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梅雨の雨の憂鬱 (6)
「使えよ」
「……え?」
気づくと、俺は桜に傘を差し出していた。
「だから、使えって。どうせ桜のことだ、傘なくて困ってたんだろ?」
駄目だと思いつつ、昔のような言葉が出てくる。こんな偉そうな言葉遣いじゃ、こんな馴れ馴れしい話し方じゃいけないと思うのに、桜への接し方はこれ以外わからない。
「別に、返さなくていいから」
何が起こっているのかわからないと言わんばかりの桜に傘を押し付け、俺は外へ出る。土砂降りの雨に打たれ髪も服も一瞬でびしょ濡れとなったしまったが、思いの外冷たくて気持ちいい。
「でも、それじゃあ誠君が濡れちゃうんじゃ……」
「もうびしょ濡れ。だから、それは桜が使えって」
俺は走りだす。これ以上一緒にいるのはもう辛い。
「ありがとう!今度ちゃんと返すから。絶対、返すから!」
走り去る俺に桜が叫ぶ。余計なことをしてしまった自分の甘さに呆れながらも「今度」という言葉に期待してしまっている自分もいて。いろいろ思うことはあるけれど、桜のあんな表情をみないためにこれからどう接するかとか考えたいけれど、とりあえず今はすべてを吹っ切るように俺は帰路を走り続けた。
オマケに続きます




