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Act56:七曜集結


暗く開放的な部屋でワインを口にする女性が一人。女性が座る椅子は装飾が施され豪華に、机も豪華さがあるこれでもかと言うくらい位の高いものが扱うものである。女性の座る前方には、外の風景がよく見えるように大きな空間がある。女性は外を見ながら呟く。

「今宵も明日の訪れない魂に追悼の意を――」

 そう言いながらワインを自分の頭よりも高い位置に上げる。

「失礼します。報告です」

 突然ドアから入ってきた男が言う。男は女性に近づくと伝言を伝える。

「ありがとう。下がってください」

 女性は丁寧に礼を言い男はその言葉を受けて静かにその部屋を出ていった。

「ソル。七曜の皆さんをこの部屋に集めて頂けますか?」

「ああ、分かった」

 答えたのは以前、ティキ達とストラムで戦った七曜副リーダーのソルであった。ソルの呼びかけにより七曜のメンバーが続々とこの部屋に集まってくる。



「ようソル! ハハハッ全員が集合だって? 珍しいな」

 豪勢な声と共に入ってきたのは以前、リクと戦った青い髪をした大男のウォルスだった。その豪快さは相変わらずで何も変わってはいない。静かな空間に騒がしさが追加されたようなものである。

「あのリクとか言う男と戦って以来なんの任務もなかったから退屈してたんだよ。今度の任務は退屈じゃないだろうな?」

 ウォルスに続いて入ってきたのは同じくリクが七曜と戦った時にいた仮面をつけた金髪の男ソイルだった。

「……」

 ソイルはウォルスと違い無言で入ってくると、壁に向かって歩きだし、壁にもたれ掛かる。まるで全員の様子が伺える場所に移動したようだった。

「わっ! オイラが一番じゃねぇのかよ。ちぇー! せっかくセラ姉の呼び出しだと思って急いできたのになぁ!」

 次に入ってきたのは、やたらと独り言が多い青年であった。黒い髪に赤いメッシュを入れた男である。

「ハハハッ相変わらずエレクは五月蝿い奴だな!」

「お前に言われたくないよ。ウォルス!」

 エレクはウォルスに言う。


「あと来てないのはリプスだけか? 何やってるんだ?」

「俺ならとっくにいるぜ」

 薄暗い部屋の影から出てきたのはいかにも好青年と言わんばかりの黒髪の青年だった。八重歯が目立つ綺麗な顔立ちをしている。

「部屋についたのは俺が一番先だぜ。お二人さん」

 リプスは、ウォルスとエレクの方を見て言う。


「ところでさ、セラ姉。ゼリスムの後釜はどうしたんだよ? 候補生として試験を受けたんじゃないの? これじゃ6人しかいないじゃん」

「はい、今日はそれについての説明もあります」

 その声の主は一番奥の椅子に座っていた女性。女性は薄暗い所から徐々に明るい場所に歩みを進める。女性は、モデルのような高身長に、綺麗な金色に近い茶髪をし、ストレートの髪に肩の付近からはウェーブを充てていた。綺麗に整った顔つきは可愛いというよりも美人に近く、姿勢は凛としていた。中に赤いシャツと黒いネクタイ、黒いスーツに身を纏いキリッと立つ姿はモデルそのものである。

「隊長……」

 七曜の一人が声を漏らした。そう彼女こそ他の七曜の5人を纏める星の導き幹部の一人、そして七曜の隊長である女性。


 名は"セラフィス・バレンタイン"――。


「ゼリスムの亡き後、候補生を絞込み最終試験に向かわせました」

「最終試験ってのはなんだったんだよ?」

「銀色の髪の戦士……ティキの抹殺です。しかし、結果としてティキ達によって返り討ちに合い敗れてしまいました」

「ガハハハ。情けねぇな。そいつは結局七曜に入る資格なんてなかったってことじゃねぇか!」

「そういう捉え方もあるでしょう。しかし私は別の捉え方をしました」

「別の?」

「はい。銀色の髪の戦士ティキは、我々でも抹殺に苦戦するということです」

 その言葉に誰もが黙りこむ。セラフィスは全員の顔を確認すると目を閉じる。

「つい先ほど、ある情報が私の下に届けられました。その情報はティキと、ゼリスムを殺めたリクが同じ国にいるという情報です。私達はこの情報を有用しこの期に二人の抹殺を遂行することにしました。もはや悲劇の第九候補生の生き残りである二人は我々、星の導きにとって最も危険な存在です。この二人を抹殺し、星の導きの未来に栄光を与えることを誓いましょう」

