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モノクロの蝶  作者: Riviy
第一章:毒入りお菓子のハッピーエンド
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第十四ノ世界:二回戦~妖艶の悪魔~



「それじゃあ」

「お兄さん方~」

「「あっそびましょー!」」


ヘンゼルとグレーテルはそう、愉快そうに笑って、村正と鳳嶺に向かって跳躍した。鳳嶺が拳銃を迫る双子に放つと、それをグレーテルが背後に控えていた炎の球体でその銃弾の起動を逸らす。そんな彼の横を通りながら、村正が素早い動きで双子に迫り、刀を振った。その一太刀をヘンゼルが大盾で防いだ。そこに上空に飛んだグレーテルが炎の球体を投げた。バンッと、その球体が鳳嶺が発泡した銃弾によって消え失せると、グレーテルは悔しそうに唇を噛み締めた。そして、鳳嶺に向かって駆け、炎の球体を彼に向かって至近距離で投げつけようとする。が、それを鳳嶺はしゃがんでかわすとそのままグレーテルの腹に回し蹴りを放った。グレーテルが横に飛んで行き、村正はヘンゼルの大盾を弾くと同じように回し蹴りを放つ。双子が同じ場所で体勢を立て直し、並んだ村正と鳳嶺を睨む。村正がそれに殺気で返すと双子は、ビックゥと飛び跳ね、大盾の影で片手の指を絡ませた。


「…村正」

「なんです。さっさと、あの愚かな人間…いえ、者達、倒しますよ」

「………ッハハハ!!これだから」


カシャン、と鳳嶺は拳銃に薬莢を込めて笑う。その笑みは妖艶で、二人が並ぶとその空間だけ触れてはいけないような感じがした。


「んじゃま、さっさと殺るか」

「「望むところー!!」」


鳳嶺の言葉と共に放たれた銃弾の嵐。それを背に、村正が素早い動きで迫る。グレーテルは銃弾を炎の球体でクルクル回りながら消滅させ、ヘンゼルは大盾を振り回し、銃弾を防ぐ。が、双子の所々には銃弾をかわしきれず、当たるものもあった。大盾を振り回していたヘンゼルが視界の隅にグレーテルに迫る村正を発見し、たまらずそちらを向いた。が、


「グレーt…!?」


そこにいたのは、彼女の懐に潜り込み、拳銃を放つ鳳嶺だった。バンッ!とグレーテルは拳銃の銃口付近を炎の球体で蹴り上げると片手で鳳嶺目掛けてパンチをする。それを紙一重で顔を横にそらして鳳嶺は避けると、拳銃を手放す。驚き、目を見開きながらも至近距離でいくつもの炎の球体を放とうとしているグレーテルは、少し後退した。トン、と背中になにかが当たった。壁だ。ニィと微笑む鳳嶺は再び、両手に拳銃を構えると一つをグレーテルの眉間に当て、容赦なく引いた。近くで金属音と悲鳴に近い叫び声が聞こえた気がする。壁に広がった紅い、美しい華。華は、徐々に、グレーテルの背後に浮かんでいた炎の球体と合体し始める。それに、気づいた鳳嶺は唇を噛み締め、急いで後退した。


「ッ!」

「いじめちゃダメよ~?お兄さん♪」


顔を上げたグレーテルは、真っ赤だったが、眉間に銃弾はなかった。あったのは銃弾を押さえる炎の球体。あの一瞬に滑り込ませ、窮地を脱したらしい。それでも、額には大きな、斜めに裂けた一線が入っているが。グレーテルは壁にくっつくと、片手の上で大きくなっていた炎の球体を焦りながら後退している鳳嶺に向かって跳躍しながら投げた。


