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転生者を探せ! 乙女ゲーム世界破綻対策本部局 新人かがやまちの場合  作者: 家具付
二章 潜入捜査は命がけ!

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以下 種明かし

「この場合の単独行動はな、仕方が無いと言う部分も大きいが!! 予測外の行動をするなら一言報告を入れろ!」


「腹をぶっさされて意識不明だった人間に、目を覚ましたと思ったらそれ言うのはなしでは無いでしょうか」


目を覚ましたらそこは乙ハタの救護室。そして私はベッドの上。点滴がさされている右腕に、力を込めようとするとずきずきと痛む脇腹。

ああ、帰ってこられたんだと思うと、ものすごくほっとした。

異世界を渡り歩く仕事は、いつでも重労働で、とても大変だ……探索班が皆そうなんだけれども。

そして目に映ったのは怒り心頭のめちす先輩と、心配しきりといった表情のあおやどまがる先輩の二人だった。


「ああ、目が覚めて良かったわ。実行部隊の方も、あなたの事をとても気にしていたの。お腹を刺されても実行部隊を呼ぶ根性が、もうありえないって」


「あの時召喚しなければ……これ以降あの”最初の一人”への接触は不可能だと判断した結果です……いてて……」


「救護室の人達も、意識が無い状態では完全な治療が出来なくって……傷はかなり塞いだって聞いたわ。貫通してたそうよ」


まさかの現代日本に属していながら、腹部貫通の傷を体験するとは……もうここに働くと常識が崩壊する。


「あ、しょうだおいあ治療班! かがやまちが意識を取り戻しました!」


「よかった! 出血がすごくて、うかつな治療方法がとれなかったんだ。かがやまちさん、私達がちゃんと認識できてる?」


しょうだおいあと言う人達が、わらわらと私のベッドに近付いてくる。

そして色々と聞かれて、それらに素直に答えると、しょうだおいあさんが医師で出来た指輪をはめた手を、私のお腹にかざした。


「我らはかみのためにはたらくもの、我らは世界の崩壊を防ぐもの。かみなんじ我らの働き無くして世界なしと思われるなら……癒やす力を今ここに!」


おお、めちゃくちゃ呪文みたいだ、と感心していると、しょうだおいあさん達の手がぴかっと光って、そして。


「痛くない……」


私のお腹の傷の痛みが、消え失せていたのであった。


「めちす、君は男性だから席外して。あおやどは、異常傷かどうかの確認が出来るから残って」


「はい」


しょうだおいあさん達が、矢継ぎ早に指示を入れて、その指示を聞いた先輩方が動き出し、私はあっという間に病院服を脱ぐ事になっていた。


「異常探知なし。異常波動なし。……大丈夫です」


「そっちは?」


「異常執着なし 異常痕跡なし。こちらも問題ありません」


「トリプルチェックだ。よし、五異常再確認……異常なし、承認!」


「……前に怪我をした時よりも、大がかりですね」


「ああ、重傷には、変な物が張り付いている事がわりとあるんだ。だから三人体制で、異常な物が張り付いていて、これからの生活および労働に問題を起こさないかの確認をする事になっているんだ」


「へえ……」


「あなたはまだ体験してないけれど、異世界の中には、呪いの傷という物を、探索班の人に与えてしまう人が居たりするの。そういうのが、乙ハタの外に広がると厄介でね」


「乙ハタでそれらを剥がして浄化して……と言う一連の作業が行われる事も多いんだ」


しょうだおいあさん達、治療班が、異常が無くて良かった良かったという顔をしている。


「……かがやまちさん、あなたのおかげで、もう何年も解決しなかった”プリハイ”に似た世界が救われたわ。だからあなたに、あれがどうして始まったのかも教えるわね」


「今ですか」


「今ではだめかしら?」


「いえ、とんでもない。なんであんな原作乖離の状態になったのか、とても気になっていたので」


氷の磔刑にかせられた”最初の一人”だった第一王子様。謎のよく当たる占い師。そして私が潜入捜査を可能にできたきっかけの、男爵家のお嬢さん。

謎はまだほとんど未解決なのだ。


「まず、”最初の一人”の第一王子に憑依していたのは女性で、”プリハイ”の攻略対象の一人に恋愛感情を抱いていたの。それが第一王子の侍従の人」


「や、ビーでエルをいきなり展開しそうですけど」


「事実そこに結構走って……でもそこまで世界に影響を与えないように、立ち回っていたらしいわ。世界情勢とかも皆ゲームの攻略本とかで暗記していたようでね」


「ああ……」


だから乙ハタの構成員達が、オーパーツを見つけられないままでいたわけか。

世界に影響を与えないように立ち回る人を、探すのはなかなか難しいだろう。


「そこで、まあ世界崩壊はそこまで早まらなかったらしいんだけれど……侍従さんの本来の出自が、実は法王の庶子で……ほら、あの世界では法王の庶子は神が与えたもうた子供って事にされているから、そこが露見すると宗教戦争待ったなしで」


