22.体がキュウ~ってなって、チカチカビクビクしま……ふにゃぁ…
リビィからのお願いは明らかに話の流れを無視しており、ほとんど脈絡が無い。
しかし、ラムネの角を洗いたいという小さなお願いを彼女が無下にするわけもなく、姉らしく丁寧に応えた。
「ちょっと唐突ですね……。洗ってくれるのは嬉しいですけど、あまりくすぐらないで下さいね。強くゴシゴシされると全身がゾワゾワしますから」
「それはラムネお姉ちゃんの弱点が角ってこと?」
「弱点というより、繊細な部分でして………。下手に触られると体がキュウキュウって反応しちゃうんです。それから視界がチカチカして、ビクビク~って身震いするんですよ」
「うーん、リビィよく分からないや!だから、試しに角をゴシゴシするんだ!」
「えぇっなんで!?洗うのは良いですけど、よりによってゴシゴシ!?」
ラムネは慌てふためきながらも、自分の角を守るように手で覆い隠した。
だが、浴槽という場所に逃げられる空間などあるわけが無い。
むしろ既に追い詰められた状況であって、すぐさまリビィはラムネの体へ飛びついた。
「大丈夫なんだ!なにせリビィは、魂を洗浄するのが上手なんだね、って閻魔大王の叔父さんに褒められたことがあるから!」
「何か違いませんか!?多分きっと、わちきの角と魂って別物ですから!あと湯船で暴れるのは禁止です!」
「暴れているのはラムネお姉ちゃんの方なんだ!なので、ラムネお姉ちゃんは妹のワガママを大人しく聞き入れて。ねっ?ラムネお姉ちゃんの可愛いところ、リビィが全力でゴシゴシしてあげるんだ!」
「だから、そのゴシゴシするのがダメって……。あっ、ちょっと……これ、また壊しちゃう流れな気がします!耐えるんだ、わちき……!持ち堪えて、何か妙案を……!」
「何をされても逃がさないんだ!絶対、リビィはラムネお姉ちゃんの角をゴシゴシする!」
「その使命感はどこから湧いてきているのですか!……そうだ、今こそお姉ちゃん直伝の必殺技を放つとき!ロゼラムお姉ちゃん必殺・寝かしつけ!!」
そうラムネが叫んだ後、浴槽に溜められていた湯が弾け飛ぶ。
合わせて世界樹に局所的な振動が伝わっていき、洗濯物を干している途中だったフーランは目を丸くするのだった。
「えっ?今の音と揺れは何ですの。明らかに、ただ事では無い様子でしたけれど……。もしかしてラムネさん、やってしまいましたの?」
何が起きたのか想像もできないが、ラムネがハプニングに見舞われてしまったであろう予感はついた。
そのためフーランは洗濯物を置いて浴室の方へ向かうものの、ちょうど浴室から出てくるラムネとリビィの姿があった。
二人とも裸であるのみならず、なぜかラムネは気絶しているリビィを背負っていた。
増々どのような問題が起きたのか不明だが、家が破壊されずに済んだことは間違い無さそうだ。
「あらま、そういえばリビィさんが居ましたね。一緒に暮らしていることを伝え忘れておりましたですの。それで一体何がありましたの?」
「い、色々とあって寝かしつけました……」
「寝かしつけ……ですの?白目を剥いておりますし、気絶しているように見えますのよ」
「多分きっと、リビィさんは白目で寝る体質なんですよ。ほら、寝息も整っていますし」
「リビィさんって器用な寝方でしたのね。初めて知りましたの」
一段落ついて呑気に会話しているが、急いで出て来たせいで湯が足元へ垂れてしまっていた。
そのため床が盛大に濡れてしまい、ラムネは少し焦る。
更に裸のままという事実に彼女らの気が逸れた瞬間、リビィは気絶しながらも寝言を発するのだった。
「ゴシゴシ……。ラムネお姉ちゃんの角……」
リビィの腕がゆっくりと動く。
それは、よくある寝ぼけた行動だと言っていい。
だが、少女の手は確実にラムネの角を握り締め、すかさず激しく擦るのだった。
この完璧な不意打ちはラムネに絶大な効果を与え、凄まじい刺激が全身を駆け巡った。
「あひゃあ!?うそっ!?そ、そんな……寝かしつけたのに……!ひぐっ……はぁ、うぅぐ……ふにゃぁ………」
「ラムネお姉ちゃん~……」
名前を呼ぶ呻き声と共に触られるものだから、それは怨霊が憑りつかれた状態と大差ない。
しかも触られるほどラムネの顔は紅潮していき、全身の力が抜けて座り込んでしまうのだった。
「あうっ……。わちき、リビィさんに骨抜きにされましたぁ……。うぅっ……あぁ……ん……」
「何ですの。さすがのワタクシも、こんな状況は初めてで困惑しますのよ……」
フーランの目の前では、二人の少女が濡れた裸で密着しながら行動不能になっている。
片方は白目を剥いているし、もう片方は喘ぎ声を漏らしながら座り込んだまま。
もはや、最初から何も見なかった事にするのが正解に思える状況だろう。
そのせいでフーランには正しい対処法と接し方が思いつかず、ひたすらに困惑した様子で立ち尽くす他なかった。




