きゅう 年齢
「おい、ユウへグ」
「ユウと呼んでくれた方が、可憐なオトメ的には嬉しいですね」
「そうか。おい、ユウへグ」
彼女がムッとした。
何故だろう。
「ユウへグって名前、言いづらくありませんか?」
「名前に言いづらいもクソもあるかよ。何度も呼んでりゃ言い慣れてくるもんだろ」
「少なくともラステムという名前は言いづらいと思います」
これは反撃なのだろうか。
ムッとさせてしまったことに対する反撃なのだろうか。
「ラステムという名前は百億万回言っても慣れません」
やはり反撃っぽい。
しかしそうだとしても、可愛いもんだぜ。
所詮はまだ子供だな。
まだまだ子供だな。
「そういうワケで、今日から私はあなたのことを、クソ野郎と呼ぶことにします」
「そんな『そういうワケ』があってたまるか、クソガキ」
急に鋭利な攻撃が飛んできた。
これだから油断ならねえ。
「まあ、それは冗談としても、やっぱりユウって呼んでくれた方が嬉しいのは事実です。言いやすい言いにくい、以前に」
「どうしてだよ? そういうもんなのか?」
「そういうもんです、クソ野郎」
「『それは冗談としても』が冗談だったのかよ」
「間違えました。そういうもんです、ラステムさん」
半分が故意であることに間違いはなさそうだった。
意図的に間違えやがって。
「間違っても心的距離を縮めたいとか、そういうのではないです」
「そこは間違ってほしかった。と、少しだけ思ってしまう自分が情けないぜ」
こんなやつと心的距離を縮めてしまったら、殺されかねない。
料理に毒でも盛られそうだ。
暗殺されそうだ。
「私がユウと呼ばれたいのは、単に響きの問題です」
「響き」
「ユウの方が、良い響きだと思うのです」
良い響き、か。
そんなにまで気にするものなのか?
その感覚が分からないのは、俺が男だからなのか、大人だからなのか。
もしくはその両方が故か。
それが分からなかった。
「おじさんだからじゃないですか?」
「俺はまだ二十七だ」
「おじさんじゃないですか。何言ってるんですか」
マジかよ。
この年齢の子にしてみれば、二十七の俺は、もうおじさんなのか?
驚愕……。
いや、待て。
この年っていうか、こいつ、今、いくつだっけ。
「九十九です」
「いや、絶対にウソだ」
そんなぶっ飛んだ心身関係あるか。
「もちろんウソです。私は九です。九だと思っていると思います」
え、九?
お前、九なの?
「初耳でしたか」
「初耳だし、予想だにしていない数字だった」
十は超えていると思っていた。
「老け顔と言いたいのですね」
「お前のその年齢で老け顔を気にするな」
九でも十代でも老けてはいないだろ。
二十代以上を敵に回すような発言だったぞ。
「クソ野郎が敵から守ってくれることを信じております」
「『間違えました』が間違いだったのかよ」