 セラフィスは胸に手を当て上を向く。そして目をゆっくりと開き再び元の位置に顔を戻す。

「ソル。あなたはこの任務から外れてください」

「ん? どういうことだ?」

「あなたには別の仕事を頼みたいのです」

「……分かった」

「他の皆さんは私と共にヴィマーナに乗り込んで頂きます」

「ひとつ聞きたいんだが、ティキとリクの二人を始末するのに五人全員が出るのか?」

「リクはともかく、ティキには三人の仲間がいます。それぞれそれなりの実力者なので、一対一で相手をしてください。誰が誰と戦うかは能力の適性と性格を踏まえて私が考えます」

「OK! 隊長に任せておいて間違いはないからな」

「では、行きましょう」 

 黒い狂戦士達が動き出した。




 青く無限の空を駆け抜ける感覚は、実際に体験しないと分からない。その魅力に魅せられてそれを生き甲斐とするものすら存在する。人は大地を失い空に来なければ、この感覚に気が付くことすらなかったのかも知れない。

「やっほー! 気持ちいいっー!!」

 そういいながらリバティーを走らせるのはティキだった。巨大オームにリバティーを破壊されてからというものの、自分でリバティーを操縦などすることがなかったティキは久々にリバティーで空を駆ける感覚を楽しんでいた。

「ティキさん……ほんと子供ですね」

「でもたまにはああいう子供っぽいとこあるからちょっと安心するな。あたしは」

「何言ってんだリディアちゃん。ただのクソ餓鬼だろありゃ」

 ティキの暴走を見守る三人は、ティキの後を並んで飛んでいた。

「おーい、ヴィート! どっちが先に着くか勝負しねぇか?」

「あー? なんで俺がんなガキみたいな遊びに付き合わなくちゃいけねぇんだ? 俺はそんなことよりリディアちゃんとの会話を楽しむ」

「あっそ。負けるのが怖いんだな。じゃあいいや」

「……んだと? 俺が負けるなんてあるわけねぇだろ。いいぜ、やってやらぁ!!」

 そう言うとヴィートはティキの元へ飛んでいく。

「ったくどっちが子供なんだか……」

「ほんと賑やかになりましたね」

「ねぇところでルクス。次に行く国に数日滞在した後は一気にセイ・ユグレシア国まで行くの?」

「今の所はそういう予定ですね。ティキさんの欲しがっているパーツを手に入れて改造すれば、万全な状態になりますしね。ただ、気になるのはリクさんですね。例の事件の後、消息不明。ティキさんはなんとかして会いたいと思ってるはずですしね」

「リクさんってティキと同じ第九候補生の生き残りだよね」

「はい。それにしてもこれは運命なんですかね?」

「え?」

「今から行くシューリディ国はリクさんが消息不明となった国なんです」

「え!? そうなの? そのことはティキには?」

「まだ言ってません。タイミングを見て言うつもりですが……リクさんがいたのはもうひと月以上も前の話ですからね。今もこの国にいる可能性って低いと思うんですよね」

「確かに……そうね」

 そう。今ティキ達が向かっている国は"シューリディ国"。ウォーターリファイン国にてオーム狩りを実行し、お金を手に入れたティキはリバティーを購入。次にパーツを購入しようとしたが在庫切れだった為に取り寄せようとした。しかし、パーツの到着には早くて1週間。ならばとティキ自らが取りに行くことを決め、今シューリディ国へと向かっている途中である。


 無限の空は世界中と繋がっている。様々な思いも全て繋がりがある。この空がこの世界で一つである限り、二人の人間がこの空の下でいる限り二人は出会う運命だったのかも知れない。そう思わずにはいられない。


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