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手助けと偽者

メキメキと集中力を高めていくイルビィ。俺はそれに追いつくくらいの勢いで集中力を高めた。自分の意識のなすがままに、自らの内側に語りかけて更なる力を引き出していく。


自分の中で一滴の雫が落ちる音が響いた時、目を開いてイルビィを捉え、剣を構え直した。そして放つ──


「オワリノ翼──神滅斬り」

「オワリノヨク──シンメツギリ」


神話の時代に虎翼流始まりの剣士が武神を倒す時に放ったとされる剣技。また、都一つを吹き飛ばしたとの逸話ももつ剣技がぶつかり合う。

あまりの衝撃に地面は耐えきれず崩壊して、天候は荒れ狂う。鼓膜を破壊するほどの剣戟が響き渡り続ける。


(まずい、押し負ける)

イルビィの力は尋常でなかった。元々、俺より早く溜めに入っていたのもあるが、本人の努力量、何度も繰り返して限界を高めた成果が俺に重くのしかかって来る。


後一歩で体勢が崩れるというその瞬間、左肩の方から巨大な拳が現れた。その拳は俺と共にイルビィの剣を止めようとしてくれている。間違いなく、ファントムの協力だ。


俺の力とファントムの力が合わさった事によって、イルビィとの力の差が消滅して完全な拮抗状態となった。剣は一縷も動きを見せず、完全に止まっているかの様だった。しかし、両者引く事は出来ない。神滅斬りは中途半端に中断してしまうと反動として所々の、あるいは全身の骨が粉砕してしまうからだ。


そのまま辺りの環境をグチャグチャにしながら至高の剣技による合は続いた。


その拮抗を破ったのは──アレンだった。一瞬の重心移動。反動が返ってこないギリギリを攻めた動きによってイルビィの体勢がほんの少し崩れた。そのイルビィの力が弱まった一瞬の隙にファントムに押さえるのを完全に任せて、イルビィの懐に潜り込んだ。そのまま、依然威力が衰えない神滅斬りを大きな風穴が空いている胴体に滑り込ませた。


──決着は一瞬だった。


神滅斬りはイルビィの胴体を真っ二つに割り、消滅させた。

イルビィを形作っていたオーラが完全に消滅して、その姿は確認出来なくなった。



「……痛ぇ」

神滅斬りの影響で腹の傷がパックリ開いてしまった。血が止めどなく溢れ出す。その上、まだまだ不完全な身体で身の丈以上の力を振り絞って剣技を行ったせいで骨も数本イかれてしまった。


「見事だった。その力があるのならばやはり、その剣を持つに足る」

鬼の状態から戻ったファントムがこちらに近寄って来て、感嘆する様にそう言った。


「そうか、ありがとう」

半分適当にそう言うとファントムが無言でこちらに近付いてきた。


「何だ?」


「『百鬼夜行』」

俺を見下す形になったかと思ったら突然、骸骨剣士を生み出して来た。生み出された骸骨は俺を取り囲んでファントムと同じく見下ろしてくる。


(動けない俺を殺すつもりか!?)

明らかな異物に囲まれている中、大きな傷を晒しているこの状況は生きた心地がしない。神滅斬りの反動で動けねえからもう逃げようがないけれど。


「『生命転写』」

骸骨を生み出したと思ったら今度はそれらを壊して、何かの魔法を行使した。何がしたいんだ、この男は。


「治療出来たぞ。ただ、腹の傷は完全に治せていないから注意しろ」


「何故治したんだ?」

ファントムに俺の治療をする必要は無いはずだ。寧ろ、そのまま見殺しにするのが普通だろう。


「俺達は元々魔王様の魔力で創り上げられた存在だ」

ファントムはポツリとそう呟いて話を始めた。


「故にまた魔力を注がれれば、何度でもこうして復活が出来る。が、俺達はあの時消滅してからこの時まで一度も魔王様に復活して頂けなかった。見限られたんだ」


「……」


「それをあの魔王様の力を持った偽者が俺達を復活させた。他の九位階は魔王様の所へ向かおうと躍起になっているが、多分向かった所で消滅させられるだろう。であるならば、俺達がここでお前達を傷付ける理由がない」

ハーツの事を恨みがましい目で見るファントム。当人からしたら、偽物に復活させられるのは心底嫌だったのだろう。


「他の九位階をいち早く倒す。その為に貴君の力が必要だ。だから、治療した」


「そうか……。つまり、今のところお前は仲間と考えていいんだな」


「ああ。仲間達を止めるのに協力してくれ」


「九位階を仕留め終わったらお前はどうするんだ」

他の九位階は俺達で消滅させる。残ったファントムはどうするのか、気になった。


「俺は貴君の手で消してもらう」


「了解。全部倒したらここで落ち合うぞ」

それだけ言って俺は九位階の下に向かった。


(今いる九位階はファントムを除いて七体。セキグ先輩達が一体片付けてくれたのか。この中で危険度が高いのは前に戦ったデストロイとイティラが戦ったというヴェノム。奴らの周りが特に負傷者が転がっている)


ファントムと視線で会話してヴェノムを任せる。一度戦ったことのあるデストロイの方が優位に戦いを進められると考えたからだ。

ファントムもそれで良い様で直ぐさま向かっていった。


イティラは今も戦っている。その中で九位階と戦っている生徒の方をチラチラと見ている。アイツの重荷を少しでも取り払う為に俺は手助けするとしようか。


──さっきのイルビィに比べたら九位階なんて楽勝さ。

前よりも更に強くなっているイルビィを撃破。

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