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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第2話「一人ぼっちの少女」


 翌日。

 昨日言われていた通り通常授業が始まる。

 朝に通学路で梓たちと会って一緒に登校し、授業を受けて休み時間にはみんなと話す。

 姫城と綾乃は昨日のこともありお互い少しぎこちない感じではあったものの、しばらくしていつも通りに戻っていた。

 その時間がとても楽しく、気づいたら昼休みとなっていた。


「時間が経つのが早い……」

「そうだねー。なんか中学入った時もこんな感じだったよねー」

「そうそう、なんかワクワクする感じが」


 梓と話しながら昼食を広げる。

 綾乃は弁当であり、その量は一般の女子の食べる量……よりは明らかに多い二段弁当だった。


「おーい、綾乃ー。次の時間のプリントの量多いから手伝ってもらっていいか?」


 弁当を広げた直後に教室の扉の方から彩咲の声がした。


「はーい! わかりましたー! というわけでみなちゃん先生が呼んでるからちょっと行ってくるね」

「うん。がんばってー」


 お腹がすいていた綾乃だが、自分で学級委員になったこともあり、彩咲の元へと向かうのであった。




 彩咲に呼ばれ、職員室に来る綾乃。


「みなちゃん先生……」

「どうした?」


 現状の状態に困惑する。

 綾乃の手元には大量のプリントが積み重なっていた。

 なんか、量的には広辞苑4冊分くらいの。


「これ、今運ぶ必要なかったんじゃ……?」

「次の授業で配るプリントだ」


 言いたかったのは食後でもよかったのではということなのだが、その真意は彩咲には伝わらなかった。

 これ以上言っても無理そうだと確信した綾乃は黙って職員室を後にして自分の教室へとプリントを運ぶ。

 職員室は東棟の2階にあり、綾乃たちのクラスも2階にあるため渡り廊下を通ればすぐそこである。

 その最中、綾乃は空腹に負けそうになりつつも渡り廊下へつながる廊下を曲がる。


 ドンっ!!


「ひゃっ!!」

「わっ!!」


 曲がり角で誰かとぶつかってしまう。

 同時に大量のプリントが廊下に散らばった。


「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」


 ぶつかってしまった人物に対して問いかける。

 その人物は綾乃と同じクラスの女子生徒、高垣であることがわかった。

 よく見ると髪は少し暗めの茶色で肩より少し長めで所々跳ねており、下を向きながら尻餅をついて座り込んでいる状態だった。


「……大丈夫」


 高垣は俯いたまま低い声でそう答え、少し顔を上げた。

 その顔は眉間にしわを寄せ、まるで睨んでいるかのような表情。

 まさかの不良生徒!?


「ご、ごめんなさい!!」


 とっさに謝ってしまう。

 ぶつかっちゃったことやっぱり怒ってるのかな……。

 そう思っていると高垣が散らばったプリントを拾い上げ、それに気づいて慌てて綾乃も拾い集める。

 幸いプリントは種類ごとにクリップで止められていたため、そこまで時間がかかることなく拾い集めることができた。


「あ、ありがとう」

「いえ……」


 それだけ言って高垣は立ち去って行った。

 怒ってるのかと思ったけど、いい人なのかな……?


