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第9話

マーリス目線です。

「……マーリス、お前は自分が何をしたのか理解しているのか」


そう私がアーステルト家当主である、父ガーゼラルに聞かれたのは、サラリアとの婚約破棄から数日後のことだった。

サラリアとの婚約の準備で屋敷から離れていた父だが、屋敷に戻るなり私を呼び出し、私が部屋にはいるなりいきなりそう言ってきたのだ。

父の言葉は、決して大きなものではない。

それでもその言葉には、隠しきれない怒りが込められている。


「父上、何か問題でもありましたでしょうか?」


だが、父の怒りを前にした私は、一切の動揺も覚えていなかった。

それどころか、白々しくも笑顔で父の言葉を聞き返して見せる。


「っ!」


その私の態度に、父は耐えきれなくなったように椅子から立ち上がった。


「答えろマーリス!何故貴様は勝手にサラリア嬢との婚約を破棄した!自分が何をしたのか理解しているのか!」


父の罵声に、丁度部屋の前を通りかかったらしいメイドが息を呑むのが分かる。

それも仕方ないことだろう。

何せ、私でさえ父がここまで感情を露にするのを見たのは久々なのだから。


しかし、父には残念なことにもう私は怒声程度で狼狽えるほど幼くはなかった。


「そんなこと、決まっているじゃないですか父上。このアーステルト家をもっと繁栄させるためですよ」


私は笑顔を崩すこと無く父に向かってそう告げる。

それは紛れもない私の本心。

辺境伯との伝手を得ることが出来れば、アーステルト家の力は益々大きいものとなる。

辺境伯の有する常備軍という力には、それだけの価値があるのだ。


「ふざけるな!そんな馬鹿げた考えで、サラリア嬢との婚約を破棄したと言いたいのか!」


けれど、その私の考えが父に伝わることはなかった。

私の考えを聞いた父は、激怒して怒声を上げる。

私の独断で婚約破棄したことを、絶対に許さないと言いたげに。


怒りを隠そうともしない目でこちらを見る父。

そこには、伯爵家の当主であるだけのたしかな威圧があったが、それに私が気圧されることはなかった。

代わりに私が父に覚えたのは、自身よりも格下だと談じた相手に向ける嘲り。


「でしたら、父上に今から何かできるのですか?」


次の瞬間、その嘲りをありありと込めた私の言葉に、父から今までの勢いが消え去ることになった……

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