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飲み比べしましょう!

 結婚式当日が来た。


 とはいえ、屋敷の一室で行うパーティー形式だがな。


 招待客は普段から俺に仕え、働いている私兵たちとケヴィンの他ルミエ、イナといったメイドだけだ。


 外部からはユリアンヌの両親しか招待していないので、会場に並ぶ料理は高くない。


 もちろん、平民からすれば豪華だと言える内容にはなっているが、貴族から見れば「この程度か」と鼻で笑われてしまうだろう。


 さて、開場してからだいぶ時間がたったな。


 主賓が入る頃合いである。


「そろそろ行くか」


 真っ白なドレスを身につけている二人に声をかけた。


 露出度は控えめで、胸元や首が隠れている。


 最近は露出度の高いドレスが流行らしいのだが、目立つ傷があるユリアンヌに配慮して今のデザインになった。


 アデーレも気に入っているようだし、問題はないだろう。


 流行なんて王都にいる令嬢たちが気にしているだけで、俺たちには関係ないのだ。


 二人と手をつないで部屋を出る。


 向かう場所はみんなの待つパーティー開場だ。


* * *


 黒いスーツを着た俺は、妻となる二人を連れて屋敷内のパーティー会場に入った。


 立食式になっていて、丸いテーブルがいくつもある。


 その上には、肉や麺、パン、野菜といった食べ物やワインなどの酒が置かれていた。


 会場には、ケヴィンやルートヴィヒの他、グイントや私兵たちが集まっている。


 外から来たのはユリアンヌの両親には後で文句を言われそうだが、ヨンは俺を殺しかけた前科があるので、強くは出られないだろう。


 貸しはいくつもあるんだから、こういうときに返してもらわないとなッ!


 ルミエからワイングラスを受け取ると掲げる。


「みんな良く来たな。今日は俺とユリアンヌ、そしてアデーレが夫婦になる特別な日だ」


 左右に立つ二人を交互に見た。


「お前たち、一緒に祝えッ!」


 貴族じゃなく賊っぽい言い方になってしまったが、案外好評だったようだ。


 特に私兵たちは声を上げて騒いでる。


 こういうノリでいいんだよ。


 俺も、こいつらも上品な態度なんて取れないからな。


「旦那様、お母様がちょっと……」


 気分が良いところで水を差されてしまったな。


 ユリアンヌの母を見る。


 こめかみがピクピクと動いていた。


 俺のやり方が気に入らないのだろう。


「ユリアンヌはこういうの嫌いか?」


「私はこっちの方が好きです」


 知ってて聞いた。


 堅苦しい雰囲気が嫌いだもんな。


「アデーレは?」


「ジャック様と一緒なら、なんでもいいです」


「だったら周囲のことなんて無視だ。俺たちが楽しみ、周囲が祝ってくれれば、形式にこだわる必要はない」


 なんせ、俺たちの結婚式だからな。


 開場に集まっている人たちを見ると、みんな笑顔だ。


 ケヴィンなんてハンカチを持って涙を拭いている。


 体格が良いので似合ってないが。


 挨拶が途中で止まっていたことを思い出し、声を張り上げる。


「今日は無礼講だ! 好きなだけ食べて、飲め! 宴の始まりだッッ!!」


 荒々しい宣言をすると、招待客たちが食事を始めた。


 私兵たちは肉を口いっぱいに入れるとワインで胃に流し込む。


 マナーなんて存在しない。


 ヨンは慣れているようだが、妻のヒルデは驚いて固まっている。


「私がフォローしてきますね」


 さすがに思うところがあったようで、ユリアンヌは両親の方に行ってしまった。


 結婚相手を置いていくなよと思ったのだが、マナーや常識を無視しているのは俺だ。


 文句はいえんな。


「飲み比べしましょう!」


 アデーレと話そうと思ったら、私兵に囲まれていた。


 訓練では負けっぱなしだからといって、酒で勝とうとしているらしい。


 既にジョッキ五杯ぐらいは飲んでおり、さらに私兵から酒を受け取ると、アデーレは一気に飲み干す。


 顔色は変わってないし、足下がふらついているようにも見えない。


 幼い見た目と違って酒は強いようだ。


 俺があの中に入っていくのは少し勇気がいる。


 さすがに空気ぐらいは読めるからな。


「花嫁、取られちゃいましたね」


「暇になったから、少し相手しろ」


 振り返りながら返事をする。


 青いドレスに身を包んだルミエがいた。


 首にはサファイヤがちりばめられたネックレスがあり、髪を後ろで束ねている。


 普段は隠れている耳には、ミスリル銀製のイヤリングが二つぶら下がっていた。


 メイド服で出ようとした彼女に、俺がドレスやアクセサリーをプレゼントしたのだ。


 結婚前に浮気しようとしたわけじゃない。


 ちゃんと二人の嫁に許可は取ってある。


「素敵な物をいただいたお礼として、ジャック様のお相手をしますね」


 こんなことを言っているが、渡したときは素直に受け取らなかった。


 受け取らなければ結婚式はしないと強引に迫って、ようやく渡せたのだ。


「プレゼントは奥様に渡したんですか?」


「この後、披露する予定だ」


 ハイナーは無茶な依頼を達成して、希望したとおりの物を用意してくれた。


 既に現物は確認しているので問題はない。


 後はこの場で披露すれば盛り上がるはず。


 まあ、プレゼントの一つが短槍というのはちょっと変だが、二人は喜んでくれることだろう。






=======

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