第4話
(アメリカ)
ホワイトハウスではNSC(国家安全保障会議)が開かれていた。
「アジアで戦争が起こる可能性があると言うのか」
ジャック・クランシー大統領がNSCのメンバー達に問いかける。メンバー全員の顔が険しかった。
「大統領。発言してもよろしいでしょうか?」
NSCの軍事アドバイザーである統合参謀本部(JCS)議長のフォード大将だった。クランシー大統領は頷く。
「中国と北朝鮮については何時もの対外的なパフォーマンスと考えてもいいでしょう。ただ、ハワイのコナリー大将からも報告がありましたがロシアの動きが気になります。既に3個旅団規模の部隊がサハリン(樺太)に移動していますが、ロシア海軍の戦略原潜が北極海からオホーツク海へとシフトしているのも確認されています」
オホーツク海沿岸の町マガダンでロシア海軍の戦略原潜基地が建設されているという報告は受けていたが、ロシアの原潜が北極海からオホーツク海へシフトしているというのは、マガダンの基地は既に稼働していてオホーツク海はロシア海軍にとっての「聖域」であり、北方領土を含む千島列島はロシアにとって重要な防衛ラインである。と世界に示すのが今回のロシアの「スターリン演習」であると分析されていた。
「つまり、ロシアが『演習』と称して日本に対して何か軍事行動を起こそうとしていると?」
「断言はできませんが、その可能性はあるかと思われます。無論、中国と北朝鮮の動きも注意するべきかと」
「・・・」
「大統領。万が一の事態に備えて出動できるよう、連邦軍(正規軍)と州兵(予備役部隊)に召集をかけるべきかと」
国防長官が進言するも、クランシーは黙ったままだった。中東情勢への対応に追われている今、アメリカが何らかの軍事行動を起こせばそれを引き金にロシア、中国、北朝鮮を刺激させてアジアにおける全面戦争を引き起こしてしまう危険があると考えていた。どう対応したらいいのかと悩んでいたクランシー大統領に、トム・ライアン国家安全保障会議担当大統領補佐官が提案する。
「大統領、軍にはまだ戦闘に関する出動命令は出さないでください。我々も『演習』として軍を動かすのです」
「演習として、か」
「そうです。彼らは我々がどう対応するのか、そこも見極めているのだと思われます。我々も同じく演習として軍を動かすだけなら、問題にはなりません」
クランシー大統領はフォード大将に目を向けると、フォード大将が肯定するように頷く。国防長官を含めた閣僚達も反対しないのを見てクランシー大統領は決断した。
「分かった。では我々もそのようにしよう」