 ぐぅぅぅ―――……。


 急にお腹が鳴り、昼休みだというのに昼食を終えていないことに気づき、急いで教室へと戻るのであった。




 5限目が終わり、放課後へ。

 昨日と同様に梓と桜田と姫城が綾乃の元へと集まってくる。


「やっぱ勉強始まってくると高校生って感じだなー」

「わかるー」

「ちなみに予定通りなら5月には中間テストみたいだよ」

「それはあんまり考えたくないな……」


 他愛もない会話。

 そんな中、綾乃の視界の片隅に高垣が教室を去っていく姿が見えた。

 よく考えると今日まで高垣さんがクラスの誰かと会話しているところを見ていない気がする。


「金森さん?どうしたの?」


 高垣が去った扉をずっと見ていたからか、姫城が綾乃に対してそう言った。


「えっと、高垣さんってどんな人なんだろうって思って」

「あー、高垣か……」


 少し間を置いて桜田が再度話し始める。


「高垣にはあんまりいい噂を聞かなくてな……」


 確かに睨まれたような気がするけど…。

 多分それも見間違い……だと信じよう。


「それってどんな噂?」

「そうだな……俺たち高垣とは同じ中学だったんだけど、例えばクラス全員にメンチ切ったとか、どっかで喧嘩して次の日湿布とか貼って登校したとか」

「めんち?揚げ物のこと?」

「睨みつけるって意味だよ。今時使ってる人あんまりいないけどね」

「俺も高垣は悪い奴だとは思ってないんだけど、どうにも近づきにくくてさ。実は話してみれば結構いい奴かもしれないし」

「確かにあたしも高垣さんとはあんまり話したことないなぁー……一人が好きなのかもって」

「……うーん」


 考え込む綾乃。

 確かに噂だけ聞けばいい話じゃないかもしれない。

 でも別の問題があったとしたら……それを解決できれば仲良くなれるのではないだろうか?


