もふナビは主を気遣い、紅一点は主を憂う
評価、いいね、ブクマ、誤字報告ありがとうございます。
『デリカシーのない人ね』
紅一点黒毛スレイプニルのポニーさんが、ブッフーと鼻息荒くおっしゃった。
どうもピアは久し振りの深遠の森の狩りをすごく楽しみにしてたみたいで、更に戦闘経験のない勇者の俺を守るんだー!と気合いも入れてたみたいだ。
それが蓋を開けると結界反射で今のところ無双状態、自分も結界に守られている。
「あー、俺ちょっと疲れたからさ、休憩してるからポニーと一緒にその辺見回って来てくれるか?」
気まずげに聞いてみた。
すると暫く考えてたみたいだけど、狩りの欲求に勝てなかったんだろうソワソワしながら
「じゃあちょっと行ってくるわっ」
と言って鞍を掴んで華麗にポニーに跨がった。
そして手綱を軽く握ってポニーの腹を軽く蹴ると心得たように一つ嘶き、大木の根や岩を物ともせず駆けて行った。
ピアたちの姿が見えなくなるまで見送ると「ハァ~~~」と肺から空気がなくなるまで吐き出した。
そうしてるとカゴ鞄から出てきたソックスが俺の顔を覗きこんできた。
『ケン、なんか落ち込んでるっスか?』
「ん~~~ん?どうだろう…?」
曖昧に答えると肉球を俺の頬に当てて小首をかしげた。
『ケンが悪いわけじゃないっスよ?』
と慰めてくれた。
「心配してくれたのか?ありがとな、相棒」
礼を言うと照れて顔を洗う。
相棒っていうのを気に入ってるらしい。かわいいな。
俺はソックスを抱き抱えそのお腹に顔を埋めて息を吸い込んだ。
嫌がらず喉をゴロゴロ鳴らしているのがまたかわいい。癒される。
俺自身、自分の気持ちがよくわかってない。
なんというか、ピアの勇者への盲目さをもて余してる感じかな?
俺自身自覚がないのにどうしていいかわからない。
ハッキリ言えば今は異世界に慣れてこの国を出ることで精一杯だ。
万が一この先も一緒に旅を続けるのならあの盲目さは俺にとって邪魔でしかない。
あ~~~~~!
ちょっとイライラしてソックスの腹に顔を擦りつける。
もふもふもふもふもふもふ…
「よしっ!」
考えてもしょうがない。ピアの心の持ちようだからな。
変われるかどうかは本人次第だもんなっ。
俺は考えに区切りをつけて、別のことに思考を向けることにした。
…体感的に森に入って2、3時間ってとこかな。
ピアが戻ってきてからもう少しだけ進むか、初日だけにこの辺で夜営先を見つけるかだな。
まぁ、要相談ってことで。ずっと気になってた俺のマジックバッグの中身を見てみよう。
僅かの間に結構狩れたよな。俺は何もしてないけど。
マジックバッグは触りながら中身を考えるとリストが頭に浮かぶらしい。
ソックスも一緒に覗きこんでるが、従魔だから見えるんだと。便利。
ついでに、基本俺しか出し入れできないようになってるけど、俺が許可すればその人も利用できるらしい。従魔は自動で出来るって。
そしてリストは…
「はぁ…」
叫びそうになって口を慌てて両手でふさいだ。
あっぶねぇ。叫びそうになったのも頷けるラインナップだ。まあ見てくれ。
はいこちら、ドン!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
角ウサギ × 13
角キツネ × 11
ビッグボア × 7
ビッグアント× 4
オーク × 2
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
まぁ、魔物はこのぐらいだろう。あとは何でも屋で買った物と農家で買った物。
ここまではいいんだ。
これ以外、要するに異世界から持ち込んだ、使っても補充される物。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
豆腐(割引品) × 1
大根 × 1
青ネギ × 1
メモ帳 × 1
レポート用紙 × 1
ノート × 2
シャープペンシル × 2
〃 替芯ケース × 1
鉛筆 × 3
消しゴム × 1
ボールペン × 2
〃 替芯ケース × 1
赤ボールペン × 1
3色ボールペン × 1
20cm定規 × 1
ハサミ × 1
