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ジュリエッタ.ロン.シェタット.アン.ロリータそれがわたくしの名前です!  作者: 桂虫夜穴


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2、最後の晩餐 その絵画の謂れ


「ロマーネ!

今夜も豪華なお食事ね!」


彼は王家の全料理を賄う総料理長だ。


王妃と姫が食卓に着き食事を始めた。

それは、二人では、余りにも大きく長いテーブルだ。

その両端に

フォークとナイフと真っ白な皿に

鮮やかで美味しそうな料理が装われている。


「はい!ありがとうございます!女王妃。

今夜の献立は

まず、前菜は笑いキノコの胞子を和えた

根菜サラダと黄色おたまじゃくしの半熟卵和え…

これににより…

和やかなムードを演出しております。」


「ほほほほほっ!

それで…先程から、笑いがとまらないのね!

でも、口角が上がりっぱなしで

ほうれい線が心配だわ!」


「おお!そうですか!

それは、丁度良かった。

今夜のスープは、ほうれん草と

池より採取致しました甲殻類の手長海老の

スープにてございます!」


「ほほほほっ!

ロマーネッ!」


「は、はい!

何でしょうか?」


「料理のネーミングにダジャレなどいらぬ!

美味しさだけを追求してくれれば、それで良い!

余計な事に気を回すな!それに…

ほほほほっ!

うっ…おかしくもないのに、笑いがっ!」


「はっ!これは、申し訳ございませぬ!

偶然とは、いえ…

言葉が過ぎました。」


「まぁ、よろしい!

…で、今夜の、メインは?」


「はい!こちらで、ございます。

紫色イボガエルの毒抜きムニエルと

蛇皮のソーセージ。

ムニエルは丁寧に毒抜きを致しておりますので

ご安心を…

デザートは、すももと小桃と蛇苺のズコットに

ございます。

甘さと酸っぱさのバランスが絶妙かと…」


「おお、ロマーネ!

素晴らしい。目にも美味だ。

この森の限られた食材で

よくぞ、この様に見事な料理を…

褒めてつかわす!」


「ははぁ!

もったいなき、お言葉!

ありがたき幸せ!」


「しかし、昔は、山の幸、海の幸、川で捕れたもの

そして、畑で収穫した物と、有り余る程の食材を

欲しいままにしておったらしいな!」


「そのようです!その無限とも言える食材を

贅の尽くす限りの方法で料理したとの事です。」


「しかし、それも、遥か昔。

夢のまた、夢か…」


「お母様!ここに飾ってある、この絵!

これは、その当時の食卓の風景なんでしょう?」


食堂入口上部の壁面に横長の絵画が飾られている。

それは、ロン.シェタット家が

王国の平和と繁栄を謳歌し、漫喫していた頃の記憶。

横長のテーブルの中心には、国王と、女王が鎮座し

その横に王子と王女。

そして使いの者達がズラリと並んでいる。

総勢、十三名。

皆、笑顔で語り合い、料理を堪能している。

その姿が、繊細かつ、克明に描かれている。

まるで、実物のようだ。

今にも、飛び出して来そうとは、このような

絵画の事を指すのであろう。

しかし、今は厨房からの油料理の煙によって

すっかり色褪せてしまっていた。


「そうね!この絵は「最後の晩餐」と

名付けられたもの…

我王家はある日、プァ.トリオット家に闇討ちに合い

王位を略奪されたの!

その時、慌てて、手当たり次第に持ち運んだ物の中に

この絵が混ざっていたらしいわ。

最後に、城は焼き討ちにあったので…

その貰い火で、この絵は少し焼けこげているのよ!

ご先祖様は、その事を…その恨みを

決して忘れないようにと

この絵をこの食堂に敢えて飾ったと言う事らしいわ」


「壮絶な、(いわ)れがあったのですね!

それに、しても、この絵の大皿の大きなものは

何ですか?

大きくて気持ち悪いのですけど…

こんな物を昔の人は、食べていたのですか?」


「ああ…少々、お待ちを…」


ロマーネが、壁際の本棚にズラリと並ぶ

分厚い書籍の中から、一冊を重そうに取り出した。


「おお…ここに、ロン.シェタット家に代々伝わる

食の大全集がございます。

ええ…っと、ああ、ございました。

これは、ロブスターなる甲殻類ですな。

海洋に生息し海底にて繁殖…

食性は昆虫類などに、似通っている……との事です。

殻は、ぶ厚く、大きな爪を持ち

その身は繊維質であり、濃厚で甘みを伴い

ものを言わせぬ…会話を止まらせる程の旨さ!

