第38話:深淵の王の更生計画――そして、ヒロインたちの『最終再構築(結婚式)』
世界の終焉を司るはずだった深淵の主・ネルガルは、今、全裸で大浴場の床にへたり込んでいた。アルスの放った圧倒的な「生の熱量」によって、その虚無の肉体は血の通った人間のそれへと【再構築】され、生まれて初めて味わう「皮膚の敏感さ」と「昂ぶる鼓動」に、産み落とされた赤子のように震えている。
「……はぁ、はぁ……っ。これが……『熱』なのか。内側から、何かが……突き上げて、思考を白く塗りつぶす……っ」
ネルガルの股間は、アルスの魔力に当てられたショックで、皮肉にも雄としての本能を激しく昂ぶらせていた。虚無を統べていた王が、一人の男として、アルスの放つ強烈なカリスマに屈服した瞬間だった。
「わかってくれたみたいだね、ネルガル。……虚無なんて、ただの『設定ミス』だよ。これからは、この温かい湯と、美味しい食事……そして、この子たちの『愛』という名のバグを学んでもらう」
アルスは、自身にまとわりつくセレスティアたちの柔らかな肢体を愛おしげに撫でた。
アルスの指先がセレスティアのうなじをなぞり、アイリスの腰を抱き寄せ、ロザリアの太ももを割り、カゲロウの首筋に熱い息を吹きかける。そのたびに、彼女たちは「ひぅっ……」と甘い声を漏らし、アルスの魔力に反応して肌を紅潮させた。
「主様……。ネルガル様も、私たちと同じ『アルス様の熱の虜』になったのですね。……ふふ、仲間が増えるのは、いいことですわ」
セレスティアが、蕩けた瞳でネルガルを見下ろす。かつての敵に対する慈悲ではなく、同じ「悦び」を共有する者への共感。
「……よし。じゃあ、仕上げだ。……全域・最終再構築」
アルスが天空を見上げ、両手を広げた。
天空要塞アルスガルド全体が、これまでにない次元の光に包まれる。
それは、物質の書き換えではない。『世界の理』そのものの書き換えだった。
『称号:【世界の伴侶】を獲得』
『特殊スキル:【常時供給】が発動。ヒロインたちとの接触により、世界の寿命が無限に延長されます』
「……な、なんだ、この光は……っ! 体の中が、溶けるように……繋がっていく……っ!」
アイリスがアルスの首に腕を回し、その唇を強引に奪った。
それを合図に、ロザリアがアルスの胸板に吸い付き、カゲロウが彼の脚の間で熱い吐息を吐き出す。
アルスの【再構築】は、彼女たち全員との「魂の結合」を物理的な次元で固定した。それは、一対一の結婚などという器を超えた、神話的な『一対多の絶対愛』の完成であった。
浴場の湯は、アルスの昂ぶりに呼応して黄金の光を放ち、その中で六人の男女が絡み合う。
重なる肌、混ざり合う汗、そして絶え間なく溢れ出す甘い喘ぎ声。
アルスの魔力が彼女たちの奥深くまで浸透し、その回路を幸福感で焼き切っていく。それは、死を前提としたこの世界における、唯一の「永遠」の証明だった。
「……あ、あぁぁぁ……っ! アルス様……! 私たちを、もっと……もっと壊して、作り直してぇぇっ!!」
セレスティアが絶頂の中で叫び、その光は天空都市から世界全土へと波及していった。
深淵に怯えていた人々は、空から降り注ぐ「温かな愛の魔力」に包まれ、すべての病や貧困、争いの火種が消えていくのを感じた。
数日後。
アルスガルドの中央広場には、純白のドレスに身を包んだ五人の花嫁――セレスティア、アイリス、フィオナ、ロザリア、カゲロウの姿があった。
そして、その傍らで「更生プログラム」として、フリフリのメイド服を着せられ、ボガードと共に給仕をさせられている元深淵の主・ネルガルの姿も。
「……ふん。虚無より、この『イチゴのタルト』の方が、遥かに奥が深いな……。鑑定士、次は私の『中』も、あの時のように熱くしてくれるのだろうな?」
ネルガル(女体化が進行中)の問いかけに、アルスは苦笑しながら、最愛の妻たちへと歩み寄った。
「ああ、もちろん。……世界は広いからね。まだ直すべき『バグ』は、たくさんあるはずだ」
アルスが彼女たちの手を一人ずつ取り、その唇に誓いの口づけを落としていく。
鑑定士として追放された少年は、今や世界の理を書き換える「神」となり、その隣には、彼を愛し、彼に狂う美しきバグたちが寄り添っている。
空飛ぶ都市は、今日も黄金の輝きを撒き散らしながら、終わらない幸福の旅へと漕ぎ出していった。




