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1話:雨宮ほたるの誕生と記憶

「雨宮ほたる」は、信州・上田、信越線の大屋駅の近くの豪農の家に1952年7月に誕生。父は、雨宮輝雄と言う佐久の名家の出身で農家の離れには、祖父の雨宮善蔵、70歳で、毎日、机に向かって、何かをしていた。


 そこへ、ほたるの母の雨宮麗子が、朝、昼、晩の食事を持っていき、お手伝いの40代で、農家のおばさんが、身の回りの風呂、洗濯、買い物などをしていた。


 そのため、雨宮ほたるは、たまに挨拶くらいで、あまり話することもなかった。しかし、威風堂々として、凛とした風格があり、すごい人に違いないと内心、感じていた。


 たまに、機嫌が良いと、しっかり勉強して、世の中のためになる人間になれよと、言い、頭をなでてくれた。やがて、3歳になり、物心ついて、祖父も父、母も仕事をしている風でもなかった。


 ただ、自宅の畑で獲れた野菜を持ってきて、料理を作り、食べさせてくれている。他の家では、両親共働きの家が多く、実家の様名、大きな家に住んでおらず、身なりも粗末であった。


 それが、不思議に感じ出し、何か秘密があるのではないかと思い始めた。ある時、祖父の住む離れに行き、一休みしていたので、声をかけて、家の中に入ると、何と言えない良い香りがしてきた。


 すると、祖父が、こっちへおいで、美味しいおやつをやると言い、部屋に入ると、丸いビスケットをくれた。ほんのり甘くて、良い香りがした。そして、飲んでもいるものを聞くと、珈琲だと答えた。

 

 でも、これは、大人の飲み物だから、子供は、飲めないと笑顔で言った。この時、ほたるに、どんな事でも真剣に考えて、行動しなさい。また、勉強して賢くなれば、金は、後からついて来ると言った。


 どうやったら勉強ができる様になるのと聞くと、考えるときは、1つだけに集中して、考えることが重要だ。ぼーっとしていては、決して、知識は身につかないと、怖いくらい真剣な顔で言った。


 その顔は、その後、忘れることができなかった。その時、何やってると聞くと、私の寿命は、もう長くない。だから、なり残す事の無い様に、一生懸命、書物を読んだり、自分の考えを書き残しているのだと語った。


 その目の鋭さは、今まで、一度もいた事のない様な、迫力で、思わず、後ずさりしたほどだった。帰りますと言うと、ビスケットを2つ、渡して、帰って食べなさいと、柔和な顔に戻った。


 やがて1959年4月、小学校へ行き始めると、雨宮先生のお孫さんかねと言われ、特別待遇を受けるようになった。かと言って、祖父について、聞くこともできず、疑問は、ずーっと謎のままであった。


 ある時、母に、祖父は、偉い人と聞くと、そうよと言い、何でと聞くと、とにかく偉い人なのよと言うだけで、何も言わない。祖父に言われた集中力について、父に聞くと絵でも本でも音楽でも真剣に見聞きすることだと答えた。


 それから、絵本、興味あるテレビ、ラジオは、集中して聞く訓練をはじめると、何の違和感もなく集中できるようになった。何て、不思議なんだろうと感じたが、気にせず、両親の与える本や壁に貼りだし五十音を覚えるようなった。


 すると、忘れずに思い出せるのが、奇妙で、実に、面白かった。それを見て両親は、次々に、新しい大きな紙に算数、地図、漢字、アルファベット、などを張り、覚えると、新しいものに交換した。


 そのうち、そろばんを買ってきて、使い方を教えてくれ、そろばんのパチパチと言う音と滑らか、そろばんの玉が、自由に動くのが面白くなり、もっと早く、計算ができ、答えが正解の時の満足感が、非常に心地よかった。


 そうして小学校2年生の時から、近くのそろばん塾に通い始めた。これも見ていたそろばん塾の先生が、ほたる君の集中力は、すごいわねと褒めてくれ、ますます、その気になって、そろばんにのめりこんでいった。


 学校の勉強も以前から両親に、紙を張り出してもらい、覚えていたので成績も良かった。そのため、先生に褒められると、また、頑張ると言う、良い循環で、学校に通うのも楽しくなった。


 小学校4年になると、各教科の成績表が、全て5になった。しかし、両親は、決して褒めることはなかった。ほたるなら、もっとできるわよと、励ましたのであった。このころ横文字に興味を持ち始めた。

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