↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/298

魔物の数は多く、強い。使うんだ

 ユリアンヌに剣を抜かせてから、すぐに回復ポーションをかけた。


 どうやら四級レベルだったようで、腹に空いた穴が塞がっていく。


 ヨン卿の呼吸も落ち着いてきた。


 もう死ぬことはないが体力を回復させるために、しばらくは休ませる必要があろうあろう。


「傷は癒えた。先ほどの質問に答えてもらおう」


 デュラーク男爵の手下が、この森にいた理由が判明していない。


 それがわかるまでは尋問を止めるつもりはなかった。


「魔物を操って村を一つ滅ぼそうとしています」


 リザードマンと取引していたのも、第四村の森で魔物を使っているのも、狙いは俺の村というわけか。


 たった四つしかない村の一つを潰されてしまえば、経済的には大きな打撃を受けることになる。


 さらにそれだけではなく、領民の心も離れるだろう。


 外敵から守ってもらえない領主に従う意味があるのか?


 そんな疑問が領内に広がるだろう。


「その後にデュラーク男爵が領民を煽って、反乱でもさせるつもりだったのか?」


 自滅すれば領地は空白になるので乗っ取るチャンスはでてくるし、最高結果を望むなら、俺が死んでユリアンヌが生き残るパターンも考えているはず。


 王家や他貴族の横やりを心配せず、勇者が注目しているジラール領を傀儡にできるからな。


 その後は、ゆっくり領地内を調査できるし、面倒なら勇者と交渉するカードの一つとして使える。


「恐らくは……」


 直前まで何も知らされなかったヨン卿は、断言できないか。


 とはいえ、俺の予測が大きく外れてないと分かれば十分である。


「状況はわかったので、そろそろ交渉を――」


 したかったんだが、魔物の叫び声が聞こえて中断した。


 どうやら話し合いは、後回しにしなければいけないようだ。


「魔物を操っている方法は?」


「森の主を奴隷の首輪で制御して、配下の魔物を第四村に誘導しています」


 魔物の種類は分からんが、この森に主がいるのか。


 攻撃を無効化する人型の影を使えばできるかもしれん。


「随分と好きかってしてくれたじゃないか」


 怒りは収まるどころか高まるばかりである。


 さっさと領地を荒らしているバカどもを倒しに行きたいのだが、全員では移動できない。


 ユリアンヌは動けないヨン卿の側に置いた方が良いだろう。


 グイントもセシール商会のヤツらを見てもらう必要がある。


「アデーレ。俺と二人で行くぞ?」


「もちろんです!」


 結局、最後に頼ってしまうのは最強キャラとして愛用していたアデーレだ。


 彼女さえいれば、どんな困難があろうとも乗り越えられる自信がある。


「良い返事だ」


 気合いは入っているようだし、あとは武器の問題を解決すれば大丈夫だろう。


 荷袋からヒュドラの双剣を取り出すと、アデーレに投げ渡す。


「これは……」


「魔物の数は多く、強い。使うんだ」


 一度は断られてしまったが、ヒュドラの双剣はアデーレが使うべき武器である。


 紅い双剣では殲滅力が足りないのだ。


「ジャック様はどうするのですか?」


 魔物の数は多いと予想されるし、俺が使っていた鉄製の双剣は壊れてしまった。


 代わりの武器なんて持ってきてない。


「俺には、これがある」


 だから危険なヴァンパイア・ソードを使うしかないのだ。


 回復効果もあるので長期の戦いには使えるし、今回の戦いでは活躍してくれるはず。


 精神を侵食するような効果に対しては、気合いと根性で耐えるしかないだろう。


 俺なら勝てる。


「……分かりました。ヒュドラの双剣は私が使います。だからジャック様は、剣なんかに負けないでくださいね。もし意識を奪われたら許しません。徹底的に叩きのめして、取り戻しますから」


 アデーレにボコボコにされるのは嫌だな。


 ヴァンパイア・ソードに負けられない理由が一つ増えた。


「……ジャック様」


 止めたいが、できない。


 そんな感情が含まれていそうな声を、ユリアンヌが出した。


 魔物と戦いたいと言っていたので、猪のような性格をしていると思ったのだが、ちゃんとわかっているじゃないか。


 ユリアンヌに近づくと、肩に手を置く。


「俺は負けない。だから、ヨン卿を頼んだぞ」


 まだ体力が回復しきってないので、もう少しだけ休ませる必要がある。


 その間の護衛を依頼したのだ。


「私を独り身にさせないでくださいね」


 気が早いな。


 もう、結婚しているつもりでいる。


 泣き出しそうなのを我慢しながら言われてしまったので、突っ込むようなことは出来ん。


 仕方なく、頭を軽く撫でて返事をしてから離れた。


 アデーレと合流して魔物の方へ向かおうとすると、グイントが立ちふさがる。


「その剣を手放してください。あまりにも危険ですっ!」


 黒い靄を出しながら、涙声で言った。


「俺は大丈夫だ」


 静止を無視して前に進む。


 黒い靄が俺に触れて浸食して俺の心を惑わそうとしてくるが、気合いを入れれば何とでもなる。


 ヴァンパイア・ソードに比べれば可愛いものだ。


「セシール商会のヤツらを逃がすなよ」


 すれ違いざまに命令すると、グイントの横を通り過ぎていった。


 ここまで言ったのだから、本当にヴァンパイア・ソードに勝たなければ格好がつかん。


「先行します!」


 宣言するとアデーレが走り出したので、後を追う。


 魔物の叫び声が近づいてきて、ゴブリンの姿が見えてくる。


 魔物の中でも最弱であるため、尖兵として使われているのだろう。


 この奥には、もっと強力な魔物たちがいるはず。


 アデーレは数十匹もいるゴブリンを斬り刻んで、毒殺していく。


 俺が参戦する暇すら与えず死体を量産した。


 全部は倒せなかっただろうが、数はかなり減らせた。


 残りはグイントやユリアンヌ、そして第四村を守っている冒険者どもに任せるとしよう。


 俺たちは先を急ぐために、再び走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宣伝
▼新作を始めました▼
防具専門の鍛冶師~異世界に転生して35年。おっさんは隠居生活をすると決めたのに、今さら没落した元悪役令嬢がやってきて手放してくれないんだが~
https://ncode.syosetu.com/n4490lf

悪徳貴族の生存戦略の1~3巻が好評販売中です!
書籍版も読んでもらえると大変嬉しいです!

▼リンクをクリック!▼
h8zSBpA28yTJnsLJ-1746002506.jpg
悪徳貴族の生存戦略(コミカライズ)


悪徳貴族の生存戦略(書籍版)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。