「……きっと何か理由があるはずだよ」


 確信はないが、そう答える綾乃。


「ま、まあ。それより部活見学にでも行かないか?」


 話題を切り替えて桜田がそう言いだす。


「……そうだね。考えても仕方ないし、体動かそう!」

「え、あたしは遠慮……」

「もう手遅れみたいだよ」


 綾乃が梓を桜田が姫城の手をそれぞれ引いて部活見学へ向かう。


「みんな! どこから行く!?」

「まずは野球にサッカーにバスケに陸上にテニスに……」

「あたし体力持たないよ!!」

「もしかして一日で行く気じゃないよね……?」


 その後、綾乃たちは一日で運動部の体験入部を5つほど制覇していた。

 とはいっても、梓は1つ目、姫城は3つ目、桜田は4つ目でバテた。

 最後までバテることなく動き続けることができたのは綾乃だけであった。


「金森……お前体力ありすぎ……」

「俺も驚いたよ……」

「えへへー、そうかなぁー」


 この日、綾乃はサッカーで先輩を3人抜きしてゴールを決め、バスケでは自分ゴール下から相手のゴールにシュートを決めた。

 さらに陸上では100mを11秒台を出すレベルだった。

 ちなみに100m11秒台は高校陸上の大会上位に入れるレベルである。


「きょ、今日はもう帰ろうぜ……」

「そうだね。みんな疲れてるみたいだし」

「金森さんは元気そうだね……」


 あんなに運動をしたというのに綾乃はまだピンピンしている。


「うん。多分今日はぐっすり眠れると思うよ!」

「あたしはもう寝たい……」


 運動で疲れた一同はそれぞれ帰宅するのであった。




 その帰り道の途中、自分の家へと向かうその途中の大通りを挟んだところにアーケード商店街が見える。

 家からそう遠くない子供ころから通いなれた場所。

 そこから立ち込める角の揚げ物屋の匂い。

 その揚げ物屋に引き寄せられていく。


「あら、綾乃ちゃん。学校帰り? 制服にあってるねぇ」

「あ、おばちゃん。こんにちわ! ちょっと前から高校生になったんだー!」

「あらあら、もうそんなに大きくなったのねぇ。あ、そうだ。お祝いといってはなんだけど、はい。コロッケ」

「いいの!? ありがとう!」


 特製のコロッケを貰い、すぐに頬張る。

 サクサクの衣、じゃが芋と牛肉の味が口の中に広がる。


「やっぱりここのコロッケはおいしぃ」

「綾乃ちゃんは本当においしそうに食べるねぇ。だからいっつもあげたくなっちゃうのよねぇ」


 揚げ物屋のおばちゃんにお礼を言い、その場を後にして商店街の中を歩く。

 仲のいい八百屋に魚屋。

 毎日どちらが人気か競い合ってる和菓子店に洋菓子店。

 子供たちに人気のおもちゃ屋さん。

 おしゃれな洋服店。

 多少変化はあるけど今も昔も変わらないこの風景。

 しばらく歩いて商店街の半分くらいに来たところで綾乃は足を止めた。

 視線の先、そこには高垣が小道に入っていく姿が見えた。

 急いで追いかけて小道に入ったものの、すぐ高垣の姿を見失ってしまう。


「見間違い……だったのかな」


 人の少ない小道で綾乃は佇み、しばらくしてから帰宅するのであった。




 翌日。

 教室でいつものメンバーで会話をしていると、ザワザワと話声が聞こえる。


「なんか騒がしいな」

「何かあったのかな?」


 疑問に思ってた綾乃たちだったが、すぐにその話声の理由がわかった。

 教室に入ってくる高垣。

 その顔には湿布や絆創膏が張られていた。

 高垣は特に気にするわけでもなく自分の席に着く。


「なるほどな……」

「………」


 私の記憶が正しければ昨日商店街で最後に見かけたときは湿布は張っていなかった。

 それに少しではあるけどあの小道は人はいた。

 もし大ごとが起きていたのであれば誰かは気づくはずだ。

 そんな思考を巡らせている間にチャイムが鳴り、HRが始まるのであった。




「よし、今日は帰ろう!」


 放課後になり、開口一番に綾乃はそう告げる。


「あれ? 体験入部は行かないのか?」

「今日は高垣さんがどういう人間か調査してくるよ」


 桜田の問いに対し綾乃は小声でそう答える。

 授業中にいろいろ考えたが、高垣のことを知るなら実際に行動を見たほうがいいと思ったからだ。

 そうこうしているうちに高垣が教室を出ていくのが見える。


「そういうわけで今日は帰るよ! じゃあね!!」


 高垣を追って教室を後にする綾乃。

 残された2人に後から来た姫城が声を掛ける。


「あれ? 金森さんは帰ったの?」

「あ、ああ。なんか高垣を調査するとかで」


 それを聞いた姫城はふふっと笑みをこぼす。


「金森さんって面白い人だよね」

「面白いというよりだいぶ変な奴だと思うんだが」

「二人ともあたしのこと忘れてない?」


 しばらくして姫城たち3人は帰宅するのであった。




 高垣の後をばれないように追う綾乃。

 あとを追っていくと、通る道が綾乃の通学路であることがわかる。

 昨日も思ったけど、もしかして高垣さんって私の近所に住んでたりするのかな?

 しばらく歩くと、高垣の前を歩いていた人の鞄からハンカチが落ちる。

 それに気づいた高垣はそれを拾い、持ち主の元へと寄っていく。

 ハンカチの持ち主はお礼を言って去っていく。

 どうやら高垣はその際に顔を伏せている状態で会話していることがわかった。


 さらに歩くと、歩道の前におばあちゃんがいるのがわかる。

 どうやら車通りが多く信号も無い為、中々先に進めない様子ということが見て取れる。

 これがテンプレのパターンであればおばあちゃんの手を引いて一緒に渡ってあげる感じだろうか。

 そう考えながらずっと陰から見ていると、綾乃の想像通り高垣がおばあちゃんに話しかけている。

 そして手を引くのではなく、おんぶをして荷物を持ってあげてから安全に渡っていた。

 めっちゃいい子!!