…と、これまた、大絶賛ですな!」


「海洋って、海の事でしょ!

湖よりも大きいって、聞いた事があるけれど

本当かしら?」


「遥かに大きいそうだわ。

広く深く果てしない。

それが、海。

…らしいけど、私も、見た事はないわ!

この森から、一度も、出た事が、ないのですからね。

今後も、当分、なさそうですけど……」


「それにしても、やはり、あれは、気持ち悪いわね。

まるで、ザリガニのバケモノのようです。

カワザリガニなら繊細な味と知っての通りですが

この怪物は大味で、マズそうです。

何より、気味が悪くて、とても食べようなどとは

思えません!

こんなものが、昆虫…虫と、似た味などと

信じられません!

オオカブトの、あの締まった身。

プリッとした歯応えは堪らないものが、あります。

幼虫にしても、しかりです。

あのジューシーで、とろけるような甘味と

濃厚な香り。

生で良し、焼いて良し、揚げて尚良し!

ああ、堪りません!

ロマーネ!

明日はオオカブトのフルコースをお願い!」


「かしこまりました。姫様!

早朝より、採取に参らせましょう!

クヌギの大木に、群がっておるでしょうから…

楽しみにしておいてくださいまし…」


「あ〜あ、今から、楽しみです。

想像するだけで、ヨダレが…」


「まあ!ジュリエッタッ!

はしたない!

それに、失礼ですよ!

ロマーネにも、今夜の食材達にも!

こうして、毎日、毎食、美味しく頂ける事を

まずは、感謝しなくては…

全ては、ロマーネを筆頭に料理を賄ってくれている…

厨房の者達や食材を調達してくれる者達に…

そしてなにより、自然より提供されている…

あらゆる、動植物。その、命を頂いている事。

その事を決して、忘れては、なりません。

我々も、いつかは、死が訪れる。

その時は、土へと、葬られ…

その身を返すのです。自然の一部として…

この身で、育んだ命を自然へ…土へと返すのです。

後は、微生物達が

良い仕事をしてくれる事でしょう。

私達を綺麗に自然の元へ、返してくれるのです。

そして、また、巡り巡るのです。永遠に…


ジュリエッタ………忘れては、なりません。

私達も自然の一部でしかないと言う事を…」


「はい!お母様!」


「ジュリエッタッ!

返事だけは、いいのね!

人の話しを聞く時は、箸…じゃなった!

フォークを持つ手を休めて、ちゃんと聞くものよ!

ダンロット!

礼儀作法から、やり直しのようね!」


「ははっ!

申し訳ありませぬ!

監督不行き届きと自覚しております!」


「よろしい!

ジュリエッタ!

湯浴びをしたら、今後は、早めにお休みなさい!

疲れたでしょう!」


「はい!お母様!」


本当に疲れたわ…

食事の最中まで、長々と、お説教とは…

おまけに、食事の手を休めて

演説を聞けなどと…

あんな長たらしい話しに耳を傾けていたら

折角の料理も冷めてしまうわ!

折角、ロマーネが、ベストなタイミングで

配膳してくれているのに、台無しだわ!

それこそ、感謝するなら、一番美味しい時に

頂くべきなのよ!


「ジュリエッタッ!

何をボーッと、しているの!

食事が、終わったのなら、はい!退散!

ロマーネ達、厨房の者達も早く休ませてやらねば…

まだ、片付けが、あるのですよ!」


「ああ…そうでした…

ロマーネ!ご馳走様でした。

凄く、おいしかったわ!

明日も、楽しみにしています!」


「姫さま!

ありがとうございます!

では、おやすみなさいまし…」


「はい!

おやすみなさい!」






「ちょっと!

姫さま!成りませんぬ!

いつから、ついて来られていたのです。」


「初めからよ!

その、荷車の中に隠れていたわ!」


朝一番!誰よりも早く起きて荷車に乗り込み

シートの下に隠れていたのだ。


昨晩から、ワクワクして、寝付けなかった。

自然の中で生きているオオカブトを

見てみたかったのだ。

いくら、これを今から調理しますと

料理を頂く前に見せられても

実感が湧かなかったのだ。

手足はバタバタと動いてはいたが

機械仕掛けの

ブリキのオモチャのようでしかなかった。


だから、こうして、やって来たのだ。

素手で、掴んでみたのだ。


樹液を(すす)るその姿。それこそが、生きている証だ。

そして、それを、無惨にも。頂くのだ。

その、生きた命を…

そうせねば、生きては行けぬのだ。私達は…

だから、お母さまは、感謝しなさいと

申しておられたのだ。


そのことが、よーくわかった。



「ああ、どうしよう!

