じゅうしち リベンジ
散歩に出かけるなんて言ったって、ここら辺には観光名所なんてものもないので、街の中を範囲として、ただブラブラするだけに留まった。
寂しいと言えば寂しいが、雑談に興じれると言えば聞こえは良い。
俺と彼女の仲である。
その方がむしろ楽しいだろう。
「私は綺麗なものが見たかったです」
あまり楽しそうではなかった。
どころか、不満げである。
「そう言うなって。金、ないんだから」
「海、行きましょうよ、海。海を見るだけならタダですよ」
「ここから一番近い海岸でも十キロメートルある。歩く距離じゃねえ」
「走りましょう」
マラソンかよ。
お前はそれが余裕でできるのかもしれんが、俺にそんな強靭な足腰はない。
「貧弱ですねえ」
「九歳児に言われたくはねえよ、と、言おうと思ったが、お前には言われてもいい気がしている」
超人に何を言われてもな。
ああ、そうですね、で頷ける。
ましてや、俺と彼女なのだし。
一日中家に引きこもっている俺と、テレポーテーションに匹敵するレベルの身体能力を持つ彼女。
うむ、差は歴然だ。
否定の余地はない。
「それでいいんですか、いい大人め」
「それでいいんだよ、悪い子供め」
「私はいい子です。いい子ちゃんです」
「いや、絶対にウソだ」
そんなワケあるか。
……と、いったようなやり取りも、もう何回目だったかな。
コナれてきたもんだぜ。
「百回目ですかね」
「いや、そこは百億万回目って言えよ。お前の大好きな数字だろ」
向こうがコナれていなかった。
「会話って難しいですよね」
「うん? ああ、そうだな」
「特に私は、歩きながら喋るのができません」
「いやいや、二つのことが同時にできない性分にしても程がある」
それはできてくれ。
「歩きながらラステムさんの悪口を言うことならできますよ」
「いやいやいや、どういうことだ。俺への悪口はもはや『喋る』よりも単純なことだというのか」
そして、俺は何回『いや』と口にすればいいのだ。
何回突っ込めばいいのだ。
「百億万回ですかね」
そんな風にして、高速リベンジが果たされた散歩であった。