 やっぱり噂なんて当てにならないな。


「……ってあれ?」


 気づいた時には高垣を見失っていた。

 既に日は傾いており辺りは夕暮れとなっている。

 ぐうぅぅぅ―――……。

 突然綾乃のお腹が鳴り、お腹すいたから帰ろうと思いながら帰宅するのであった。




 それから数日経ったHRの時間。

 今日まで綾乃と高垣が特に接触することはなかった。

 綾乃自体もそのことを少し気にかけてはいたが、高垣はそのことを気にしていないように感じる。


「……ということで、明日までに入部届を出すように。以上だ」


 彩咲の話が終わり、HRが終わり放課後となる。

 クラスのみんなとも段々馴染み始め、それぞれ会話など様々な光景が見て取れる。

 ……一人でいる高垣を除いて。


「綾乃ちゃん、これからどうする?」


 隣から梓がそう声を掛ける。

 予定がなければ梓の質問に答えてあげたい綾乃だったが、彩咲から呼び出しがあったため職員室へと向かわなければならない。


「ごめん! みなちゃん先生に呼ばれてるから今日は無理かも」

「そっか、じゃあまた明日ねー」


 梓にそれだけ伝えて綾乃は彩咲のいるであろう職員室へと向かう。

 教室棟の2階の渡り廊下を渡り、曲がってすぐのところにある職員室へと向かう。


「失礼します」


 声を掛けてから職員室に入り、辺りを見渡す。

 普段彩咲のいる教卓を見るが、そこには誰もいなかった。

 あれ? どこか行ったのかな……。


「綾乃、待たせたか?」

「うわっ! びっくりした!」


 突然後ろから彩咲に声を掛けられて驚く。

 それを特に気にした様子もなく彩咲は会話を続けた。


「とりあえず移動しよう。ついてきてくれ」

「わかりました」


 事前に何も話を聞いていない綾乃は彩咲がどこへ向かっているのかわからなかった。

 私何かしたっけ……?

 心辺りは何もない。

 もしかしたら無意識に何かしたのかな?


「一応先に言っとくが説教じゃないから安心しろよー」


 綾乃の心を見透かしたかのようにそう言う彩咲。

 しばらく歩き、教室棟4階の一番西側の教室へとたどり着いた。

 その教室の入口上部には『進路相談室』と書かれている。


「え!? 私進路とか全く考えてないですよ!?」

「いや、進路じゃなくてだな……とにかく入ってくれ」


 言われるがまま進路相談室に入る。


「そう畏まらずに適当に座っていいぞ」


 その辺の椅子に腰かける綾乃。

 彩咲は東側にある窓の縁に寄りかかる。


「とりあえずお前にこれやるよ」


 白衣のポケットから何かを取り出し、綾乃に向かって投げる。

 慌ててそれを受け取り、それが紙パックのいちごミルクであることがわかった。


「ありがとうございます! これ好きなんですよー」

「それはよかった」


 紙パックのいちごミルクについているストローを差し、飲み始める。


「それで本題なんだが、お前最近悩み事でも抱えてないか?」


 ブ―――!!!

