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男運のない私、だと思っていたけど……?!  作者: 山之上 舞花
佐野樹里亜は男運が悪い?
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12 縁故入社の真実……

「よく気づいたな。そうだ。関係者と言えば関係者なんだが、うっすい縁だぞ」


 主任は苦い笑いを浮かべながらそう言った。


「うっすいというとティーバッグを三回使って出した紅茶くらいですか」

「そんなわけのわからない例えをしなくてもいいぞ。うちの祖母が初代社長の妻の妹だっただけだから」

「はっ?」


 口をあんぐりと開けて間抜け面をさらした私。暫し呆然としたあと、猛然と主任に食って掛かった。


「それって、現社長と再従兄弟(はとこ)ってことじゃないですか! それのどこがうっすい縁なんですか!」

「社長の血筋じゃないだろう。それにもともと俺は他の会社に入るつもりだったんだ。それなのに裕翔(ゆうと)のやつが『うちに来ないのなら、お前が受けるつもりの会社にないことないことを言って、採用させないようにしてやる』と言ったから、仕方なく入ったんだ」

「バカかー! 社長に見込まれてるのに、なんで他の会社を受けようとしてんのよ」

「だから俺の親父も祖父もこの会社じゃないんだよ。俺が藤川の家を継ぐからって、横暴だろう!」


 主任も怒鳴り返してきたけど、私はその内容に目を見開いた。


「藤川の家を……継ぐ?」

「そうだよ。もともと俺は早田(はやた)の家の次男だったんだ。藤川の家を継いだ祖母の姉に子供が出来なくて、姉妹のどちらかから養子を取るつもりだったのに、親父の代は子供が一人ずつだったんだよ。だから次代の俺たちの中で男兄弟だったうちに話が来たというわけだ」

「早田……(ゆうすけって~~~~~~!)」


 茫然と名前を呟いたけど、主任は私の動揺には気づいていないようで、現社長の横暴ぶりを愚痴っていた。


「藤川の家だって、義祖父(じいさま)五石(いついし)商事に入ってなかったし、義父(ちち)だって顧問弁護士として関わっているが、会社に入ったわけじゃないんだ。なんで、俺ばかり。理不尽だろ」


 憤まんやるかたなしという主任だけど、主任が話してくれている間に私は少し落ち着いてきた。


 でも、本当にどうしてくれようか。いろいろ誤解が絡まり合って変なことになりかかっているじゃない。これを紐解くためには……。


「えーと主任、いろいろご不満があるのは分かりますが、今はそれを収めていただいていいでしょうか。そうでないと話が進まないので」

「ああ、そうだった。すまない」


 素直に謝る主任……は、可愛いと思う。

 じゃなくてーーー。


「えーと、それで、磯貝さんは縁故入社だということでいいんでしょうか」

「磯貝? 縁故入社?」


 私の問いにキョトンとした顔で聞いてくる主任。


「違うんですか? 噂では縁故入社ほど厳しい目で見られると聞いていますけど」

「ああ、それか。それは間違いだけど間違いではないな」


 何やら謎かけのようなことを言われてしまった。主任は肩を竦めて苦笑いを浮かべた。


「そもそも、うちの会社は縁故だからという理由だけでは、入社出来ないんだ」

「えっ? でも主任は……」

「俺もちゃんと入社試験と面接を受けているぞ。逆に縁者だとわかると、意地悪い質問をされたりするんだ。だから磯貝も普通に試験に通っているはずだ」


 自分が来た道だからか、きっぱりと言う主任。それでもまだ私が疑うように見たからか、付け足すように言った。


明華(めいか)は落ちているぞ」

「めいか? さん、ですか」

「あっ、そうか。名前だけじゃわからないな。明華は裕翔の姉だ」

「社長のお姉さんですか。えっ? そんな人が落ちるって……」

「だから身内に厳しいと言っただろ。というか、明華は違う仕事に就きたいと思っていたんだ。それを面接で見抜かれて、ニッコリ笑って『すみません。私のことは落としてくださって結構です。本当にやりたい仕事に就けるように、努力をしたいと思いますので』と、お辞儀をして出て行ったそうだ。おかげで営業部長の息子もうちを受けるのをやめたそうだ」


 はあ~。お偉いさんの家もいろいろあったんだ。


 さて、そうなると後の確認は……。


「それでは、もう一つ聞きますが、課長からの指示ってどんなことですか」

「それは『佐野に仕事を休むようにさせろ』だ」


 やはりそこは思った通りだったということね。


「現に、佐野が休んだことで二人はボロを出してきているからな」

「……はあ~?」


 考えた通りだったと思った私は主任の言葉を聞き逃しそうになって、思いっきり不審な声を出した。


「だからな、昨日伊崎と磯貝は精彩を欠いてミスを連発していたんだ。大きなものではなかったが、今までの二人には見られないことだった。そう考えると普段から佐野にフォローをされていたと考えられるだろう」

「そう、課長は言ったんですか」

「そうだ。だから昨日、もし佐野と会えるのなら、どんな手を使ってもいいから、もう一日出勤できないようにしてくれと言われて……」


 私が冷たい視線を向けたからか、主任の言葉尻の声が小さくなっていった。


「なんでそうなるんですか! というか、言ってくれたらいい話でしたよね」

「課長に口止めされてたんだよ」


 ということは、課長には主任と私の間に何があったかバレていると、いうことじゃないかー!


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