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伝説級失伝魔法



暗い小屋の中。私はバットを構えたまま、カチリと魔導ランプを点灯させた。




埃っぽい空気と、微かに残る薪の匂い。

どうやら、ただの無人小屋ではなさそうだ。



ランプの光が、小屋の奥で動く影を捉える。

そこには、大釜を覗き込みながら何やらブツブツと呪文を唱える一人のエルフがいた。


かまどでは、魔法によって生み出されたであろう青白い炎が不気味にゆらめいている。




「……ちょっと、あんた。遭難者への配慮が足りないんじゃない? 悪いけど、暖を取らせてもらうわよ」




声をかけると、エルフはビクッと肩を跳ねさせ、こちらを振り返った。


長い耳をパタパタと震わせ、怯えたように口をパクパクさせている。

極度のコミュニケーション障害らしく、何を言っているかさっぱり理解できない。



「……あ、……ぅ、……え、あ……凍……っこ、……あう……」



その横で、もう一つの影がゆっくりと立ち上がった。


それは、黒いローブを纏い、顔には不気味な紋様が刻まれた男。

背格好から戦士か何かとわかる。



「ほう……まさか、こんな辺鄙な避難小屋に、生きた人間が辿り着くとはな。しかも、その妙な荷台とバット……もしや、お前が最近噂になっている『学園に編入したという無属性の魔女』か?」



男はニヤリと笑い、手のひらから黒い炎を生み出した。



「だが残念だ。この小屋は、我ら『滅びの黄昏』が、古代魔法の禁断の術式を完成させるための秘密拠点。生きては帰さん」


「滅びの黄昏? 何よそれ、中二病みたいな名前ね。」





私が冷たく言い放つと、エルフは「ふ、ふぎゃっ……!」と悲鳴を上げてその場にへたり込んだ。

どうやら、このエルフは「滅びの黄昏」の一員というよりは、彼らに捕らえられている実験体か何からしい。


(え、何よこれ……)

しかし私の視線は、散乱する魔道具の中に釘付けになった。



そこには、「二次元空間を固定化し、その中に無限の物質を圧縮収納する」という、伝説級の失伝魔法の試作魔道具が転がっていた。


そして、その核心となる魔導書は、ローブの男が持っている。





「なるほどね。あんたたちはこのエルフの技術を使って、その『禁断の術式』とやらを完成させようとしているわけだ」



私はバットを構え、紅い瞳の男を睨みつけた。


敵(?)は「滅びの黄昏」を名乗る古代魔法を狙う組織。

手元には「伝説級の失伝魔法」を研究するコミュ障エルフ。



そして、私の愛車エクス号は、この小屋の外で嵐に耐えている。

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