↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/229

第71話『招かれざる神託──南海の離島より招待状』

南国の風が吹いていた。


いや、風の匂いそのものは変わらない。だが、そこに混じる潮の香り、陽光の温もり、遠く聞こえる海鳥の声──それら全てが、旅の始まりを告げているようだった。


「……え? マジで言ってんの?」


ギルドのカウンターで、常盤流星は何度目かの確認を取っていた。ギルド職員の若い男が苦笑しながら、改めて書簡を手渡す。


「間違いありません。南海の孤島《アナナス島》より、貴殿を名指しで調査依頼が届いています」


「名指し……俺を……?」


「ええ。文面には“風俗と信仰に精通する者”と──」


「いや、それ俺しかいねぇわ!」


バンッ、とカウンターに拳を置くと、ヒロインズが一斉に顔をしかめた。


「また風俗か……!」


「流星、あんた……今度はどんな神様に失礼を働くつもりなの?」


「でも“神官服で癒してくれる”って書いてあるぞ? しかも“選べる女神官付き個室対応”。これはもう……行くしかないじゃないか!」


リリアとアリシアの額に青筋が浮かぶ中、ヴァネッサだけが目を輝かせた。


「南国! 神官プレイ! アナナス島ってたしか、水着着て踊る巫女さんがいたって噂じゃん!? 行く行く! アタシ水着5着持ってくわ!」


「いやいや、待て! 一応これは“依頼”なんだから! 神聖なる仕事なんだぞ!」


「風俗調査が神聖……?」


「ほら、前も夢魔倒したじゃん! あれも俺の煩悩がなきゃ無理だったろ!? これはもう実績あるから!」


流星のドヤ顔に、アリシアがそっと耳元でささやいた。


「……次、下半身が暴走したら、貴方の風俗歴に“永久停止”を申請するから」


「それは勘弁……!」


だが、今回の依頼は冗談では済まされなかった。


届いた文書は、王国北方研究院の印が刻まれた正式なものであり、アナナス島で発生している“神託活動における精神干渉の疑い”についての調査を依頼するものだった。


その島は数年前──風俗店に関する問題が社会問題化し、ついには“風俗全面禁止法”が布かれた異例の地域だった。


にも関わらず、ここへ来て“再び風俗が営まれている”という内部告発と共に、何故か流星の名指し依頼。


「……おい、これって……」


「ええ。明らかに怪しいです」


アリシアが眉をひそめ、リリアは腰の剣に手をかける。


「どう考えても罠……だけど、放っておいたら男たちがまた被害に遭う可能性があるわ」


「やはり我らが行くしかないな。だって俺たち、風俗戦隊だもんな」


「どこのレンジャーよそれ……」


結局──


「わかった、行こう。ただし、今回ばかりは“本気で調査”だ。俺の煩悩はちゃんと鍵付きの箱に入れておく」


「ほんとォ~~~?」


「え、信じてないの……?」


「信じるわけないでしょ」


◆ ◆ ◆


アナナス島──


かつては“海神信仰”の聖地として栄え、王国の中でも屈指の“癒しと信仰の島”として観光業で潤っていた。

だが、その裏には“癒しの風俗文化”と呼ばれる、神官服による接待行為の数々があった。


一部の宗教指導者がこれを問題視し、粛清を断行。島は一時閉鎖され、文化は壊滅状態となる。


……しかし近年、島から密かに“神託風俗復活”の噂が流れ始めていたのだ。


しかも、島で癒された者たちは全員、こう語った。


──「神の声を聞いた」

──「もう何も不安はない」

──「帰る必要がない」


「あー……もう地雷しか感じない」


船上で流星は嘆き、隣でミレーユが真顔でメモを取っていた。


「こういう依存系の癒しは危険なのよ。『帰る必要がない』って時点で、自我に問題が出てるわ」


「……まさか、また夢魔の類じゃないよな?」


「だったらやっつけて、また英雄として風俗通いすればいいじゃない♡」


「何そのポジティブ回路!?」


◆ ◆ ◆


海を抜けた先に現れたアナナス島は──


まさに楽園だった。


白い砂浜。透き通る海。椰子の葉が揺れ、祭囃子のような音楽が遠くで鳴っている。


だが──その楽園の中に、異様な気配があった。


観光客は少なく、島民の大半が目を伏せ、無言で通り過ぎていく。


市場は開かれているが、どこか静まり返っていた。


そして、島の中央にそびえる白い神殿──その門には、奇妙な看板が掲げられていた。


【神託は選ばれし者にのみ与えられる】


「選ばれし者って、なんだよ……」


流星が呟いた時、神殿から一人の女性が現れた。


金と白の神官服に身を包み、日焼けした肌に銀のアクセサリが輝く美女。


「ようこそ、流星さま。お待ちしておりました」


「え?」


「あなたにこそ──神の愛と癒しを、与えるべきなのです」


彼女の笑みは穏やかだった。だがその奥に──何か狂気に似た静けさが潜んでいた。


◆


こうして、煩悩の冒険者と、そのハーレム一行は──

“神の名を騙る島”の深き誘惑と狂信に、足を踏み入れていくことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。