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モノクロの蝶  作者: Riviy
プロローグ
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第四ノ世界:開戦合図



振り下ろされた爪を二人は左右に分かれてかわす。と匡華が右腕に飛び移り、上へと駆け上がる。匡華を振り下ろそうとするドラゴンの足元で村正が刀を振った。だが、鱗が硬く、ジーンとした痛みが彼の腕に伝ったのみ。痺れた腕を庇いながら村正が後退する。


「村正!」

「!?」


匡華の緊迫した声に村正は素早く跳躍した。途端に、ドラゴンの尾が振り切られた。村正がまだそこにいたならば、間違いなく飛ばされていただろう。村正は様子を伺うように、ゆっくりとドラゴンの周りを回り出す。と、突然、ドラゴンが悲鳴を上げた。匡華がドラゴンの片目に小太刀を突き刺したようだ。匡華は痛みで雄叫びをあげ、暴れ回るドラゴンから飛び降りると村正と並ぶ。


「トドメ、刺す」


低い声で告げる匡華に、村正に口角が上がる。匡華の意図に気づいた己に対してか、それとも別か。それにしても、


「愉快ですね」


村正は足に力を入れ、強く地面を蹴った。痛みで暴れていたドラゴンは見える片目だけで、飛んで来た村正を見つけると払い飛ばそうと、左腕を振った。それを左腕に上手いこと飛び移り、鱗の隙間と隙間に容赦なく、刀を突き刺した。が、ドラゴンがいち早くその行動に気づき、村正を払い落とした。突然のことにバランスを崩して落ちていく彼に向かってドラゴンがブレスを吐く。だが、それよりも早く、そのブレスの真ん前に匡華が素早い動きで躍り出ると村正の手を掴み、自分よりも身長も体格も大きい彼を上へ飛ばした。その後、目前に迫ったブレスを小太刀で弾く、とドラゴンが両の爪を匡華に振りかざした。着地し、連続した攻撃に匡華が驚いたように目を見開く。ドラゴンが勝利の笑みを瞳に浮かべた。が、観戦していた神様は違った。ドラゴンは忘れているようだが。


匡華も、勝利の笑みを浮かべた。は?となるドラゴン。すると、片目に痛みが走った。何が起こったと、理解する前に残った片目が黒く染まった。それでドラゴンは気づいた。匡華は囮だ、と。村正はドラゴンの片目から刀を容赦なく引き抜くと、そのまま鱗に覆われていない首筋に刀を刺しながら降下。匡華も村正が加えた傷に追い討ちをかけるように小太刀で攻撃する。目が見えない暗闇の中、次々に遅い来る痛みと恐怖にドラゴンは混乱状態に陥り、匡華と村正がいる方向ではなく、誰もいない観客席の方へと逃げて行く。だが、それに匡華が追い討ちをかける。尾を小太刀で勢いよく切り裂いた。痛みで前のめりになって倒れるドラゴン。土煙が上がりそれが晴れると、観客席に頭から突っ込んだドラゴンがいた。ドラゴンはピクリとも動かない。そして、徐々に茶色の光に包まれ、粒子となって消えていった。倒した、と確信した匡華は小太刀を納めると同じく刀を納めた村正に近寄る。そして、2人はハイタッチをかわし、笑い合った。

