第35話:カゲロウの屈辱――漆黒の忍が、聖域の『看板娘』に書き換えられるまで
湯煙が渦巻く聖域大浴場。そこは、裸身を晒した三人の美女――セレスティア、アイリス、ロザリアによるアルス奪い合いの戦場から、一転して処刑場へと変貌していた。天井から潜入し、アルスを『概念の鎖』で縛り上げた深淵の四天王第二席・カゲロウだったが、彼が手にした獲物は一瞬にして柔らかな羽毛へと【再構築】され、その目論見は無残に崩れ去った。
「な……馬鹿な!? 我が深淵の理が、これほど容易く……っ!」
カゲロウが驚愕に目を見開いた瞬間、彼の視界は黄金の魔力に塗りつぶされた。アルスは湯を滴らせたまま、一歩も動かずにその手をカゲロウの喉元へと伸ばす。
「……覗き見は趣味じゃないな。君のその『隠密』の概念、少し不純物が多いみたいだ。……【存在再構築】」
「ぎゃああああああああっ!!」
絶叫が浴場に響き渡る。カゲロウの全身を包んでいた漆黒の忍び装束が、内側から弾ける魔力の光によって強制的に分解されていく。彼の肉体、細胞、そして魂に刻まれた「深淵の忠誠」が、アルスの圧倒的な「生」のエネルギーによって激しくかき乱され、書き換えられていく。
それは、もはや暴力的なまでの「存在の調教」であった。
カゲロウの体内を、熱い黄金の濁流が駆け巡る。これまで影の中で冷徹に生きてきた彼にとって、アルスの放つ陽の魔力は、脳を焼き切るほどの強烈な快楽と破壊を伴うものだった。
「ひ、ひぃぃっ! 中が……俺の中が、かき回される……っ! ああぁぁっ、思考が……っ、溶けるぅぅ!!」
数分後。光が収まった時、そこには無残な姿で床に伏せる「元」四天王の姿があった。
いや、そこにいたのは、筋骨逞しい男の忍ではない。アルスの【再構築】が、彼の隠密としての「忍ぶ(受け身)」という本質を極限まで増幅させ、性別という概念すらも『女性(くノ一)』へと書き換えてしまったのだ。
黒髪のポニーテールに、不自然なほど豊かな胸元を強調する、露出度の高い漆黒の和風メイド服。
潤んだ瞳でアルスを見上げるその姿は、もはや深淵の暗殺者ではなく、主の命を待つ忠実な「下僕」そのものであった。
『個体名:カゲロウ(元四天王・第二席)』
『属性:聖域の看板娘(見習い)』
『状態:魂の隷属、主への異常な依存、感度再構築済み(3000%)』
「……あ、あぁ。……アルス、様。私、私は……何を……っ。……う、嬉しい。貴方に壊されて、新しくされたことが……こんなに、熱くて……心地いいなんて……っ」
カゲロウ(女)は、己の股の間から溢れる蜜の熱さに顔を赤らめ、悶えながらアルスの足元に縋り付いた。彼女の指先は、アルスの濡れた脛を愛撫するように這い、その喉からは甘く蕩けた喘ぎが漏れ出す。
「……よし、お掃除完了だね。カゲロウ、君は明日からボガード君と一緒に、温泉の受付と『看板娘』をやりなさい。……断ると、また中を再構築するよ?」
「……っ!! は、はい……。喜んで。もっと、もっと私を……作り直してください……っ」
その光景を、湯船から呆然と見ていたセレスティアたちが、我に返って叫んだ。
「ちょっとアルス様! またそんな風に、無自覚に雌を増やして!!」
「しかも今回は性別ごと書き換えるとは……アルス、貴殿の業は深すぎるぞ!」
「……ふん。新入り、アルス様の『熱』を教え込まれたのは私の方が先よ。序列は弁えなさい」
ロザリアが勝ち誇ったように豊満な胸を反らせるが、カゲロウは既にアルスの足の甲を舐めるように接吻しており、その執着心は既存のヒロインたちを凌駕しつつあった。
天空要塞アルスガルドの夜は、ますますカオスを極めていく。
だが、その騒乱を嘲笑うかのように、深淵の主がいよいよその「本体」の一部を現世へと突き出そうとしていた。
「……カゲロウも堕ちたか。よかろう、ならば『深淵の聖域』を、その天空の庭に直結させてやろう。……真の絶望の中で、愛の無力を知るがいい」
天空都市の座標が、深淵の次元と強制的にリンクし始める。
アルスの隣を巡る女たちの戦争は、文字通り「世界そのものの崩壊」と隣り合わせの、極限の状態へと突入しようとしていた。




