挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
奴隷の少女がなんだか凄い。 作者:戯画葉異図
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

3/20

さん 凄い

「私の名前は奴隷ちゃんです」

「いや、絶対にウソだ」

 そんなワケあるか。

「もちろんウソです。私の名前はユウヘグって言います。ユウって呼んでくれたら嬉しいと思っていると思います」

「そうか。俺はラステムっていう名前だ。ラステムって呼んでくれ」

「分かりました。ラス」

 どうも俺は、奴隷という言葉の意味をはき違えていたらしい。

 もしくは、お手伝いちゃんという言葉の。

(誰がお手伝いちゃんですか)

(そのやり取りはさっきやったばっかりだ)

 たぶん、そうじゃなきゃ、そうじゃない限り、この事態に説明がつかない。

 生意気が過ぎている。

 生意気が過ぎ過ぎている。

「冗談ですよ。ラステムさん。ラステムさんです。ええ、あなたはラステムさんであります。ラステムさん以外の何者でもありません。ラステム、ラステム、ラステム。良い名前ですね。このラステム風情め」

 なんだ、冗談だったのか。

 そうか、そうか、まあ、この年齢の子供だからな、冗談の一つや二つ、言いたくなるのかもしれない。

 言いたくなる年頃なのかもしれない。

 ならば俺は、寛容で優しさに満ち満ちたこの俺は、笑ってやるのが正解か。

 いや、そうではなく。

 そうではなく。

 そうではなく。

 そうではなく。

「おい、お前、最後何つった」

「良い名前ですねと言いました。それ以外には有り得ません。良い名前ですねと言ったんです」

「本当か?」

「ユウへグの名前に誓って、本当です」

 だ、そうだ。

 ユウへグの名前がどれほど重いものなのかを、俺は知らないが。

 きっと、重いんだろう。

 であるならば俺は、聞き違いをしたっぽい。

 いけない、いけない。

 ただの早とちりだったか。

 風情?

 とか、なんとか、そんなことを言われたような気がしてしまった。

 言うはずないよな、初対面の大人に向かって、そんなこと。

 こんな子供だし。

「で、君、ええと、ユウ」

「はいはい、何でしょう」

「質問に答えてくれ」

「何なりとお訊きください」

「料理はできる?」

「はい、できます」

「洗濯は?」

「つつがなく」

「掃除とかはどうだ?」

「無問題です」

 なんとまあ。

「へえ、凄いね、君。その年齢で」

 俺のこの年の頃は、せいぜい、鼻水を垂らすしか能がなかったような。

 今の子供って、しっかりしとる。

「前の主人の下で、ほとんど覚えました、そういうのは」

 前の主人。

 ああ、そう言えば、そうだった。

 そうだった。

 スッカリ忘れていた。

「亡くなられたんだよな」

 単なる持病――と、俺は聞いている。

「はい。でも、寿命と言えば、寿命でした。とても残念です」

「だよな。気持ちは分かる。俺も、親とは幼い自分に死に別れて、しばらくは泣いていたよ」

「あんなにも広い家だったのに、残念です」

「不謹慎」

 俺の共感を返せ。

 言い直す必要、どこにもなかったろ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