33/130
梅雨の雨の憂鬱 (5)
本人は意識していないように思えるが、桜が過度に男と仲良くしているのが目撃されたらきっと良くない。それも、こんな冴えない男と。桜にとっては幼馴染と仲良くするのは当然のことなのだろうが、周りはきっとそう評価してはくれない。どんなに桜や俺が昔と変わらない関係を望んだところで、それは到底叶うはずのない願いなのだ。お互い成長し、歳が変わり、身体が変わり、容姿が変わり、立場が変わり、進む道が変わり。何もかも変わらずにはいられない年頃の俺達だからこそ、変わらないことの方が難しいのだ。
「じゃあな」
だから俺はなるべく桜を避けるようにしていた。例え自分の想いを殺してでも。
「ばいばい……」
すれ違いざまに声をかけられ思わず一瞬桜の方へ振り返る。振り返ってしまった。そこには久々に直視した桜の顔と、今まで見たことのない悲しげな表情。俺は何故こんなことをしているのだろう。俺は桜の為を思ってこのような態度をとってきたつもりだった。桜がどう思おうが、結果桜の幸せにつながれば良いと決意していた。なのに。そんな俺の考えをすべて否定するような桜の表情に心が揺らぐ。辛い。つらい。俺はこんな表情を見るためにこんなことをしてきたわけじゃないのに。




