第37話 『筋肉と煩悩の協奏曲(デュエット)』
──魔物の咆哮が、夜空を裂いた。
「うおおっ、来たぞ! 北門側だ、武装っ!」
村の警鐘が鳴り響き、冒険者たちが武器を手に飛び出していく。
その中で、真っ先に駆けつけたのは──常盤流星と、赤銅の女戦士・ヴァネッサだった。
「数は少ないけど、サイズでゴリ押してくるタイプね!」
「ゴブリンじゃねぇ、あれは混種か……!」
現れたのは、“オーガ種”と“獣人種”の混血とおぼしき異形の魔物。
目は血走り、巨大な斧を振り回しながら突進してくる。
「背中、任せたわよ♡」
「お、おうッ!!」
背中合わせに立ったその瞬間──不思議な“熱”が走った。
背後から伝わる筋肉の質量と温もり。
視線を交わさずとも、息遣いがシンクロする。
「……へぇ。やればできるじゃん、勇者くん」
「俺はな、風俗のために戦ってんだよ!!」
「えっちょっと何その覚悟!?」
だが、斬撃が火花を散らす。
ヴァネッサの斧が敵のガードを砕き、流星の剣が喉元へ突き刺さる。
「──斬ッ!!」
「喰らいなさいっ♡ マッスル・スピン斧ォ!!」
地面を砕く衝撃。
肉の破裂音。
ほんの十秒足らずで、三体いた魔物が倒れていた。
「……ふぅ……」
呼吸を整えながら、ヴァネッサはちらと流星を見た。
剣を肩にかけ、汗に濡れた顔で息を切らしている男──
その瞳が真っ直ぐに、戦場を見据えていた。
「──あーもう、ムリ。好き」
「ええええええええええ!?!?」
「やば……今の、マジでイケた……ッ♡」
「“イケた”って言うなああああああああああ!!」
◆
一方その頃、少し遅れて現場に着いた三人娘は──
リリア「……あの距離感、絶対なにか起きたわね」
アリシア「ていうか、また惚れてる。確実に“地雷”が増えたわ」
ミレーユ「もうこれ、“煩悩ハーレム王”じゃない……?」
ため息三連発。
彼女たちは知っていた。
これが、“常盤流星”という男の宿命だということを。
◆
戦いの後、ヴァネッサは無邪気に笑った。
「──ねぇ流星。今夜はちゃんと隣で寝ていい?」
「だが断るうううううううう!!」