2人の闘いを観戦していた神様は親指の爪をギリッと噛んだ。


「(早く終わると世界がブーイングすると思って条件二に加えたが、失敗だったか?…)」


神様はそこまで考え、過去の自分を呪った。だが、また考えてニィと不気味に微笑んだ。


「(でも、大丈夫か)」


そして神様は組んでいた足を解きながら、喜び合っている二人の元へと降り立った。神様であるにも関わらず、警戒を怠らない二人に神様はクスリと口元を歪めた。

村正は匡華を再び、背にし、神様を睨み付け、殺気を放つ。だが神様はその殺気にも動じず、見える口元だけを好意的に繕いながら言う。


「うん、合格。さて、他の代表者がいる場所に移動しようか」

「移動?他にもあるのかい?」


匡華の問いに神様の口元がヒクリ、と動く。それに匡華は、神様はあまり質問して欲しくないのだと、その行動で考えた。だが、それを悟られぬように神様は答える。


「うん、まぁな。じゃあ、行こうか」


パチン、と指を鳴らす神様。途端、視界が歪んだ。一瞬、気持ち悪くなる感覚に陥る。匡華が気持ち悪さに目を瞑った。すると、足元の感触が変わった。コンクリートの感触に匡華は目を開けた。そこは先程までの闘技場ではなかった。驚きながら、村正と共に変わった闘技場を見回す。そこは闘技場は闘技場であったが、古びていた。観客席は所々、崩れており、所々に崩れた瓦礫が散乱していた。そしてなにより違ったのは、自分達以外の代表者達が集まっていたことだ。突然現れた匡華と村正に目を向ける事なく、二人と同じように周りに目を奪われている代表者達。空中には神様が浮いており、驚く彼らを愉快そうに眺めている。神様が「コホン」と咳払いする。それに代表者全員が空中に浮かぶ神様を見やった。匡華は周りに警戒しつつ、殺気を放っている村正の隣に立つ。そして、クイッと村正の服の裾を引っ張って殺気を放つのを止めるよう促す。村正は不機嫌そうに顔をしかめながら殺気を収める。殺気がなくなり、二人の周りにいた他の代表者達がホッと胸を撫で下ろしている気配がした。選びに選び抜かれた代表者達にとっても村正の殺気は恐ろしいのだと実感し、匡華は小さく笑った。まぁ、神様には効いていなかったようだが。


「ようこそ、各世界の代表者諸君!此処はボクが創った専用の世界、通称〈闘技場〉。各世界をテーマにした闘技場……ボクにしてみれば実験場だけど、まぁそれはいいや…なんかがある」


神様の「各世界の代表者諸君」という言葉に再び、周りを見回す代表者達。気づいていた者もいれば、本当に気づいていなかった者もいたらしい。そこから分かるのは、全員が一緒にいたわけではないと云う事。神様が言っていた、いや、言い直した闘技場じっけんじょうに今の今までいたのだろうと予想できた。


「此処にはルールがあるからちゃんと守れよ?じゃないと、不愉快でしかないからな!」

「………神様、楽しそうね」


誰かがそう呟いた。確かに神様は、淡々と、感情をこめずに喋っているが、言葉のはしはしからは愉快で仕方がないと云うのがヒシヒシと伝わってきた。神様は、ブカブカの袖口を口元に当て、言った。


「そりゃあな。だって、世界を消滅しなせれるんだぜ?愉快じゃなくてどぉする?!」


悪寒。背筋を駆け巡る悪寒。神様は、本気だ。楽しんでいる、世界を消滅させようとしている。それを肌で、代表者達は実感した。自分の双肩に、自分の世界の全ての命がかかっている。怖じ気づくのが普通だが、此処にいる彼らに「怖じ気づく」と云う行動はない。決心は、意志は固いのだから。

神様は「まぁいいや」と言ってルールを話し出す。


「ルールその一、殺し合い、戦闘は午前9時から開始。例外を除き、午後24時でその日の戦闘終了。空白の時間は、共謀しても良いし、一人で計画を立てても良い。ボクには必要ないけど、人間には睡眠と食事が必要らしいからな。感謝しろよ?ルールその二、空白の時間…休息時間に他の代表者を殺すのはNG。本当に殺したら、殺した代表者の世界、消滅すからそのつもりで。ルールその三、戦闘は基本何処でやっても良い。ボクが審判役として出向く事もあるから、そのつもりで。あ、さっき言ったみたいに4対2なんて云う共謀戦でも構わない。一気に減るし。こんくらいかなぁ……あ、忘れてた。休息用の部屋、全員分あるから好きに使ってよ。そこに籠城しても良い。その部屋には傷を治す特効薬を置いてあるから、勝手に持って行って使って。あと、無造作に部屋に代表者の情報隠した。嗚呼、情報は、内容も無造作だから」


ザワッとざわめく。つまりそれは、他の代表者に自分の情報が渡り、不利な状況が出来る可能性もあると云う事だ。だがそれは、よく考えれば、好都合だ。神様はそんな両者の考えを読み取ったのか否や、袖口を口元に当てながら言う。


「見つけたもん勝ちだからね。優しい方だと思うぜ?」


バッと両腕を翼のように広げ、神様は言う。


「さあ、最後の一つになるまで戦え!異論は認めない!自分達が得た能力で殺し合えっ!」


憎悪が滲んだ声が、古びた闘技場に響き渡った。



あと一話でプロローグ終了です。長いな

神様のルール説明…ルール設定頑張って考えました。「明らかに数日で終わらないのに寝食どうすれば?!」って考えてたら「ルール作ればいいじゃねーか!」です。とりあえず、イエーイ

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