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第三者からの感想を聞かせてください

 勇者セラビミアは羊皮紙を一枚ずつ丁寧に読んでる。


 左右にいるエルフの姉妹は紅茶をお代わりしてリラックスしているが、俺は緊張で何もする気が起きない。


 部屋には八人もいるが静かだ。


 羊皮紙をめくる音がうるさく感じる。


「いくつか質問をしても?」


 顔を上げたセラビミアが確認してきた。


 俺に拒否権など存在しない。


 ここが正念場だと感じ、背中に汗をかきながらも口を開く。


「もちろんです」


「では一つ目、なぜ税率を下げたので?」


 税率は領主が決めるものの、高すぎれば王国法によって罰せられることがある。


 領地は疲弊しているし、前当主が定めた税率は明らかに違法だったので下げたのだ。


 と、そんな真っ当な答えはしない。


 ゲームの知識もしくは俺のように前世の記憶が残っているのであれば、先ほどの回答はジャックらしくないと気づくからだ。


 俺は悪徳領主として有名なジャックでしかない。


 そう、演技をしてみよう。


「効率が悪かったからです」


「どういうことですか?」


「領民が死なず、元気に働いて納税できるギリギリの税率が今です。要は、最も効率のよい数字というわけですね。これ以上にしてしまうと、領民は死ぬか不正を働いてしまい、全体の税収は増えるどころか下がる可能性すらあります」


 税率を高くしすぎても領民は生きてはいけず、裏切りのリスクが増大するわりには手に入る金は増えない。


 費用対効果が悪いのだ。


 生かさず殺さずで税率をコントロールしながら、領民から富を奪い取るのが悪徳領主の嗜みというものである。


「なるほど……」


 領民のためではなく、自分のため。


 しかも王国法には触れていない。


 悪徳領主らしい回答ができたので、セラビミアは何か納得したような表情をしていた。


「それでは次の質問です」


 なんだか警察の尋問を受けているようで、不快な気分になる。


 後ろめたいことをしているからだろう。


「報告書には不正を働いた徴税人がいたと書いてあります」


「ああ、アイツのことですか」


 大切な俺の財産をかすめ取った男だ。


 首を切り落としてやったが後悔はない。


 少しだけ怒りが漏れてしまったので、すぐに引っ込める。


「随分と嫌っていますね」


「私の財産を奪うヤツは許せませんから」


 これで強欲な男だと認識したことだろう。


 ジャックらしい演技が出来たはず。


「なるほど。だから村人の前で処刑したんですね」


「その通りです。組織的に隠し畑を作らせた徴税人の処刑を目の前で行うことで、領主に逆らったどうなるか見せつけました。効果はてきめんでしたよ」


 言い終わると同時にニヤリと笑った。


 一瞬だけだがセラビミアの眉がピクリと動いたので、嫌悪感を覚えたのだろう。


「勇者セラビミア様、この件で何か問題でもありましたか?」


「大規模な脱税事件なので、やり方はともかく処刑は妥当です」


 当然だろう。


 ちょっとした不正ならともかく、今回は規模が大きすぎたので処刑しても問題はならない。


 勇者のお墨付きが出たことで、俺の正当性は確かなものとなった。


「それでセラビミア様は、何が聞きたかったのでしょうか?」


「処刑した際、周囲の反応をお聞きしたいのです」


 といって、セラビミアはドアの前で控えているケヴィンを見た。


「第三者からの感想を聞かせてください」


 俺ではなく他のヤツらに聞くだと!?


 予想してなかった動きに内心で焦る。


 今のケヴィンが裏切るとは思えないが、ちょっとした失言から証言をねつ造することぐらいはしそうである。


「領主様のご判断に納得されているようでした」


「本当に?」


「もちろんでございます」


 ケヴィンは無難に回答してやりすごしてくれた。


 よかったと思ったのもつかの間、セラビミアは兵にも話しかける。


「あなたたちは、どうですか?」


 急に話題を振られてお互いに顔を見合わせていた。


 おい、お前が話せよ。


 そんな押し付け合いの声が聞こえるようである。


「何を言ってもあなた達の安全は私が保障します。だから、正直に話してくれませんか?」


 セラビミアは俺に脅されて兵が素直に話せないと勘違いしたようだが、実際は違う。


 勇者という尊き立場にいる人間に指名されるとは思わず、戸惑っているだけだ。


 貴族であれば慣れた反応であるはずなのに気づけないとは、やはり少しズレている。


「それでは私がお答えします」


 膝をついてから返事をしたのは、ルートヴィヒだった。


 ルミエの弟であり兵長に任命してから驚くべき速さで実力を伸ばしている。


 指揮能力も悪くはない。


 人材不足のジラール領にとって嬉しい誤算だ。


「徴税人を処刑する前に、ご当主様はレッサー・アースドラゴンと戦い、村を守っておりました」


「報告書にも書いてありましたね。あれは事実なのですか?」


 男爵ごときが囮役をしてレッサー・アースドラゴンを罠にはめて殺した。


 だなんて、報告書に書いてあっても信じられないだろうな。


 見栄を張りたいがために、脚色したと考えているのだろう。


「もちろんでございます。私どもや丘に避難していた村人は、ご当主様がたった一人で巨大なレッサー・アースドラゴンと戦う姿を見ました。体を張って領民を守ったのです。不正を働いた徴税人の処刑に反対する者はいません。誰もが当然だと思って見届けておりました」


 納税してて良かったと思わせるために丘に避難させたのだが、セラビミアへの証言にも使えるとは思ってもいなかった。


 脅しているわけではなく本心で言っているので、納得するしかないだろう。

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