 図星であったため、綾乃は飲みかけていたいちごミルクを盛大に噴出した。


「おいおい、大丈夫か?」

「げほっげほっ……先生が突然そんなこと言うから」

「ってことは図星みたいだな」

「でもなんでそのことを?」


 高垣に関する事は梓と姫城と桜田には言った気がするが、直接彩咲に伝わるようなそぶりは見せていないはず。


「いや、お前の行動変だったし。この前偶然昼に学食で相席したときは私の主食のきゅうりを勝手につまむとか、体育の授業中ペースを考えずに3週くらい余計に走るとか」

「えぇ……」


 何やってるんだ私……。


「まあそれはそれとして、何があった? 言うまで帰さないからなー」

「……わかりました」


 確かにみなちゃん先生に話せば何かいいヒントがあるかもしれない。

 綾乃は高垣に関する悩みを彩咲に伝えた。

 高垣が本当はいい人であること。

 誤解で他のみんなと距離ができてしまっていること。

 高垣と友達になりたいこと。

 それを聞いた彩咲はしばらく腕を組んで考えてから話し始めた。


「フフッ、なるほどな。お前ら案外似た者同士なのかもな」

「どういうことですか?」

「いや、なんでもない。でもそうだな」


 彩咲は窓の外に視線を移し、その位置を指差す。

 綾乃も近づき、彩咲が指さす方に目を向ける。

 部室等と教室棟の間、そこにある飼育小屋の前に高垣の姿が見える。


「高垣さんって飼育委員でしたっけ?」

「いや、そもそもこの学校には飼育委員はない。あれは生物部の動物だ」


 動物と戯れている高垣の顔がちらっと見える。

 その顔は今まで見たことのない満面の笑みだった。


「いい笑顔だろ? 多分あいつは人付き合いが苦手なんだろう。だから人との距離ができてしまう」

「多分、こわいんだと思います。初めて人と話すのは緊張しますし、もし断られでもしたらって。でもせっかく高校生活が始まったのにずっと一人なんて悲しすぎます」

「……そうだな。あいつは動物好きみたいだし、そのうちお前も行ってみたらどうだ?」

「そうですね! 今から行ってきます!」


 駆け出す綾乃。


「廊下は走るなよー」


 その足は先ほど高垣がいた飼育小屋へと向かうのだった。




 飼育小屋にたどり着いた綾乃だったが、高垣の姿は見えなかった。

 入れ違いになってしまったのだろうかと思いながら周りを見渡すと、飼育小屋の動物たちと目が合う。


「か、かわいい……」


 ウサギやニワトリがつぶらな瞳でこちらを見ている。

 

「綾乃ー」


 遠くから彩咲の声が聞こえる。


「お前が向かったあとに丁度高垣は帰ったっぽいぞ」

「そっか―……うん。それじゃ今日は私も帰ります」


 彩咲に別れを告げ、そのまま家に帰るのであった。




 翌日、ちょっと早く起きた。

 なので早めに支度をし、学校へ向かう。

 通学路の風景はいつもと違い、学生がいない。

 しばらく歩き学校へ到着する。


「あ、そうだ!」


 校門に差し掛かったところで思い出す。

 昨日の飼育小屋のこと。

 今なら動物と戯れられる!!

 そう考えた綾乃は急いで下駄箱に向かうと、見知った人物を見かけた。

 その正体は高垣であったためか、なぜかとっさに隠れてしまう。

 なんで隠れてるんだろ私……。

 下駄箱の陰から少しだけ顔を出して高垣の様子を伺う。

 高垣は自分の下駄箱の前にしばらく立ち、何やら手紙を読んでいるように見える。

 これは……もしかしてラブレター!?

 と一瞬思った綾乃だったが、高垣は暗い顔をしている。

 多分いい手紙ではなかったのだろう。

 それを見たからだろうか、綾乃は高垣に声を掛けることはできず、しばらくその場に立ち尽くすのであった。



 放課後になり、クラスのみんなはそれぞれ帰宅の準備などを始める。

 綾乃は梓たちと話を始め、その視界の傍らで高垣は朝に見ていた手紙を読んでいるようだ。

 その内容の一部が2mほど離れている綾乃に読み取ることができた。

 『放課後、体育館裏に来い』と。

 しばらくして高垣は自分の席から立ち上がり、何も持たずに教室の外へと出て行った。


「綾乃ちゃん? どうしたの?」

「え? あ、うん」


 一緒に話をしていた梓が声を掛ける。

 高垣さんが向かった先が気になるけど……。


「行ったほうがいいんじゃないかな」

「え?」


 姫城が綾乃の思考を読んだかのように発言する。


「その方が後悔しないと思うよ」


姫城の言ったことはもっともだった。

 私は……。

 言葉より先に体が動き、綾乃は教室を出て行く。


「え!? どういうこと!?」

「二人も行くよ!」


 姫城は梓と桜田の手を引いて綾乃の後を追う。


「ねえちょっと! どういうこと!?」


 廊下を駆けながら未だ状況が掴めていない梓が姫城に問いかける。


「……梓は金森さんをどう思う?」

「綾乃ちゃん? 明るいし話してて楽しいよ?」


 姫城の問いにそう答える梓。

 それに対して桜田は何かを言いたげであったが言葉を発さなかった。


「言いにくいけど、金森さんはおそらく……」


 口を開く姫城は梓と桜田に綾乃に対する推測を話し始めるのであった。


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