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ここは公爵家らしい



起きたら朝だった。

動けないから本当に朝かなんて判断つかないが、木漏れ出る陽光からみて日を跨いだのは間違いないだろう。


まさかステータスを確認する途中で気絶するとはね。スキルを使ったせいか?


どうやら自分が横たわったベッドから少し離れた先に女性が一人いるようだ。昨日乳をくれた人じゃないな。

黄色く輝く髪が結われており、白黒に整った衣服を身につけているくらいしか分からない。もう少し近づいてくれれば視認出来るだろうか。


今日も絶賛だるい。生まれ変わっても前世のようにこの苦しみを引き継ぐだなんて、詐欺もいいところだ。

まさかこの世界では誰もが俺と同じ状態…なんてことはないよな。死にたい。


昨日のアレ…とりあえずステータス画面と呼ぶか。

すぐに気を失ったから詳細は覚えていないが、確か名前と能力値、スキルが羅列されていたな。称号もあったような気がする。


名前はなんとか覚えている。

アルフレート・ブロンベルク。


俺の異世界知識(ラノベ産)は乏しいが、名字があるという事はやはり貴族なのだろう。平民に名字がないのはテンプレだった筈である。


スキルに関しては確認する前に気絶したから、今は差し当たり能力値の数字だけ思い出そう。

そう、全部漏れなく「1」になっていた。貧弱にも程がある。


でも気になるのが、その横に括弧があり、中に数字が表記されていた。

転生前にあの部屋で見た能力値だと、括弧の中には「成長指数」が横線で示されているだけで、それに関しては最大になるまで振っていた筈だ。


それが消えて、只の数字になっている。うろ覚えだがむしろあの括弧内の数値こそが、元々あの部屋で設定した能力値だった、と思う。


それがなぜ1に?

もしかして赤子の身体は弱体補正がかかり、基本この数値なのか。成長するまでは元の能力値に戻らないとか。


だとしたらなんて死にやすい世界だ。

HPが1だなんて、机の角にぶつかっただけで死んでしまうに違いない。絶望した。


い、いや… HPというのが実は表皮的な何かで、ゼロになるまでは本体に傷がつかない防護膜だったという説も残っている。

だって俺、こんなに苦しくて辛いのにHPが減ってなかったんだもの!体力はガリガリ削られているのに変化がないって何の為にあるんだよ、HP。


それにしても、MPがゼロになっていた。これはやはり、スキルを使った事によってMPが消費されたとみるべきか。


最初に使ったときはまだマシだったが、2回目に使ったときは尋常じゃなくキツくなって強制的に気絶してしまった。

MPが枯渇したら起きる現象なのかも知れない。


そう仮定すると、今の所《解析》は一度しか使えず、後は回復を待つしかなさそうだ。慎重に使用しないとな。


しばらくすると、もう一人の昨日いたらしき女性がノックをしてこの部屋に入室した。そういえばお腹すいたぞ。


「おぎゃー」


おっと、メシを催促しようと思ったがずいぶん気の抜けた泣き声になってしまった。

仕方ないよね。今日も体調最悪なんだもの。


「あら、起きていたのね。静かだから寝ているかと思ったわ。今のうちにご飯にしましょうか」


「うー」


伝わったかは微妙だが、結果的にありつけた。けぷ。


さっき起きたばかりなのにまた眠くなってきた。瞼が重い…そういえば赤ん坊って睡眠時間長いんだっけ。これは堪え難い…



それから起きては寝てを繰り返し、約2週間が経過した、と思う。

寝ている時間の方が長く、部屋に居ると僅かな日光しか漏れない為時間感覚が完全に狂っている。


その間思考が鈍くて生理的な行動しか取れなかった。初日に色々と悩めた事すら奇跡的だったかも知れない。

だが徐々に思考がクリアになって来たし、ようやく身じろぎ程度には動けるようになった。

最近は手足を持ち上げる練習ばかりしている。感覚としてはリハビリだ。


日を追う毎に視界がほんの少し良好になっている。

部屋で偶に漏れてくる断片的な会話も幾らか聴き取り易くなった。スキルの恩恵で言語的には理解出来ても、耳慣れない所為か内容を把握しづらいので必死にヒーリングに励んでいる。


ちなみに俺が最初に目覚めた日の前日が、どうやら産んでもらった日らしい。

やはりというか、話の流れからして今も目の前で乳を飲ませてくれている女性は俺の母親だったようだ。よく世話をしてくれるもう一人の女性は話し方と服装からメイドだと判明。


それにしても授乳するとすぐに眠くなる。理性を取り戻した事で夜泣きや癇癪は減ったが、未だ睡眠欲求には抗えない。


折角なら久し振りにスキルを使ってから寝たいな。対象は手っ取り早く正面に見える母親でいいか。

きっと寝たら回復するだろうし、使ってから寝よう。


(解析)


