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聖者のお務め  作者: まちどり
203/205

203.『何者でもない』が正解(198)

 遅くなってごめんなさい。不定期更新です。




 夕餉の席で、今日は何をしたかをイトくんが話す。

「ロト様もガン様も、先生達よりえらいでしょ?大聖女様とどちらがえらいのかって喧嘩みたいになった」

とイトくんがさらりと報告するのを聞いて、レアンが眉をひそめる。

「どちらがえらいのかって…何方どちらが立場が上かってことですか?」


「どちら?」

 イトくんがコテンと小首を傾げてレアンに尋ねる。

「え、えぇ~っとぉ…」

 レアンの眉間の皺が更に深くなる。「俺に訊くなよぉ」との心の声が聞こえそうだ。


「大聖女のアーリエルさんだよ。年上だし実績あるし、イルシャ教会のおさだし」

 簡単な答えなのに何を迷っているんだか、とアスタロトがレアンに代わり答える。


「しかし、実際に祝福を贈っていらっしゃるのはアスタロト様とガンダロフ様じゃないですか」

 だがそれにレアンが困惑顔で返す。

「お二人の仮のお姿は『魔法使い』と『傭兵』ではありますが、その正体わムンンッ!」

 アスタロトがレアンの口にパンを投げて突っ込む。イトくんはまだ知らないのだから、暴露する(バラす)な!ということだろう。


 喉を詰まらせる一歩手前のレアンをやれやれしょうがないですねとユキチが介抱するのを横目に、イトくんはコテンと反対側に小首を傾げて

「そのしょうたいは?」

とアスタロトに訊いてくる。彼は、んー…、と少し言葉に詰まって探し物が見つかったように、あ!と小さく声を上げる。

 そして、パパンと拍手して斜め上に両手を揃えてシュタッと挙げると

「♪変なお~じさんッ!で良いんじゃないかな?」

「それは絶対違う」

 なんてことを言うかなこの人は?!俺は速攻で否定する。


「うん、絶対違う。『おじさん』じゃなくて『お兄さん』だよ」

とイトくんも狭い眉間に小っちゃい皺を寄せる。…ロトは四歳児にも変人認定されているのか。はぁ…。


「正体はともかく、何方が立場が上かはアーリエルさんだ」

と俺は断言する。イトくんも

「アーリエル様、『大聖女』様だものねぇ」

と納得顔で頷く。

「それで、そのしょうたいは?」

 イトくんの現在最大の謎は、俺達の正体なのだな。


 期待に応えられるかどうかはともかく、俺の認識としては

「『魔法使い』と『傭兵』だ」

 イトくんは表情を変えることなく、興味津々で耳を傾ける。

「人並みならぬ力を持ってはいるし、成り行きでいろいろと手助けして飛び回ってはいるが。

 まぁ、元々平民、一般市民?今は何かのおさということもないから、強いて言えば『何者でもない』が正解だ」


「『何者でもない』…」

 小声で反芻するイトくんが濃い藍色の瞳を煌めかせる。

 本当であればイトくんは『ダイザー帝国第四皇子ノイット・フレア・ダイザー』を常に意識する立場なのだろう。

 だが、此処ではイトくんという四歳児だ。せめて俺達と暮らしている間は、肩書きなど気にしないで欲しい。


 …アスタロトがテーブルの端っこで自身の等身大の薩摩芋の天麩羅を両手に持って口いっぱいに頬張っている聖樹の分身(タケシ)を眺めながら、ホッと胸をなで下ろしていた。



 ※※※※※



「実りの秋、万歳!」

「「「「「みのりのあき、ばんざいっ!!」」」」」

 天高く澄み切った青空の下、今日はアスタロトの提案で俺と彼とイトくん、孤児院・託児所の子ども達・先生達と芋掘りの手伝いをしている。

 アスタロトが腰と両手を伸ばしたついでに感謝の気持ちを声に乗せると、周りの子ども達が真似して唱和した。憧れのお兄さんの真似をしたい、というお年頃だな。


「青い作業服って、目立ちますね」

 アスタロトが農作業の為に作って配った青い作業服。子ども達は麦わら帽子被って汗拭きタオルを首に巻いて一見同じ格好なのだが、長靴、タオル、麦わら帽子のリボンの色が様々で、何と言っても背中にでかでかと名前が書いてある。故に誰が何をやっているかは先生達には丸わかりで高評価だ。


 遠目で見ても畑で青い妖精さん達が賑やかに遊んでいる様子はとても微笑ましくて自然と笑顔になる、と彼は嬉しそうに目を細めた。


 収穫後の楽しみは、収穫物を使ったアスタロトの手料理だ!掘り出した芋はどんな美味いおやつに化けるのだろうか?

「それで、何を作る?」

「これを使うのはまだ先なのだけど」


 今日収穫した分は軽く泥を落として、風通しの良い所で数日間陰干しするから、と彼は淡々と説明する。


 俺もイトくんも子ども達も期待していた分、残念な気持ちが強くてあからさまに肩を落としてしまった。が、アスタロトが

「以前収穫したりお芋で、おやつにしよう!」

と声を掛けると、

「おぉっ!」「「「「「やったー!」」」」」

と直ぐに復活。現金だね君達、と彼はニィッと口角を上げた。


 堅い食感の芋けんぴをパリポリカリリッと食べた時の音が楽しくて、噛み締める毎に堅さが無くなり甘さ美味しさが口中に広がっていく。

「これはまた美味いな。この堅さが堪らん!」

 皆が喜んで楽しく摘まんで食べる様子を、アスタロトも満足げに眺めた。

 …彼自身はあまり食べないのだが、このように感謝の気持ちを向けられることが彼にとっての食事のような意味合いもあるのだろうか。




 何故更新が遅かったか。それはこの話とは全く関係の無いお話し(短編)を書いていたから!

『異世界転生ですか、そうですか。』

https://ncode.syosetu.com/n7106md/

 ストーリーどころかタイトルすら全く知らない異世界に転生したと気付いたら?という良くあるお話しです。

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