら考える。
「みやの所ではそれが普通なのか?」
「まぁ、うん。 だってそうしないと収入無いし、生活出来ないでしょ? 私はまだ養われてるけど、今からコツコツ将来の為にお金を貯めてるの。 こっちは違うの?」
「ーー。 ここでは女性は養って然るべき存在だ。労働させるなんて・・」
「でも生計はどうしてるの?そんなに賃金が良いの?」
「別に生活するだけなら殆ど生産出来る。魚も獲れるし、畑を耕して育てれば作物も得られる。酪農もしているし、家具も作ればいい。それらを売ればお金になる。
「なるほど?」
皆で自家生産自家消費している感じなのかと考える。
「じゃあ女の人は家事業以外は好きにしてるんだね」
それもまぁ大変だとは思うがと言うと。
「家事全般は男性のする事だぞ」
「え? ・・・・・・ えぇっ?」
2度聞き。
「・・・、じゃあこっちの女の人って、何してるの? ずっと遊んでるとか?」
半ば有り得ないと思うが聞く。
「女性は織物や編み物をしている。中には染料や糸紡ぎからする者もいると聞く」
「あぁお裁縫かぁ」
やはりそんな事はなかったと一安心。
「編み物なんてやった事がないなぁ。手芸自体そんなに得意じゃないし、学校以外でやらないからなぁ」
「ガッコー?」
「あぁえっとぉ、、学ぶ所よ」
「ふーん。 みやは暮らしの良い家庭の生まれなのだな」
「え?何で?」
「その様な教育を受ける機会があると言う事は、一般家庭ではないと言う事だろう? あーしかし、その様な設備があると言う事は、国が支援していると言う事か?」
「あー、えっと・・。 確かに国は教育に支援もしているけど、私はごく普通の一般家庭の娘ですからね。私の国は全ての人が教育を受けれるようになってるから」
「何?そうなのか? 凄いな・・。 では、みやの所では、女性も男性と同じ様に働く、事があると?」
「うん、勿論」
「・・・、そうか 」
ルーイは関心を寄せて驚く。そして違いを感じた。
みやの世界とこちらでは、環境の違いはあるだろうとは思っていた。しかし多少どころではないならば、みやがこのままこの世界に居るのは幸せなのか分からない。かと言ってルーイにも元の世界に帰してあげる力は無い。
全ては天意。みやと出会った事も、そう言う事なのだろう。
ならばとルーイは心を決める。
「みや、食べながらで良い。聞いて欲しい事がある」
「・・うん ?」
何やら真剣な表情にみやも改まる。
「ー。 今のところ、みやがいつ元の所へと戻れるかは分からない。 みやに渡したその石には、守護の力があると言われている。実際に私もみやの所に行った時はその力によってだった。その力とは、天の力だ」
「・・・」
「歴史を語れば長くなるのだが・・、みやには話しておかなくてはならない。その為にも説明が必要だ。 難しい事を言うかもしれない。その時は遠慮なく聞いてくれ」
「うん・・」
ルーイはゆっくりと一つ呼吸を置いた。
「この世には総天地竜様と言う、神なる存在がおられる。 その大昔、この世が戦で乱れていた時代があった。長く続いた末に、総天地竜様は止めさせる為にその力を一部の者達に与えた。それが竜族だ」
「それって、えと・・ 五貴族って言うやつ?」
みやはナッチ情報を思い出した。
「そうだ。知っているのか?」
「ううん。名前だけ教えて貰った事があるの。パラディンを見た時に」
「そうか。 そう、力を持つ種族は他にもあるのだが、それを抑える、或いは仲介する為に竜族はある。元々この地に住んでいたので国に仕えてくれているのだ。 そしてもう一つ。彼らが共に住み、仕えている理由がある。 我が父は竜王と、私も竜王子と呼ばれているが、竜化出来る訳ではない。しかし天の恩恵を受ける血筋ではあるのだ。 彼等の翼を守る為に、そしてその翼を休める所となる為の、その存在がここにはある。それが、“竜王の花嫁”」
「・・・、竜王の花嫁・・?」
「あぁ。 一昔前までは私の母がそうだった。 竜王の花嫁とは、一つの職であり、実際竜王の伴侶となる者に受け継がれているものだ。 その石も代々花嫁に継がれてきた物だ」
「へぇー。・・・・・・ えっ?・・」
そうなんだぁ、と他人事の様に聞いていたが、今みやが持っている。
ルーイは少し目を細める。
「これを渡したのは、再び会いたいと、心からそう思ったからだ。そして忘れない為に。 私はみやに好意以上の想いを持ったのだ。 恋心を 」
「え・・・・・・」
みやの目が大きくなってパチクリする。いきなりの告白。
「今も・・好きだ」
ルーイはみやの髪に触れる。
「・・・・・・・・・・・・」
どう反応すれば???
もう食事どころではない。
「無論、私の想いを強いるつもりはない。まだよく分からぬ身で、この様に告げるのは困らせてしまうと分かっている。しかし、その・・・、 皆に会う前に、言っておかなくてはいけなかった・・」
「・・・・・・」
「今この国は、花嫁を切望している。 平穏を保ってはいるが、失われた穴は大きく、心の何処かで不安を抱えているのだ。なので私にかかる期待も大きい。 今まで特別に親しく交流した女性がいなかったのでな。そんな私が女性を国に連れ帰って来たものだから、・・・少々周りが先走っていると思う。 すまない・・」
「・・・うん・・・」
「今は私の友人として招いている。そんなに重く考えなくても大丈夫だ。 ただ、私の想いを、いつかゆっくりと、みやなりに受け取ってもらえたら嬉しい・・」
「・・・うん・・・」
みやは頭があまり回ってない状態だ。真剣に言ってくれてるので冗談だとはぐらかす事も出来ない。
お陰でその後食事をしていても味がよく分からなかった。
「(・・・ どういう事っ? )」




