なな 適度
ユウへグは働き者であった。
そのあまりの超人ぶりに、『こいつ、もしかしたら、技能はズバ抜けてあるものの、それとやる気は別の話だ、系の人間なのではないか?』と思ったりもしたのだけれど、全然そんなことはなく、むしろ、仕事人間。
掃除は欠かさず、料理は手を抜かず、であった。
むしろこっちが申し訳なくなってくる。
「むしろ私は、休む方がニガテですね」
と言う彼女。
「何もしてないと、なんだか落ち着かなくって」
「へえ。そういうもんか」
「そういうもんです」
ほうきを片手に頷く。
俺は知らなかったが、掃除というやつは定期的にしないといけないらしい。
掃除って大変なんだな。
「いえいえ、大変ではないですよ?」
「超人には言ってねえよ」
「誰が超人ですか」
「お前だ、ユウへグ」
今さっき手に取ったばかりのほうきをもう仕舞って、ゴロリとくつろいでいる、そこのお前だ。
「可憐なオトメに失礼な言いぐさですね」
「マコトに申し訳ない限りだが、俺はお前のことを可憐なオトメだとは思っていない」
「なんと」
「小生意気なガキンチョだと思ってはいる」
「失礼ですね。プンプン」
怒ってしまった。
怒らせてしまった。
そんな怒り方があるか。
「いや、とにかく、なんだ。あー、とにかく、掃除お疲れ様」
「いえいえ」
「休んでてくれ」
「むしろ私は、休む方がニガテですね」
「じゃあ休むな」
「死ねと言うのですか」
難しいやつだ……。
適度に身体動かして、適度に休憩、それでいいじゃねえか。
「適度って、それこそ難しいことじゃないですか」
「え? ああ、まあ、それもそうだけど」
「お釣りを適度にもらうのって、ホント難しいですよね」
「それは難易度に関わらず頑張れ」
そんなことでは、間違っても買い物は任せられねえな。
買い物をするたびに、任せるたびに、損をすることになってしまう。
それはいやだ。
「そこを何とか。次こそ、次こそはちゃんと、完遂してみせます」
懇願してきた。
そこまで例のあのミスに未練があったのか。
なるほど、自分を正そうとするその精神、評価してやらない手はない。
俺はあの時のように、ポケットから銀貨を取り出す。
「これでジャガイモを……」
「買ってきました」
買ってきたらしい。
相変わらず、仕事は速い。
俺が瞬きをした直後には、彼女の手にジャガイモが乗っていた。
まさに、目にも留まらぬハヤワザ。
しかし今注目すべき点は、そこではない。
「どうです?」
今大事なのは、彼女が適度なお釣りを受け取れているかどうかだ。
果たして、その結果は……。
「おい」
「はい?」
「お釣りが多いぞ。どういうことだ」
「ありゃりゃ」
やはり彼女にとって、適度というのは難しいっぽい。




