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『無能と言われた【鑑定士】、実は世界樹の管理人でした 〜パーティーを追い出されたので、辺境で伝説の聖域を作っていたら、聖女や女騎士が「泊めてくれ」と泣きついてきた〜』  作者: やまご
第2章:聖域都市・建国無双編

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第43話:逃亡の代償――黄金の檻と、肉の鎖

「あぁ……っ、アルス様。どこへ行こうというのですか?」

 セレスティアの慈愛に満ちた、しかし温度の一切ない声が寝室に響く。

 アルスは【再構築】を極限まで絞り出し、自身の存在を『透明な希ガス』へと書き換えて部屋の隙間から脱出しようとしていた。だが、その足首に食い込んだカゲロウの「肉の鎖」が、ジュリ、と嫌な音を立てて彼の魔力を直接吸い上げる。

「無駄ですよ。主様の魔力周波数は、もう私たちの細胞一つ一つに『同期』済みなんです。……どこへ逃げても、私の血管が主様を見つけ出します」

 カゲロウは全裸のまま床を這い、アルスの足の甲に頬を擦り付けた。彼女の瞳はハイライトが消え、ただ粘りつくような執着だけを湛えている。

 アルスは戦慄した。

 かつて自分が「良かれ」と思って施した、ヒロインたちへの魔力供給。それが今や、彼を逃がさないための最強のレーダーと化していた。

「アイリス……君まで、どうして……っ」

 アイリスが、再構築された剛力でアルスの背後から組み伏せる。彼女の吐息は熱く、首筋を割らんばかりの勢いで吸い付いた。

「アルス、貴殿は世界を美しく作り替えた。……ならば、この私たちという『最高傑作』に愛されることも、世界のルールの一部だ。……嫌とは言わせん。貴殿の種も、魔力も、その優しい言葉も……すべて、私たちが平等に、骨の髄まで分配するのだ」

 アイリスの手がアルスの腹筋をなぞり、その爪が皮膚を薄く裂く。そこから漏れ出す黄金の光を、彼女たちは狂ったように競って啜り上げた。

『警告:アルスの個体存在維持率が70%に低下』

『全ヒロインによる「魔力吸精ドレイン」が暴走中。……再構築権限が、彼女たちの『欲望』によって逆浸食されています』

 視界が明滅する。

 かつて自分が支配していたはずの【再構築】の力が、今は彼女たちの「もっと欲しい」という飢餓感に突き動かされ、アルスの肉体を勝手に作り替え始めていた。

「ぁ……っ、やめろ……。俺を、俺のままにしてくれ……っ!」

「無理ですよ、アルス様」

 セレスティアが、アルスの唇を指でなぞる。その指先からは、濃厚な媚薬効果を持つ「聖なる体液」が分泌されていた。

「主様が私たちを『愛の奴隷』に再構築したのなら、私たちは主様を『愛の苗床』に再構築し返します。……ほら、見てください。主様の指先……もう、黄金の魔導回路そのものに変わってきているわ」

 見れば、アルスの手足の先が、肉の質感を失い、透き通った黄金の結晶体へと変質し始めていた。それは、彼女たちの「いつでも魔力を吸い取りたい」という願いが具現化した、生ける電池バッテリーへの変貌だった。

「……あははっ! 素晴らしい、鑑定士! お前が作り上げた『愛』という名の地獄……最高に淫らで、最高に絶望的だ!」

 完全な女性体となったネルガルが、狂ったように笑いながらアルスの股間に潜り込む。彼女の新しい「孔」は、アルスの魔力を吸い取るたびに脈打ち、彼を内側から食い尽くそうとしていた。

 アルスは、自分が作り上げた「理想郷」が、一人の男を永遠に消費し続ける「巨大な胃袋」であったことに気づく。

「……【概念……再……構築】……」

 消え入りそうな声で、アルスは最後の抵抗を試みる。

 だが、その瞬間。

「「「愛しています、アルス様」」」

 五人の重なり合う声が、彼の脳内のシステムに直接「強制介入」した。

『システム:【ハッピーエンド】を固定。……主の「拒絶」という概念を削除しました』

 視界が真っ白な光に包まれる。

 快楽の絶頂と、自我が消滅する恐怖。

 アルスの意識は、彼女たちが作り出した「終わらない蜜の夜」へと、永遠に沈んでいった。

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