「グレーテル!!」

「叫ぶくらいなら、こちらに集中しなさい」


背後から漂う、刺すような殺気にヘンゼルは大盾を振った。が、そこには誰もいない。訝しげに眉を潜める彼の背中に鋭い痛みが走る。横目に見るといたのは、血がついた刀を振る村正。追撃を与えようとする村正に向かってヘンゼルは蹴りを放つ。それをかわすため、後ろに反れた村正に向かって大きく頭上から大盾を振り下ろす。その攻撃を刀で軽く受け流す村正。こちらもと云うように回し蹴りを放つ。それを腕で防ぐ。ビリビリと、痛みが伝わる。そしてそのまま、振り上げかけていた村正の刀を素手で掴んだ。驚く村正。だが、一瞬にして冷静になると、刀を一気に抜いた。痛みがヘンゼルを支配するが、それよりも早く、いつもよりも軽めにした大盾を村正の顔面目掛けて振った。間に合わないと踏んだ村正は両腕で顔を庇い、大盾の攻撃で壁まで吹っ飛んだ。壁に叩きつけられた背中が痛い。村正は壁を支えに立ち上がる。と、視界が紅く染まった。不思議に思いながらそれを拭う。壁か大盾か、ぶつかった拍子に切れたらしい。口元に垂れて来た血を飲み込み、紅い痰をプッと吐き捨てながら、村正は大盾を前面に構えて迫るヘンゼルに向き直る。先程よりも凄まじい殺気がヘンゼルを襲う。ガンッと大盾にぶつかる、というところで村正は頭上に飛び、壁を蹴ってヘンゼルの背後に着地する。二度も同じ手を喰うわけもないヘンゼルだ。すぐさま、横に飛んだが、振り返り様に村正の刀が首筋に迫った。大盾を上げるも間に合わず、かろうじて片腕で防いでしまう。大きな切り傷を腕に作りながら、ヘンゼルは逃げ、村正と対峙する。


と、そこへグレーテルがやって来た。額から流れ出る血を拭いながらヘンゼルに抱き付く。村正は、気配を感じ、横目で確認した。その正体は、所々焼け焦げた鳳嶺だった。火傷も負っているらしく、大きく出た肩には紅いものがいまだにジュージューと焼ける音と焦げ臭い匂いを出している。


「グレーテル、大丈夫?」

「大丈夫大丈夫~ヘンゼルは大丈夫?」

「大丈夫」

「「なら、殺っちゃおう?」」


片手の指を絡ませながら、鋭い視線をこちらに送る双子。その視線を村正が殺気を放って追い払う。それが、なんとも可笑しくて大怪我を負っている鳳嶺は口元を押さえて思わず笑ってしまった。それに村正が気づき、彼を軽く睨んだが、鳳嶺は肩を竦めてそれを受け流す。


「笑う暇があるのならば、行きますよ」

「ったく。毒舌だな。まぁ、」


鳳嶺は両手に持っていた拳銃を廊下に放った。それに驚く双子。鳳嶺が両手を下に下げると両手に千早のような『闇』、紫と黒の煙が包む。そして、現れたのは、二丁のマシンガン。鳳嶺がそれを双子に向けて構えると、横で村正が口角を上げて笑っていた。


「お前のそんなとこ、嫌いじゃねぇわ」

「ふふ、光栄です。鳳嶺」


バッと村正が双子に向かって跳躍した。双子が指を離しながらヘンゼルが大盾を構えた。が、そこにマシンガンの乱射が襲い、大盾から振動がヘンゼルに伝わる。グレーテルがその背後で炎の球体を幾つも作り、展開させている。が、グレーテルの目の前に、村正が素早く滑り込むと、グレーテルに向かって刀を振った。それをかろうじて避けたグレーテルを見て、足を軸にし、開け放たれた闘技場に向かって回し蹴りを放った。グレーテルは吹っ飛ばされながらも、炎の球体を投げる、がそれを村正は刀で切り刻む。ヘンゼルが横目で飛んでいったグレーテルを見やると、大盾で鳳嶺の攻撃を防ぎながら、後方に跳躍。グレーテルのように闘技場へと消えた。凄まじい乱射の音が消える。片方のマシンガンを焼けただれた肌の上に担ぎながら鳳嶺は刀を振り、血を払う村正に歩み寄る。


「さ、行くか」

「はい、そうですね」


扉の向こうから幾つも炎の球体が二人を襲った。それらを顔を横にそらしてかわし、二人は頷き合うと闘技場に向かって床を跳躍した。


村正と鳳嶺はもう、妖艶組って括りにしても云いと思うんですが

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