「ぎゃあ」


宗教が絡む争いは、泥沼になってあらゆる物を崩壊させるというのは、地球の世界情勢でも明らかだろう。

異世界でも泥沼戦争が始まるところだったのか。


「そんな秘密の恋で綱渡りしている時に、第二の転生者が”あり得ないほどよく当たる占い師”として、別の攻略対象である公子様に接近。未来を見通すような発言で、隣国の異常を数々救い、覚えをめでたくしてから……禁断の恋をしている第一王子を排除する事で、自分が原作に存在しない逆ハーレムを作ろうと画策。厄介な相手である第一王子を、”世界を語る秘宝”と囁き、公子様の手のものに入手させたわけ」


「……だから、原作であり得ない戦争が起きるきっかけに」


「そう。色々な物がぴた○スイッチ。第一王子の禁断の恋から、複合的にあれやこれやと最悪の事態がかみ合って……世界を揺るがす戦争の火蓋を切る形に進んでいたのが、あの世界」


「転生者は、別の転生者を嫌う事の方が圧倒的に多いみたいですからね」


自分のチートを邪魔する、別件の転生者を、転生者達は判で押したように忌み嫌うのだ。

そしてあらゆる方法を使って排除しようと企む。

今回もそれがあったと言えるだろう。


「そして、今回は……あなたという、”原作でヒロインになるはずだった男爵家のお嬢さん”と髪の毛の色がそっくりという、年齢もごまかせる乙ハタ構成員が入った事で、神々も新たな手段を動かせるようになった。それが、”ヒロインと乙ハタ構成員の入れ替わり”よ」


「え、あのお嬢さんは”原作ヒロイン”だったんですか!!」


何であんな美少女がと思ったが、そりゃヒロインなら美少女だ。

私が驚いていると、あおやどまがる先輩が続ける。


「神々は世界を完全に自分の思うとおりには動かせないの。愛して見守って、微調整は出来るけれども、大きくねじ曲げる事はどの神様も出来ない。それは知っているわね?」


「研修中に習いました。世界という物を作った時点で、神々の手をかなり離れる箱庭なのだと」


「そう。だから、あの世界の神様は、あらゆる手段で世界崩壊を阻止しようとしていたけれども、今まではうまくいかなかった。乙ハタの構成員達の潜入できる場所が、限られていたから。でも、今までの構成員が潜入できなかった場所に入れる人間の、あなたが入った。そのため、今まで出来なかった微調整が可能になって……”貴族の一部しか発見できなかったはずの””第一王子だった秘宝である最初の一人”の発見につながった。本当にあなた、豪運よね」


「大怪我してますけどね」


「それでも。そのおかげで、また世界を一つ救えたわ」


「あ、それでは、あの”ヒロイン”予定のお嬢さんが、登校を嫌がったのは」


「それは第二の転生者という、よく当たる占い師の評判を聞いて、彼女の婚約者が真実の愛は別にあると思い込んで、浮気をしたから。その浮気現場を、彼女は出かけた先で、乳母さんが目を離した一瞬で目撃する……という神の手が働いて、彼女がショックで顔を合わせるであろう学園への登校を拒否すると言う動きにつながったの」


「……」


神はどこまで予測して、神の手を働かせているのだろう。人知を超えているのは知っているけれども、その砂粒ほどの可能性を一つ一つつまみ上げて、動かす力は、心底敵に回したくない物だった。

全て、偶然に見えるだろう。第三者からすれば。

でもそれは、世界を救うための必然だったのだ。


「本当にお疲れ様、かがやまちさん。局長がやっと眠れるって喜んでたわ。あなたの事もとても心配していたけれど、あのまま仮眠しか出来なかったら、局長が発狂するかもしれなかったから、あなた、今回一番の功労者よ」


「ありがとうございます」


「よって、傷が完治するまでの間と、それから一週間は休暇です! 現代日本を楽しんでね」


「……寝て食べるくらいしか娯楽が見つけられません……」


「素敵な娯楽よ」


「あ、傷の完治はこちら、しょうだおいあ班が完治したと判断するまでですからね」


しょうだおいあさん達がにっこり笑う。優しそうだが、暇だから完治を早くしたいと言ったら、怒られそうな雰囲気がそこにあったのであった。

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