=======================


名前 エリザベート・ブロンベルク

種族 人族

性別 女

職業 魔導師 

年齢 19

LV:31


HP:431

MP:1145

筋力:132

魔力:387

耐久:94

敏捷:156

器用:208

運:26


【ユニークスキル】

《火炎強化》


【スキル】

火魔法Lv6 風魔法Lv4 光魔法Lv2 生活魔法

魔力操作Lv4 魔力感知Lv3 身体強化Lv1 

鷹の目Lv2 棒術Lv3 体術Lv1 回避Lv2 

料理Lv1

火耐性3 毒耐性1


【称号】

ドルレアン侯爵家 ブロンベルク公爵家 炎の戦姫 


=======================


お、やはり1回だけなら気絶しないようだ。それでもキツいし、途端に眠気が増したが。


目が悪い筈なのに不思議とこの画面だけははっきりと認識できる。

反応からして母親にも見えていない様だし、このプレートの様なものは実際に顕現している訳ではないのだろう。

書かれている文字は明らかに知らない言語だったが、なぜか内容が理解出来た。


名字が俺のと同じという事は、この人が本当に母親なのは確定だ。

胸元に届きそうな、ウェーブした亜麻色の髪。近くで見るとずいぶん顔が整っている気がする。

というか十代って嘘だろ?


こんな子が母であっていいのか。前世の自分より一回りも若いぞ。

母乳をくれる以上親戚という可能性は低いだろうが。


こうはっきりと年齢を知ってしまうと、毎回食事の際に犯罪者の気分を味わってしまう。視力が悪くてよかったかも知れない。


ん、下にもブロンベルクって… え、公爵!?


こ、公爵家なのかよ!

いや、知らないけど確かそれって王族の次に一番偉い貴族だった気がする。ポイント消費べらぼうに高かったから覚えているよ。


えぇ…。男爵家かよくて伯爵家だと思ってたし、それでよかったのに…。

贅沢な生活は出来そうだけど、権力が大き過ぎるのも不自由なしがらみが多そうだな。貴族って嫌なイメージあるし。


なんだか拾っただけの宝くじに当たってしまった気分だな。あ、そうか運か。

もしかして能力値で運の数値をかなり上げたからこんな家庭に飛ばされたのでしょうか。


そんな裏技ありなのか。だとしても嬉しくない。


「あぅー」


「アルフどうしました?お目々がクリクリになったかと思ったら今度は細めてしまって。うーん、あまり笑わないようだけど感情豊かなのかしら」


かわいいわねー、という母上(仮)を横目に、なんとなく気品を感じてしまい、生まれて来てすみませんという気持ちになるのだった。


彼女の称号にドルレアン侯爵ってのもあったから、嫁に来る前は侯爵令嬢だったのだろうか。


気を取り直して俺はこの人のステータスを眺める。

LV31が高いのか低いのか分からないが、なんとなく強いと思ってしまう。


俺のステータスはオール1だから、この人との差は100倍以上ある事になる。触っただけで殺されてもおかしくない。


レベルが上がるとこんなにも能力値が上がるのかね?インフレを感じる。


この人、もう母さんでいいか、は魔法特化みたいだ。スキル構成も火魔法に偏っているし、MPと魔力がかなり多い。


魔法、見てみたいな。

母さん魔法使って見せてくれ。火は室内でら無理かもだけど、光魔法とかならいけるだろ?


「うー、うー」


「うーん?今度はどうしたのかしら。今度はおトイレ?ふふ」


う、トイレと言われて催してしまった。


…赤子の体では自制が効かず、お漏らししてしまった。

不味いぞ、このパターンはあれをやられる。


「あら、出したみたい!たくさん出たわね。リューネ。この子のオシメを取り替えて頂戴〜」


「はぁい!アルフレート坊っちゃま、失礼しますね。さあ脱ぎ脱ぎしましょう」


「あぁぁう〜!?」


しまった。身体が動かない所為でこの女の魔の手を防げない。

抵抗あえなく、すっぽんぽんにされてしまった。


寝ているうちならともかく起きている時にやられると恥ずかしいんだよな…理性が復活しつつある今は尚更だ。生後間もないのに早くも尊厳を失った気分だ。


羞恥心に耐えながら、オムツらしきごわごわした布を取り替えられる。


「あらあら、なんだか恥ずかしがっているみたいねー、フリードのときはケロリとしたものだったのに」


「はい、エリザ様。アルフレート様には理知的な雰囲気があるように思います。将来はきっと聡明な方に育つに違いありません!」


「まあ、嬉しいわ。フリードは腕白だから元気があっていいのですが、こういう大人しい子も欲しかったのよね」


くっ…、この屈辱をこれから何度受ければよいのだろう。

赤ん坊も楽ではないな。


ふて寝してやる!



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