カッターナイフ × 1
〃 替刃ケース × 1
スティックのり × 1
ポケットティッシュ × 3
ハンドタオル × 2
簡易救急セット × 1
簡易裁縫道具 × 1
歯磨き洗面器セット × 1
飴フルーツミックス袋× 1
粒チョコ × 5
ミントタブレットケース × 1
ペットボトルコーラ × 1
スマートフォン(時計・計算機のみ)× 1
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
豆腐とか入ってたのか。
それにしてもマジックバッグになる前も結構入ってたな。
女子の持ち物みたいとか言わない。備えあれば憂いなしって言うだろっ。
「なあソックス、この世界って紙とかある?」
『まだないっスね。羊皮紙か木の板なんかを使ってるっス。そもそもが識字率がそんなにないっス』
ってことはこれだけでもかなり便利だな、有難い。
それにちょっとしたお菓子もある。
「ソックスって飴とか舐めれるのか?」
『くれるっスか?』
すごく嬉しそうなんで、袋からオレンジ味の飴をあげてみた。
両前足で挟み持ってペロッと舐めたら電流が走ったようにビビッとなって目を見開いて、それから飴を口の中に放り込んだ。カラン、コロンと音をたて両頬に肉球を押しあてうっとり目を細めてる。
かわいい。癒しだな。
さて、そろそろ現実逃避はやめようか、俺。
残りの中身はこれです。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
財布(中身をこの世界用に試算済)
白金貨 173枚
大金貨 8枚
金貨 6枚
銀貨 3枚
銅貨 5枚
鉄貨 9枚
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「…………」
…これって、預貯金やら祖父母から相続したマンションやらも入ってるよな…?
そして更に使ったら補充されるんだよな…?
え?なに?やっぱり現実逃避してもいいかな…?
飴を舐めながら俺の様子を盗み見てるソックスにも気付かず頭をかきむしっていた。
(やっぱりケンも混乱してるっスね。オレも取り乱さなかっただけ褒めて欲しいっスよ。
この世界はケンの前の世界での人生を奪ったようなもんスけど、やり過ぎじゃないっスかね。
ケンが怠惰な人間なら本来の目的も果たさずにどっかに引きこもってもおかしくないっスよ)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その頃のピアとポニーはオークの集落を壊滅していた。
「森の出口に割りと近かったから見つけれてよかったな」
返り血まみれになりながらも嬉しそうにポニーの首元をポンポンたたく。
「ご機嫌は直ったみたいね」と言うように鼻頭をピアに押しあてる。
ピアは顔についた返り血を腕で拭いながらため息をついた。
「それにしてもケンはすごいよな、俺も負けてらんねぇ」
こうやって言葉が通じないのにポニーに話しかけるのも常である。
「量が多すぎるから、オークジェネラルだけ持って戻るか」
見渡すと20頭余りのオークが倒れていた。その中で一回り大きく簡単な皮鎧を着けてるオークジェネラルをマジックバッグに突っ込んだ。この集落はまだ小規模だったようだ。
「もう戻んねぇと夜営と晩飯の準備があるしな。っても夜営はヤキさんにもらったテントの魔導具だからなにもしなくていいんだけどな。晩飯はケンが作るって言ってたし」
独り喋り続けている主を見ながらポニーは思う。
(このお人好しな主があの聖獣の主にいいようにされないよう、自分がしっかり見守らないと。
だいたい聖獣なんて偉そうなヤツがなんで人様の前に現れてるんだか。幻の珍獣らしくどっかに隠れてたらいいのに)
噛み合ってないけど思い合ってる二人はケンに合流すべく戻っていった。
ありがとうございました。
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先日12分ほどの短編【令嬢は独り言にて黒を纏う】を投稿しました。
サラッと読めると思いますので、よろしければご覧下さい。