また、女王妃に、どやされるぞ!

‥と、言っても、今更だ。

とにかく、オオカブトを獲れるだけとったら

即、退散だ!

急げ!カイン!マリット!」


食材調達隊の隊長のガッシュが

青年二人に指示を出した。


「わかりました。大急ぎで…」


「それにしても、姫さま…

そのような身なりをして

それは、作業民用の衣ですぞ!

どこで、そのような物を調達されたのです!

あっ!姫さまっ!

そこで、おとなしく見て、おってくだされ!

樹液で、足の滑ります故!」


ガッシュの目を盗んで、姫は

大木に掛かったロープに、手を掛け

サッサと二人の青年の脇まで登ってしまった。


「ああ…登ってしまわれたか!

何と、おてんばな!

ケガでも、されたら、

我らの、首が危ういと言うのに…」


「ガッシュ!凄い!ホラ、見て!

こんなに大きいのがいたわ!」


姫は、得意気にオオカブトを掴んで

ガッシュにかざして見せた。


「おおっ!姫っ!危ない!

枝から手を離されては、なりませぬ!」


しかし、姫は、夢中でオオカブトと戯れていた。


「ワアッ!暴れないのっ!元気が、いいわね!

きっと、身が締まってる事でしょうね。

これなら、脚まで、身が詰まってるはずだわ!

…ととっ…ああっ!」


姫が暴れるオオカブトに気をとられ

腰掛けた枝の上でバランスを崩した。


「あっ!姫さまっ!」


ガッシュが叫んだが遅かった。

姫は、そのまま枝から滑り落ちた。


「ワーッ!」

「姫ーーっ!」


しかし、青年二人が、いち早く飛び降りていた。


「痛ったーっ!

ごめんなさい!カイン…マリット…

あはっ!お尻の下敷きにしちゃったわね!」


間一髪、青年二人が姫と地面の間に突っ込み

クッションの役割を果たしてくれていた。

そして、下敷きになったまま、返事を返した。


「ありがたき幸せに存じ上げます!」


「コラッ!オマエ達!

姫さまに向かって、無礼な言葉!…しかし…

まっ、姫さまを救った…ご褒美としとくか!

ははははっ!」


「ありがとうございます!」


「しかし、姫さま!

しっかり、カブトは握っておられるとは、驚いた!」


「だって、大切な食材でしょ!

大事にしなきゃ!」


「いいいえ!

まずは、ご自身の身体を第一に!

ケガをなされて、痛みを伴えば

折角の美味しい料理もおいしく感じる事は

できなくなりましょう!

お気をつけなされまし!」


「そうね!

その通りだわ!」


「それでは、急いで、城に戻りましょう!

女王妃が、お目覚めになる前に床に戻られませ!

一応…もしもの時の、お叱りに対する

謝罪の言葉は用意しておきますが…

そうならないように、願うばかりでございます。」


「そうね!

申し訳なかったわ!

思いたったら、いてもたっても、いられないのよ!

気になってしょうがないの!

こうして、経験すれば、気が済むのだけれど!

困った性分だわ!」


「お気持ちは、わからなくもありませんが

これでは、いざとなった時

我らの命が、いくらあっても足りませぬ!

いや、我々の命で済むのなら、良いのですが

姫さまの身に何か、ござれば…

結局は我等とて、生きては行けぬのです。

それ程、皆、姫さまの事をお慕いしておるのです。」


「ガッシュ…その言葉…それは…

グサリと、わたくしの、胸に突き刺さりました。

もう、このような無謀な事は二度と致しません!

あなた達に、心配をかけるような事はしません!

迷惑を掛けるような事はしないわ!」


「迷惑などとは、思っておりませぬ!

滅相も、ございません!

ただ、姫さまの笑顔…それをいつも糧に

我らは、務めておるのです。

姫さまの、笑顔…それこそ…

それが尽きぬよう我々は、尽くすのみです。」


「ガッシュ……カイン、マリット!

本当に…本当にありがとう!

いえ!ありがとうございます!

心から感謝します!」


「いえ、とんでもございません…

おっ、マズイ!

こんな事をしている場合ではありませぬ!

急がねば!

女王妃の、お目覚めの刻がせまる!

さあ、馬の背に…しっかりつかまって!」


「はい!わかりました!」


「では、参りますぞ!

ハイィッ!」


馬車を引いた食材調達隊は

城へと大急ぎで取って返した。




続く

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