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じゅういち ペコリ

 そんなこんなで訪れたのは、なんとも意外なことに、服屋であった。


「マジかよ」


「マジです」


「マジなのかよ」


「マジなのです」


 こいつ、衣装のこととか気にするのか。


 確かに今着ているのは、彼女がもともと持っていたものの内の一つで、女性らしいとは言えなが……。


 それにしたって、意外だ。


 普段の言動と、欲しいものリストのランキングとの間の結びつきが薄い。


 こいつならマジで、年不相応な本なり何なりが欲しいと言い出しかねないのだし。


「可憐なオトメに失礼ですね」


「分かった分かった。それはもう、分かったから、ほら、選べよ。おじさんにはどれがお洒落なのかサッパリ分かんねえ」


「これをお願いします」


 はや。


 いやいやいや、はや。


 もう決めたのかよ。


 こんなトントン拍子でいいのか。


「いいんです」


「そうか……」


 彼女が選んだのは、割かし明るい紺の上着だった。


 可愛らしいというより、ボーイッシュなチョイスである。


 そこに関して言えば、彼女らしくはあった。


「紺色が好きなのか?」


「四番目に好きです」


「微妙な順位だな。でもこれがいいのか」


「はい、これがいいのです。ごちそうさまです」


 店員に金を払った後で、そう言う彼女。


 食べ物かよ。


「あ、私は、服は食べない派ですので」


「食べる派の存在をほのめかすな。そんな派閥は存在しない」


 いてたまるか。


「それはそうとして、カッコよくありません?」


「んあ? ああ、うん、カッコいいよ。カッコいいと思うよ」


「生返事ですね」


「正直、服のセンスは壊滅的にないんだ」


 生まれてこのかた、ファッションというものを意識したことのない俺に、『カッコよくないですか?』は、拒絶反応を起こしかねないキラークエスチョンであった。


 キラークエスチョン。


 質問に殺される。


「質問に殺されるって何ですか」


「さあな」


「生返事ですね」


「俺はそういう性格なんだよ」


 こいつが生意気を武器にするというのなら、俺は生返事を武器とするのだ。


 生意気、対、生返事。


 ……両者向き合っても、熱烈な戦いは起きそうになかった。


「改めて」


 不意に彼女が、俺と横並びで通りを歩いていた彼女が、俺の前に立って、向き合うような形になった。


 そして言う。


「ありがとうございました。ペコリ」

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