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本命『一度も会話したことないけど好きな人』

ヒロインとして設定してるのはで揃った感、四姉妹の長女と末っ子はまだだけどヒロイン級の扱いにはならないので悪しからず。

 双子の姉妹から好意的に接して来られて数日、他愛ない会話を交える程度の関係に落ち着いた。


 先の一件で惚れたとかそういう事ではなく単にこの人いい人だなと思われた程度だろう、そんな俺達のやりとりを見てファンの人らも落ち着きを取り戻した、このクラスに限ってはだが、二人は皆とも普通に会話するし、ファンの人らも下心が見え隠れしつつ平静を保っている。

 昼休みになり昼食を終え一息ついていると衛が近寄ってきた。


「で、限は、誰が本命は訳よ」


 暇なのか衛がそんなことを聞いてくる幸い近くには誰も居ないし、少し話に付き合ってやってもいいかな。


「で、とは?」


「あーいやお前ってあの二人には脈ナシじゃん? けど高校生だぜ? 誰か、好きな子の一人や二人いるだろう?」


「いや二人って、一人でいいだろ本命ってならさ」


「まあ言葉の綾だよ、いちいち細かいな……で、誰なのさ?」


 誰と聞かれてすぐさま思い浮かぶ顔があるので即答してやった。


「音妙寺かな」


音妙寺 雪(おんみょうじ せつ)さんか」


 音妙寺 雪、属性『氷』の使い手で髪色は白雪を思わせる白髪で母親がハーフだとかで碧眼をしている。


「ああ、彼女とは小中高とずっと一緒だったろう?」


「そういやずっと同じクラスだなお前ら、もう運命ってぐらいな、けど俺の知る限りお前彼女と話したことあったっけ?」


 同じく小中高と一緒だった衛は記憶を漁りながら問いかけてくる。


「ないよ」


 接点はない、だからこれは一目惚れというやつだ。


「ないのかよ……なんだよ恥ずかしいのか?」


「そうではない、ただ彼女誰にも塩対応だから、できればきっかけが欲しい」


 彼女は双子と比べられるとやや人気は落ちるが、それでも今の学園でも五本の指に入る、とクラスの男子が話していたのを耳にしたことがある、無論他の四本指は流雲四姉妹だが。

 流雲家というブランドと数多のファンの甲斐もあり彼女らは告白とかそういうのは免れている。


 しかし音妙寺家も古くからの名家であるがその知名度も低く、彼女自身に愛想もあまりないのでファンというものはついておらず、結構な頻度で告白が行われるもののほとんどが玉砕しているのだという。


「それじゃあ無理なんじゃねーの? 小学校から見てるとなるともしかして初恋か? 初恋ってのもほとんど実らねーらしいぞ」


「違う、初恋は五歳で済ましている、十秒で終わったがな」


「なんだそれ」


「まあ、あれだ、離れて暮らしていた姉と会う機会があって姉とは知らずに惚れて、姉だと明かされて終わった恋だ」


 今思い出しても気恥ずかしい、ながらく顔を合わせてはいないが、元気でやっているのだろうか。


「へぇ、姉さん……あの人か、ありゃ惚れるわな、俺も実は初恋の人あの人なんだけどさー」


「お前もか」


 それは知らなかったな、接点はあるのだけ知ってはいたが。


「兄貴と一緒に会いに行った時にな、まあはっきり失恋したわけじゃないけど、住む世界が違うっていうかな」


「ああ、浮世離れした綺麗さってやつな、分かるな……」


「それはともかく、今は音妙寺さんだな、とりあえず俺が声をかけてこようか?」


「なんていうのさ、取り付く島もなく追い返されるぞ」


「そっか、そうだよなー何かきっかけがあればな……」


 だからそれを言ってるんだろうに……、そうそうそんな機会なんて巡ってこないだろうな。


 などと言っているうちに五限目はクラス会議の時間だった。

「あー、今度ある学外での実地研修の班分けをするぞー、各自好きに五人一組作れ、男女混合でもいいぞ」


 黒川先生が言うや否や、皆達がありがやがやしながら思い思いの班を作り始めた。


「とりあえず限は俺とな」


 衛がやってくる、想定内だ。


「それでは私たちも入れてもらおうか」


 雷を連れた空がやって来た、クラスに馴染みだしたとはいえ皆この二人に関してはまだ恐れ多いとかあるらしく遠巻きにされていたのでこれも想定内。


「後一人だが……」


 余った奴を入れる、事になるだろうな。うちのクラスは全部で二十人男女十人ずつだ、他所が難なく組めれば一人余るのは必然。



 そして余ったのが―――。



「よろしく」



 一言だけ簡素に言って近づいて来たのは余った音妙寺だった。

 とっつきにくい性格をしているので誘われなかったのが原因らしい。


「良かったな、きっかけになったじゃん」

 小声で耳打ちしてくる衛に三人は訝しんだ様子になる。


「何?」


「ああいや、大したことないぞ、五人とも小中高とずっと一緒だったなと」


「え?音妙寺と加辺もなのか?」


 初耳だったらしい空が露骨に反応した。


「そうね、ずっと一緒だった。……それに蹴戸君とはクラスもずっと一緒」


 凍てついたとも評される音妙寺の表情筋がわずかに緩み、得意げな様子で空たちに勝ち誇る音妙寺に、俺はドキっとした、こいつこんな顔も出来たんだなと、ついつい内心惚れ直してしまった。


「まあ、話したことはなかったけどな……」


「そうね、これをきっかけに話せばいいよ」


「う~ん、私も雪ちゃんとお話ししたーい!」


 俺と音妙寺の間に割って入る雷、折角の機会を……いや実地研修もあるしこれからだ。


「雷さんと空さんとは何回か話した事あるし」


 もじもじする音妙寺、どうしたというのか今日は色んな一面を見せてくれるじゃないか。


「けど数える程度しかないだろう?」


「ん、ならこれを機に仲良くしよう……私の事はみんな、雪でいいから」


 態度を軟化させていく音妙寺、一体何がどうなっているんだ?


「雪ちゃんね、オーケーオーケーこれからよろしくな!」


「よろしく……加辺」


「よろしくな、雪」


 衛に先を越されたけど念願の雪呼びだ、いやまだこれから少しずつ仲良くなれればいい、焦るな俺。


「うん、よろしく、蹴戸君……限君って呼んでもいい?」


「構わないぞ」


「それじゃ、よろしく限」


 こうして本命と付き合っても居ないというのに名前で呼び合う関係となった……後、なんかついでに空も俺の事を限と呼ぶようになった。

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