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みかん最大の危機!

だ


だ


だ


「だれだぁ!!?」


 みかんは目の前に現れた少女を指さして叫んだ。現れた少女は変身した『鏡の魔法使いマリカ』にそっくりだった。ただそのしぐさがかなり違う上に羽まで生えている。後光が差すように光り輝いている。


 ざわざわと人だかりができていく。


 その中心でふふんと笑ったのは『魔法天使マリカ』と名乗った少女だった。彼女は両手を胸の前に組んだ。まるで祈るようなポーズだった。


「私は、ザングルゴールという悪の皇帝に騙されて今までひどいことをしてきました……。『鏡の魔法使いマリカ』はやめて、これからは心を入れ替えて、『魔法天使マリカ』としてみんなのことを」


 彼女はにこっと天使のように微笑んだ。まぶしいくらいに屈託ない表情だった。それを見た人間は耐えきれないかもしれない。みかんは手で顔をかばって「う、ぐ」などと言いながら一歩下がった。


「幸せにするからね!」


 周りの人々がスマートフォンで彼女を取り始める。好意的なざわめきの中でみかんは一人


(なにこいつなにこいつなにこいつ??)


 頭を抱えて涙目になっている。みかんは不意にレオのことを想像した。実際彼女からのRhine電話を切った時からこの謎の少女が出てきたのだ。関係があると考えるのが普通だろう、だがレオの能力ではこんな少女を生み出すことはできない。


「みんな、困ったことがあったら言ってね、あ・と・ね」


 『鏡の魔法使いマリカ』と似た顔でぱちりとウインクして『魔法天使マリカ』は言った。彼女は片手にスマートフォンを取り出す。それはみかんの持っているものと同じものだった。スマホケースにはかわいいキャラクターの絵がプリントされている。


「私の動画チャンネルを開設するから、これからみんなも登録してね~」


(な。なんだってぇ?)


 おおーと周りの声がして周りんの何人かが動画サイトを探し始めている。みかんは今すごくヤバイことになっている直感だけがあった。汗が止まらない。魔法天使マリカはそんなみかんをチラッ見た。


 にやぁ。


「!」


 明らかに自分のことを認識している。誰かはわからないが、この大勢の場で変身するわけにはいかない。魔法天使マリカはふふふと笑ってから振り返る。


「それじゃ、私は明日高校に行くからもう帰らないとっ」


 魔法天使マリカは突然そう言って羽を広げて飛ぶ。いつの間にか月が出ている。美しい満月を背にして彼女は飛んでいく。ぱしゃぱしゃと人々が彼女の写真を撮っている。


「な、何者なの」


 みかんはまだ自分の窮地に気が付いてなかった。


☆


 ――鏡の魔法使いマリカは女子高校生!


 ――でも魔法天使が正式名称でしょ?


 ――スーパー・ジャスティス・ファイブと一緒に悪と戦うってよ。


 そんな噂が一気に日本中に広がってく。動画に取られた魔法天使の笑顔は瞬く間に広がった。そしてみかんの通う高校でもそれは顕著だった。


 休み時間に机で下を向いている周りは『魔法天使マリカ』のうわさでもちきりだった。みかんは唇をかんで泣きそうな顔をしている。周りの言っているのは自分のことではないが、自分のことのように感じられた。


「でもさ、マリカって女子高生なんでしょ?」


 クラスの噂にぎくぎくーんと心臓が飛び出るかと思ったマリカは反応した。しかし努めて冷静に彼女は深呼吸した。スマートフォンを取り出して『魔法天使マリカちゃんねる』 を検索するとレトロゲームをやっているチャンネルだった。動画サイト「Utube」のチャンネル登録数はすでに10万を超えている。


「ブイチューバーみたいなことしやがってぇ~」


 できるだけ小さな声で言う。オリジナルのはずのみかんなどは自分でゲーム機を破壊して最近ゲームできてない。ほかの投稿を見れば、『人助けして見た~』とかいって街のごみを捨てたりしてボランティアに参加している。


(ちがう……鏡の魔法使いマリカは……は悪の魔法使いなのに)


 くやしい。


 妙に悔しい。


(人助けなんてしない……)


 おそらく一国分の人口を救った怪人が思っていいことではないだろう。ノーベル賞の候補というよりはその功績が明示されれば『マリカ賞』ができてもおかしくはない。しかし、柊みかんはそんなことはみじんも思わない。


「あれ? みかんってさ」


 みかんが顔を上げるとクラスメートたちが数人いた。彼女たちはみかんのスマートフォンを指さしている。


「それってさ、魔法天使マリカの持ってたスマホと同じじゃない?」

「え!?」


 そういえばあいつ同じものを持っていたとみかんが思った時、クラスメート達は「そういえばみかんって同じ髪のしてない?」「あれ? よくみたら似てたり」「そういえば」と口々に言った。


(やばいやばいやばいやばい!!)


 みかんは本当にまずいと思った。このためにスマートフォンを同じものにしたのかと思い至った。


「あ、あはは。そんわけないじゃん。魔法天使なんて私……恥ずかしいし」


 みかんは立ち上がってお手洗いに行ってくるねと席を立った。逃げるようなしぐさにクラスメート達はさらにこそこそと話している。みかんは廊下を歩いてだれもいない場所で頭を抱えた。


「こ、これがあいつの計算!? このままじゃ私のつくった悪のイメージがあいつに塗り替えられる」


 存在しない虚無のイメージの心配をするみかん。彼女はレオに電話をしたりRhineでメッセージを送ってみるが出ない。いや、メッセージは既読が付くが返事がない。


「む、無視してる。く、くぅ」


 手のひらでころころと転がされているような気がする。いっそバオウのように戦ってくれればまだやり方はある。このまま『魔法天使マリカ』に妙な善行だけをされ続けたら正義に堕ちてしまうかもしれない。


「そうだ」


 悪いことをすればいいんだ。みかんははっと思いついた。前に同じことをしたときは銀行員を一人更生させてしまったが今度はそんなミスはしない。


「ふふふ。私は人々の憎悪を映し出す鏡……。私になめたことをした罰を味合わせて、あいつの恐怖の感情を私の鏡に映してあげるわ」


 ふふふと笑っているみかんのスマートフォンが鳴った。見ればタイムラインにニュースがのっている。


『魔法天使マリカ! ドラマに出演!?』


「………え? ふぇええ????」


 ドラマ!? みかんははなしがどんどん大きくなっていくことに恐怖した。


「な、なにがおごってるの?」


 スマートフォンのガラスにみかんの恐怖にひきつった顔が映っている。だが、みかんはすぐに顔を上げた。


「このままじゃ、すまさないから……」


 決意を瞳に宿して彼女は言った。涙できらきらと瞳がきれいに光っている。





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