表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
哀傷ゾルレン  作者: まじりモコ
第四章 悲哀の遊戯
52/77

四十八話 叶えたかったのは


         11


 遅れてやって来た自分(ぼく)が案内されたのは、職員用の休憩室だった。


 休憩室のソファーに横たえられた誡は、安らかな寝息をたてていた。

 彼女の横に腰かけ髪を撫でる。職員の人たちによれば、頭を打ったかもしれないとのことだったけど、触った感じたんこぶもない。


 彼女の様子を観察している内に、誡は長いまつ毛を濡らしていた。なにかしてしまったかと慌てたけど、誡の表情は柔らかい。


 もう少し、見守ることにした。



 気がつくと、利用者たちの声もしなくなっていた。誡のほうを見ると彼女は眼帯をしていないほうの瞳から涙を零している。指先でそれを拭う。泣いている彼女を、自分(ぼく)は初めて見た。


「んっ……」

「誡?」


 小さな呻き声。呼びかけると、ゆっくりと(まぶた)が開いた。


 空中を彷徨っていた瞳が自分(ぼく)を捉える。


「おはよう、誡。どんな夢を見ていたの?」


 まだぼんやりしている誡に問いかける。しばらく自分(ぼく)を見つめていた誡は、唐突に起き上がり、自分(ぼく)に抱き着いてきた。


「えっ──」


 突然の出来事に反応できないでいると、誡は自分(ぼく)の頭をかき抱き、か細い声で呟いた。


「……百年は、とうに過ぎていたのですね」


 そうして首元にすりついてくる。


 なんのことかわからなくって、なにが起こっているのかも把握できなくて。


 けれどどうしてか、自分(ぼく)は彼女を強く抱きしめ返していた。


「うん。そうだね」


 自分(ぼく)は全身で、誡の熱を感じていた。


 もう忘れてしまった遠い約束を果たしたような、そんな不思議な心地よさに浸りながら。


         -1


 ────この世の残酷さが人によって定められたのと同じように、きっとこの世の美しさも人が定めたのだろう。

 そうでないと、彼が命をかけてまで守ったものが、無為になってしまうから。

 だから、私は願う。

 自分の人生が終わる最後の瞬間に、きっとこう願う。


 また彼に出会えたら、今度こそ私は、

 この手で貴方と、貴方の願う幸せを守ってみせると────



             第四章 悲哀ひあい遊戯ゆうぎ 了



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