閑話『流星、春の街角で癒される?──“癒しのラウンジ”体験記』
春。
ユルヴァーナの風がやわらぎ、花の香りが街の路地にも漂うようになったころ。
流星は、街角の一軒の扉の前で立ち止まっていた。
「……これは、“癒しのラウンジ”……って読むんだよな?」
──《選べる癒し、選ばれる貴方へ》。
そんなコンセプトの立て札が掲げられた、木造のこぢんまりした建物。
「よし。ハードプレイじゃない。これは文化。風俗じゃなくて、癒し施設!」
誰に言い訳するでもなくそう呟き、意を決して扉を開く。
「いらっしゃいませ、常盤さま」
出迎えたのは、柔らかな笑みを湛えた褐色肌の美女──
亜人種と思しき猫耳のラウンジ嬢。
「ご予約通り、【アロママッサージ・ティー付き・耳かきプラン】でよろしいですね?」
「え? うん……ああ、うん、もちろん」
──予約した覚えはない。でも、なぜか名前も好みも完璧に把握されている。
流星、冷や汗をかきつつもマットの上へ。
「では、失礼しますね」
オイルの香り。
ゆっくりと背中をなぞるようなマッサージ。
猫耳嬢が耳元でささやくように「お疲れ様でしたね……ずっと戦ってらしたのでしょう?」と囁くたびに、思わず変な声が出そうになる。
「っ……くぅぅう……これは……文化……文化だから……!」
その後も──
・膝枕での耳かき
・温かいハーブティーとお菓子
・「好きな音楽、おかけしますね」と水のせせらぎASMR
終始ソフトサービスに徹しながらも、
**“自分が大事にされている感”**が濃厚に満ちていた。
(……こんな風俗も、あったのか……!)
流星はつい感動し、涙ぐみかけた。
だが──
「おかえりなさい、変態ッ!!」
扉の外に、腕組みしたリリア・アリシア・ヴァネッサ・ミレーユの姿。
「お、おまえらなぜここに!?」
「場所でバレるに決まってるでしょ!? っていうか、もうこの辺に“あんた専用の風俗座標”できてるんだよッ!」
「こっちは次の旅の準備してたのに、なんでアンタだけ『耳かきプラン』満喫してんのよ!!」
「ラウンジ? いやいや風俗だろ!? 癒しってラベル貼った風俗だろ!?」
「うん、まぁ……文化だよ?」
「殴るぞ」
──結局。
流星は“アロマ癒しのひととき”を最後に、
再び女たちの地雷ゾーンへと投げ込まれたのだった。




