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第59話『ラッキースケベ式目覚まし爆破』

──それは、突如として始まった。


神託の館・特別室。

流星は、香の罠によって完全な昏睡状態に陥っていた。


 


「……これは、かなり深くやられてるわね」


アリシアが渋い表情で、香炉の残り香を手で払う。


 


「一見ただの“いい匂い”だけど、潜在記憶に直撃するタイプ……しかも、性的な記憶を中心に編集してる」


 


「要するに、“都合のいい夢”を見せて、心ごと囚える系か」ミレーユが冷静に分析する。


 


ベッドの上の流星は、軽く口元を緩め、うっすらと頬を赤らめていた。


 


「……うへへ……いやー、そりゃ、抱き枕の向こうからローズちゃんが……」

「だめだって……神官服でそれは……ああでもありがとございま──ぐふっ♡」


 


「……ダメだこいつ、完全に昇天寸前」


 


「いっそこのまま夢精させた方が早く起きるんじゃ……」ヴァネッサが真顔でつぶやく。


 


「却下!!!!」


リリアが全力で否定する。


 


「でも何か刺激を与えないと、香の魔力から目覚められないわ」


「身体の感覚を“現実”に引き戻すしかないってことね」


 


そこで──彼女たちは、最も“確実で、非常に物理的”な方法を選んだ。


 


 



 


「行くわよっ!!!」リリアが叫ぶ。


「覚悟なさい……現実に引き戻すわよ、流星!!!」アリシアも叫ぶ。


 


──その瞬間、


\ドカァァァァン!!!/


 


何故か浴室側から爆発音。


床が抜け、ベッドが跳ね上がる。


天井から水蒸気が舞い、混乱と熱気が同時に吹き出した。


 


「スライム式風呂爆破、成功!」ミレーユが親指を立てる。


 


……そして。


爆風で吹き飛ばされた流星は、バスタオル一枚のアリシアの胸元へ顔面からダイブした。


 


「ふわっ……!? きゃあああああああああっ!!」


 


背中側には、なぜか下着姿で構えていたヴァネッサの太ももが迫る。


 


「うふふふふっ♡ 起きたらご褒美ねー?」


 


そして──さらに転がった先には、


「えっ!? ちょっと!こっち来るなぁぁぁあああ!!!」

叫ぶリリア。


 


\ボフッ!!!/


 


リリアの胸の中に収まってしまった流星。


そのままベッドに再着地──


 


──まさかの布団一枚。

そして全員が、布団の中に密着していた。


 


「……えっ……?」


流星の目が、ゆっくりと開く。


 


「あれ……夢? いや……現実? これは……?」


 


ヴァネッサが、じりじりと流星に迫る。


「現実だよ~♡ あたしの抱き枕、どうだった?」


 


「だあああああああっ!!何が起きた!?何が起きたんだよぉぉぉぉ!!?」


 


「貴様が寝ぼけて風呂場を爆破しようとしたからだッ!!」


 


「俺!? 俺のせい!?」


 


「うん。風俗的な幻覚に溺れた挙句、“全自動洗体システム!”とか叫んで、魔力放出してたから」ミレーユが淡々と語る。


 


「でもさ、みんなが全力で起こしてくれたわけだし……愛されてるねぇ~勇者くん♡」

ヴァネッサが流星の腕に絡みつく。


 


「やめろ!密着すなッ!頼むから距離感を!!!」流星が全力でジタバタする。


 


そのとき、アリシアが髪を振り払って言った。


 


「……今度、変な夢に溺れたら。私がビンタして起こすから」


 


「ビ、ビンタでいいです……」


 


「でもそれって“愛の鉄拳”よね~?」

ヴァネッサが肩を組みにかかる。


 


「俺が悪かった!今後は香炉に近づきませんからッ!!!」


 


リリアがふと、真顔でつぶやいた。


 


「──この数日、ラッキースケベのない日がなかった気がする」


 


「うん。マジで」

全員が頷いた。


 


そして流星が、布団の中で一言──


 


「……これが、俺の人生か……地獄だな……」


 


 



 


だが、その夜。

“神託の泉”の奥深くでは、仮面の神官たちが静かに動き始めていた。


 


「──香が破られたか。だが、次の層がある」


 


「この男、煩悩は深い。まだ完全には目覚めていない」


 


「次は、“本当に愛した者”の姿を見せましょう──」


 


──神の名を騙る者たちが、静かに牙を研ぎ澄ます。

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