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上空を竜が飛んでいる。
水平飛行が続いたお陰かみやは徐々に平静を取り戻し、見る範囲を広げた。
自分が乗っている竜の翼、そして周りを飛ぶ色違いの竜達が悠々と飛んでいる姿。
いまいち人の姿と竜の姿が一致しないのだが、一番見やすい位置に居る竜をじっと見ていたら、その竜がこちらを見たので目がバッチリ合った。
「!・・・・・・」
その瞳にはちゃんと意志があるのが分かる。
何となく手を振ってみる。と、その瞳が細められ、笑ったのが分かった。
「・・・(おお・・)」
ちょっとびっくり。しかし何だか仲良くなれそうな気がしてちょっと嬉しいと感じた。
暫くするとパラディン達の高度が低くなり始めた。多少上下する事はあったが、下がり続けている。降りようとしているようだ。
するとルーイが言った。
「もう見えているぞ」
そう言われてみやは前方を見る。
雲を全て上にする頃には地上が見えていた。支えられていなければかなり恐いと思っていただろう。地上の緑溢れる光景なんて感動して観る余裕が無い。
「 仕方ないか・・ 」
「?」
上からルーイの呟きが聴こえてきた。
何がだろうとルーイを見たが、微笑み返されただけだった。
再び前を向くと、先の方に沢山飛んでいるものが見えた。
まさかと思い目を凝らして見る。段々と近づいて見えてくるその姿に、うわぁ と思った。
「 ・・・いっぱい・・・ 」
の竜だった。
何十と飛び回っている光景はまさに竜の巣で、竜都国と呼ばれるのも分かる光景だ。
向こう側もこちらに気付いているからか迎え入れるように道を開けてくれる。
ルーイ達を乗せたパラディン達は見事なスライディングで綺麗なお城の敷地に降り立った。大きな体でバランス良く足を地につけ、ルーイとみやを乗せたパラディンはその身を低く屈めた。他のパラディン達は次々と人化していく。目の前で見ても信じられない現実だ。
「(ファンタジー・・・)」
「大丈夫か?みや」
「え・・あー うん・・」
ルーイは乗った時同様にみやを腕に抱えて降りた。
「!?・・・・・・」
ヒョイと軽々降りたルーイだが、みやは慣れない状態に固まる。
「ありがとう。疲れた者は戻って休め」
ルーイは労いの言葉をかけ、芝生の上をお城に向かって移動する。
「ルーイ様、アイル様に直ぐお会いになられますか?」
乗せてきたパラディンが横に来て尋ねる。
「うん・・。 そうしたいが、少し休ませたい。もう昼だし午後にしよう。昼食は私の部屋に持ってくるよう伝えておいてくれ」
「はい」
そんな会話をして芝生から石畳になった所で、ルーイはみやを地面に降ろした。丁寧にそっと、そして支える。
「歩けそうか?」
「・・うん 」
みやの様子にほっとしたルーイは、笑みを見せてみやの手を取る。
「ようこそ、私の国 レフェリーナへ」
ルーイは手を自分の口に持っていき、そっと触れた。
「っ!・・・・・・」
声にならない驚きにビクッと反応するみやは、何度目かの衝撃を心臓に受けた。顔が火照りそうだ。
そんなみやを気にする事なく、ルーイはこっちだと手を引いて歩いた。
後ろからパラディンが3人ついて来る。みやは歩きながら目をあっちへこっちへとやり眺める。
「わぁー 流石と言うか、やっぱりお城って大きいんだね」
当たり前であっても口が呆ける。そんなみやにルーイは笑う。
そしてルーイの自室に着いた。建物に比例するかのようにその扉も縦長だった。みやの知る普通のドアとは比べ物にならない。見上げる事が増えそうだ。
中へ入ると最初の感想は。
「(広っ!)」
思わず声に出そうだった。どこのスイートルームかと。開いた口がそのままだ。
「・・すごいねー 流石王子様の部屋。 ね、この向こう何?」
「ん? そこは湯殿だ」
「お風呂っ? わぁー・・・さ、さすが・・・」
その後も興味津々で見る。
「ルーイって本当に王子様なんだねぇー」
落ち着かないみやにルーイは苦笑いする。
「みや、お茶を淹れたからおいで」
そう言われてみやは小走りに来て、促された椅子に座る。
「ありがとう。 って、ごめん。 王子様に給仕させちゃって。私やろうか?」
「え?・・・いや。 ここは私の家だし自室だ。別に構わないだろう。それに、歓迎したお客に給仕してもらう方が失礼だ」
「あー・・・そっか」
「本より、女性にその様な事をさせる者はいない」
「? そうなんだ?」
「あぁ」
優しい笑みをかけられちょっと見つめ合ってしまったので、みやはお茶を飲んで視線を逸らす。
ルーイはそのまま見つめてくるので顔を合わせずらい。そのまま少しの間静かな時間が流れた。




