じゅうさん 良い人間を
「ラステムさんって、いつ死ぬんですかね」
「急すぎるだろ。どうした、寝違えたか」
寝違えて、そのはずみで頭のネジが飛んじまったか。
飛び立っちまったか。
「だって人間、いつ死ぬか分からないじゃないですか」
「そりゃあ、そうだけど。だからどうしたんだよ、急に」
「私、考えたんです」
「考えた? ほほう、何を?」
こいつ、考えるなんて高等な芸当ができたのか。
てっきり、条件反射だけで生きてるようなやつかと思ってたぜ。
「ラステムさんに対する暴言に関して言えば、ほぼ条件反射によるものです」
「どんな訓練を受けてきたんだ。俺を敵視しすぎだろ」
「ずっと隠していましたが、実は私、ラステム暗殺し隊のメンバーなんです」
「いや、絶対にウソだ」
そんなワケあるか。
なんかグループ名もダサいし。
なんだ、ラステム暗殺し隊って。
「『し隊』の部分が『死体』とかかってます」
「止めろ、かけるな」
ダサさに拍車がかかっている。
「もちろん冗談です」
「知ってた」
「話を戻して、私、考えたんです」
「考えた? ほほう、何を?」
こいつ、考えるなんて高等な芸当ができたのか。
てっきり、条件反射だけで生きてるようなやつかと思ってたぜ。
と、一応、思考過程も戻しておく。
決して、罵詈雑言をくり返したかったワケではない。
「その思考過程が筒抜けですよ」
「まあまあ、それはいいから、続けてくれ」
「はい……。で、ええと、何でしたっけ」
「忘れるなよ」
「ああ、そうでした。人間、いつ死ぬか分からないじゃないですか」
「うむ」
「もしかしたら私だって、ラステムさんだって、明日死ぬかもしれないじゃないですか」
「うむ」
「そこで私は思います。あれ、私、もしも明日死んだら、私という人間は今後、こんな意地の悪いやつだったという説明で後世に伝えられてしまうのでは、と」
「うむ」
「こんなって言うな」
「お前が言ったんだ」
「そうでした。それで、こうも思うワケです。あれ、だったら、良い人間として生きた方が、良いのでは? と」
今更かよ。
生まれ落ちた瞬間から良い人間でいてほしかったよ、お前には。
「じゃあ、なんだ、お前はこれから、良い人間を目指すのか? 更生でもするのか?」
「はい。します」
おお。
そんな決意をする日が来るとは。
我が子かのごとく嬉しいぜ。
「そんなワケで、百億万年後から頑張りますね」
うむ、知ってた。




