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クロノス・ギア〜故郷を焼かれた俺は、魔獣の時間を喰らって強くなる。ただし、喰らうほど人間ではなくなっていく〜  作者: 錆びた歯車


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序章:崩壊の調べ :【1】 黄金の丘と、二人の絆

大陸の東の最果て。


険しい山脈に抱かれた開拓村『エミール』の朝は、まだ風すら眠っているかのように静まり返っていた。


「おい、ルカ! 遅いぞ、置いてっちゃうからな!」


朝露に濡れた草を一歩一歩踏みしめながら、16歳のアレンは振り返って快活に笑った。


アレンは癖のある茶髪を風に揺らしながら、軽々と坂を駆け上がっていく。農作業で鍛えた体は細身でも力強い。


彼の瞳には、この最果ての村の空と同じ、濁りのない真っ直ぐな光が宿っていた。


「待ってよ、アレン……! 君、足が速すぎるんだよ。猟師のじいさんたちに鍛えられてるからって、僕の体力を基準にしてくれないと困る……っ」


数メートル後ろの坂道で、息を切らしながら必死に足を動かしているのが、幼馴染のルカだった。


手には使い古された木の杖が握られている。


杖の表面には、読めない文字のような細かい刻みが一列に並んでいる。


いつだったか、じいさんが「お守りだ」と言ってルカにくれたものだ。


少し大きめの開拓着に、短く切った髪。


初めて会う者は決まって少年と見間違える少女ルカ。


使える魔法は、小さな火を熾す炎魔術、突風を起こす風魔術、そして掠り傷を癒やす程度の小さな回復魔法だけ。


それでもルカは魔法を磨き続けてきた。


誰よりも無鉄砲なアレンの背中を、少しでも支えるために。


泥だらけになって駆け回り、一緒に木に登り、喧嘩をしては笑い合ってきた。


ルカは幼馴染で、家族だった。


……なのに。


風に前髪を耳へかける何気ない仕草に、ふと見せる柔らかな笑顔に、胸の奥が小さくざわつく。


「ほら、つかまれ。あと少しだ。」


アレンが右手を差し出す。


ルカはいつものようにその手を握る。


「……?」


「いや、なんでもない。」


アレンは慌てて視線を逸らし、そのままぐいっとルカを引き上げる。


「ほら、着いたぞ。」


「ありがとう、アレン。」


無邪気に笑うルカから、思わず目を逸らした。


(……今日は、どうかしてる。)


アレンの強い力に引っ張られるようにして、ようやく丘の頂上へと辿り着いた。


そこは、村の誰もが不気味がって近寄らない、風変わりな高台だった。


緑豊かな草原の真ん中、地面から直接、苔に覆われた『巨大な金属の歯車』のような奇妙な物体がぽっかりと突き出している。


いかなる鍛冶職人も作ったことのない、未知の結晶質の金属。


地面の上に出ているのは、巨大な円のちょうど上半分だけだ。


残りの半分は、土の中に眠っている。


子供の頃、二人で根元を掘ってみたことがある。


けれど少し掘ったところで、木のスコップの先が、固い壁のような岩盤にぶつかって止まった。


叩いてみると、岩とは思えない、金属のような鈍い音が返ってきた。


歯車の縁は、その壁の奥へと呑み込まれるように続いていた。


村の人々はそれを「悪魔の悪戯」だの「呪われた遺物」だのと呼んでいたが、アレンとルカにとっては、幼い頃から二人だけの秘密の隠れ家だった。


「はぁ、はぁ……やっぱり、ここからの景色は最高だね」


ルカは歯車の平らな面に腰掛け、木の杖を膝に横たえながら、眼下に広がるエミール村の全景を見渡した。


幾重にも重なる木造の家々、のんびりと立ち上る炊飯の煙。


平和そのものの光景。


アレンは苔むした歯車の硬い表面をそっと撫でながら、自分の手のひらを見つめた。


手のひらには、毎日の農作業や薪割りでできた硬いマメがある。


アレンは考え事をするとき、いつもの癖で、親指の腹で顎の先をなぞった。


「なぁ、ルカ。お前のその杖、ちょっと貸してくれよ」


「え? いいけど、アレンが持っても魔法は出ないよ?」


「分かってるよ。ただ、ちょっと雰囲気だけでもさ」


ルカから細い木の杖を受け取り、広場の方角へ向けて、


「世界の理よ、我が意志に応えよ! 大地の底なる絶大なる奔流の一片を、矮小なる我が身に宿して顕現せよ!」


「…」


当然、杖の先からは煙すら上がらない。


アレンは苦笑しながら杖を返した。


「あはは、やっぱりダメか。魔法が使えるルカが、ちょっと羨ましいよ」


「そんなことないよ」


とルカは静かに首を振る。


「僕の魔法なんて、生活の役に立つくらいで戦う力なんて全然ないよ。」


ルカは少し照れたように笑って続けた。


「それより……誰かのために真っ先に飛び出していけるアレンの方が、僕はずっと凄いと思う」


「何言ってるんだよ。お前が後ろにいてくれるだけで、俺はいつだって無茶ができるんだからな」


アレンはルカの肩を小突いて笑った。


「・・・」


ルカは一瞬だけ目を丸くし、すぐに照れたように視線を落とした。


二人の間には、いかなる金銀財宝よりも強固な絆が、16年という歳月をかけて確かに築かれていた。



第一話をお読みいただきありがとうございます。


思い立ったら吉日と奮起して、これが人生の初投稿です!

現在はAI先生に赤ペン先生してもらいながら、二人三脚で物語を組み立てています。


これからアレンとルカがどうなっていくのか、皆さんの期待を裏切らない面白い内容を全力で考えていきたいと思います。


これから二人の運命を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです!


お手数ですが、☆での率直な評価をいただけると、今後の執筆の参考になります。どうぞよろしくお願いいたします。


これからどうぞ、よろしくお願いいたします!

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